Xmasスペシャルストーリー2

サワナのクリスマス














 朧げな闇が像を結んだ。
 サワナ。
 サワナだ。

「サ…」
 声を出そうとして、息が途切れた。
 体が重い。脇腹が灼け、何かが流れ出していくのを感じる。
「サワ……」
 涙が溢れ出た。
 にじむ視界に映るのは、サワナだ。澤菜だ。野村澤菜だ。
 あの優しい眼差しも、愛らしい唇も、綺麗な青い髪も。
「ケふっ…」
 言葉の代わりに、鉄っぽい液体が口から噴き出した。

「…喋らないで」
 サツキを抱いたサワナは、小さく言うと、サツキの額を撫でた。
「…シオン様……お願いです……」
 サワナはつぶやきながら、サツキのライダースーツをはだけ、脇腹を露わにしている。
「どうか…私をお守り下さるなら……どうか、サツキを……」

 柔らかい唇が、灼ける傷口に触れた。
 撃たれたんだ。
 初めて、その事に気付く。
 見れば、さらけ出された自分の裸身は真っ赤なぬめりで覆われていた。

「サワ……死にたくない…」
 サツキは震えながら、サワナの手を握った。
「やっと…遭えたのに……ヤダ…よぉ…ヤ…かふっ!!」
 黒い血が、顎から胸元へと流れていった。
 やっと会えたのに。
 殺して、殺して、あんなに殺して。何もかも耐えて……捨てて……
 なのに。

 …………死にたくない!!!
 助けて。イヤだ。こんなのは。
 そんな……
 死……







 暖かい光が灯った。
 サワナの唇と傷口の間に、柔らかい輝きが生まれていた。
 痛みが、波のように引いていった。
 遠のく意識が引き戻される。流れ出していた何かが、体の底から急速に沸き上がってくるのを感じた。
「なに……これ……?」
 サツキは…自らの腕で…身を起こしながら聞いた。
「私達の神様の……力だよ……」
 目に涙をたたえながら、サワナが微笑む。

「ほ…………ほんと……ホントだったんだ……」
 サツキは涙を溢れさせ、しかし笑いながら……サワナの肩に顔を預けた。
「サワナ…サワナ、サワナサワナ、サワナ……」

 懐かしい匂いがした。

***

「ずっと捜してたんだよ……あんな風に…いなくなって…アタシ……」
「ごめんね…サツキ…」
「会えるって言われて…人も殺したの…いっぱい…でも…だけどっ……サワナっ……」
 サツキは溢れ出す言葉を抑えきれず、サワナの胸で泣いた。
「私も、サツキのことを捜してたの…私の……」
 サワナはサツキの耳元でささやくように話していたが、ふと、身を強ばらせた。
「サツキ……え…あ…? サツキも……?」

 気付けば、ジッパーを突き破りそうな強ばりが、サワナの太ももに擦り付けられていた。

「あ……」
 サツキは顔を赤らめ、思わず身を引こうとした。
 しかしサワナの指先がそこに触れると、思わず声を上げてのけ反った。
「このっ…これはっ……」
「サツキも……同じだったんだ……」
 サワナは悲しみと喜びがない交ぜになった表情でつぶやくと、大きく息を吐いた。
「初めから…知ってれば良かったのにね……」
 サワナが臙脂のコートのボタンを外すと、それだけで、短いスカートの中から逞しいペニスが跳ね起きた。
 改めて見るそれは、記憶に焼き付けた映像より遙かに逞しく、すでに先端を透明に濡らしていた。

 サツキの肉の深い場所に、火が点った。
「うあ……サワナ…」
 気が狂うほどの劣情が、サツキの脳を支配した。
 ビルが燃えていることも、敵がいるかも知れないことも、全てが白熱する欲情に溶かされていく。
「サツキ……しようか」
 サワナが、頬を染めながら言った。

「もう…ビルもだいぶ燃えてるみたい。もしかすると、逃げられないかも知れない。ルキナ様達が助けてくれるって信じてるけど……でも……」
 サワナの指が、そっとジッパーを降ろした。
 サツキのペニスは、射精していた。ジッパーの隙間から精液が漏れ出し、最後の数滴がサワナの頬に飛び散る。

「サツキと一緒になれたら…何も後悔しないから」

 サワナはコートを脱ぎ捨てると、壁に身を預けたサツキにまたがった。
 自分の剛直の先…そのほんの数センチ上に、幾度も夢に見たサワナの性器がある。

「生き残れたら、もっと色んなこともしようね」

 柔らかい感触が、亀頭に押し当てられた。
 わずかな抵抗…それが強まり、くぐり、サツキはサワナの熱い内部へ押し入った。
「ふ…ぁ…こ、これ…が………これがっ……」
「うん。私のおまんこだよ。ずっと…サツキとこうしたくて…いやらしいコトばかり考えてた…私の…」
 サワナの息が荒くなる。その細い腰が、ゆっくりとくねり始めた。中に抱いたサツキの一部を、優しく、強く、愛おしむように。
「あっ…アタシも…アタシも…何度も何度も夢に見たのっ…夢で…サワナと…ああっ! でも…ホントにっ…」
 ずっと思い描いていたサワナの膣内は、想像など及びもつかないほどに、熱く、柔らかく、淫らだった。
 他の刺激と較べ物にならない快感が、サツキのペニスに練り込まれていく。
 複雑な形状と力強い締め付けが、サツキの童貞を搾り上げる。
「こっ…こんなの…気持ちよすぎるよっ…! サワナ…出ちゃっ…」
 サツキの腰が勝手に上下を始めた。全身は絶頂を知らせてわななき、長い脚は硬直して床を擦った。
 今まで感じたことのない、巨大な何かが、サツキの下半身に集まっていく。
「いいよっ…出して……サツキの、サツキの全部っ…ちょうだいっ!!!」
「う…うあああああああああっ!!!」 
 サワナの豊かな肉体を抱きしめたまま、サツキは絶叫した。
 ずっと願っていた、この瞬間。

 死に瀕した時にも似た放出感が、サツキを襲った。
 だが、今度はもっと大切な物が、サワナの中に流れ出して行く。噴き出し、飛び散っていく。
 全身が弛緩し、腰だけが壊れたように上下を続けた。
「サツキっ…熱…あついいっ!!」
 ブラウスのボタンを飛ばし、胸をサツキに押しつけながら、サワナもまた射精を始めた。
 サツキの顔に暖かい粘液が撃ちつけられるのと同じリズムで、サワナの胎内が激しく締まる。
「サワナっ…ひうっ…サワナぁ!」
 止まらない射精に体を震わせながら、サワナを抱き寄せ、その唇を吸った。二人の顔にサワナの精液がこすりつけられ、絡み合う舌の間で唾液と精液が糸を引いた。
 二人の射精が続く。どこかで途切れたのか、そうでないかも分からずに。
 炎と煙が沸き上がる中、二人の両性具有者は一つになったまま、動かなかった。


 どれほど経ったのか、激しい律動が引き、二人は心地よい脱力に身を任せていた。
 空気が熱を孕んでいる。
 しかし、それよりも互いの体が熱い。
 名残惜しそうに糸を引きながら、二人の唇が離れた。
「サ…ツキ……」
「サワナ……」
 精液まみれの美貌が朱の影を帯びている。
 言うことは一つだけだ。

 ずっと、好きだったよ。







 赤熱した鉄とコンクリートの塊が、二人の上に崩れ落ちた。
 

NEXT