■地下聖堂ショートストーリー   アビカ・覚醒

 アビカの来歴については、混沌聖戦第五話 『魂の賭け値』 もご覧ください。
 また、新しくなったアビカの設定はこちらでご覧にになれます。


 しなやかなザラの指の間で、水晶はゆらめく光を放ち続けていた。
 珠の中で色彩が渦巻き、時折少女の像を結ぶ。
 少女の名はアビカ。巨大な淫魔と融合し、常に快楽を貪られている哀れな娘だ。

 ザラは魔水晶から目を離し、本物のアビカの寝顔を見やった。
 ザナタックイレーネが調合した薬を飲んで、アビカは穏やかな寝息を立てている。
 アビカの幼さ残る体から繋がった、白い肉塊……淫魔グシーナも、触手をダラリと垂らして活動を停止している。
 その巨体が乗っているのは……ザナタックの研究室にある、大型の手術台だ。
「ふにゅん、これで準備完了なのだ! 霊力微調整デバイス稼動…淫液バイパス計画図確認…うむ、うむうむ!」
 手術台の周りを忙しく立ち回っていたザナタックが、ぴょこんと跳ねてザラに伝えた。
「上手く…いくかしら…?」
「もちろんですなのだ! 本来天才であるこの我輩が、我輩に次いでまあ優秀であろう迷宮主の診断を補助としているのだから、これはもう確実という語意を確認するよーなものなのだ」
 確かに、あの魔術師が言うのだから…これで良いのだろう、とザラも思う。

 アビカとグシーナが倒れたのは、二日前のことだった。
 アビカが意識を失い、そこから快楽を摂取できなくなったグシーナもまた、活動できなくなったのである。
 肉体の酷使、というのがイレーネとザナタックの診断結果だった。
 それはそうであろう。一度調整されたとはいえ、四六時中淫魔に犯される生活を、アビカは送っていたのである。ヴァイアランスの戦士であるならともかく、元が普通の娘では……
 ルキナとザラは話し合いの結果、かつてルーレットが手に入れた魔水晶を使い、アビカとグシーナを切り離す計画が立てられた。
 呪いの焦点である魔水晶を処理すれば、呪いを解くことができる、そう考えたのだ。

 だが、前触れもなく神殿に現れたダンジョンマスターが、それを止めた。
 アビカとグシーナの肉体は深く融合しすぎていて、呪いを解除しても切り離しは難しい、と言うのである。
 各階層のことには滅多に口を出さぬ迷宮主がわざわざ言うのなら、間違いはあるまい……ルキナもザラも、そう考えた。

 かくして、水晶の呪縛を解放すると同時に、アビカとグシーナの肉体を再構成するという、困難な霊医学手術が開始されることになったのである。

「本当によろしくて…? 結局、賭けはしていませんのよ?」
 ザラは自分の隣に立つ小柄な影、戦士にしてギャンブラーであるルーレットに、最後の確認をした。
 聖戦の最中、アビカの身と魔水晶を巡り、二人は賭けをする約束をしていたのである。だがその時が来る前に、戦いは終わってしまった……
「いいんですよゥ。シオン様がするなっていう勝負なら、しない方がいいに決まってるンです」
 ルーレットは気風良くそう言って、笑った。
「ありがとう。アビカもこれで、助かる」
 ザラを挟んだ位置に立っていたディータが、ルーレットに言う。
「やめとくれよ…もう敵同士じゃないんだからサ」
 ルーレットの尻尾が、ぺちぺちとディータの尻尾を叩いた。

「さあ、始めます。ザラ様、ルーレットさん、ディータ、申し訳ないけれど、外に……」
 助手を務めるイレーネが、三人を促した。
「大丈夫ですよ……セルージャ様も、万一に備えて待機していて下さるそうですから」
 作業の管理と記録をするユリアが、ルーレットに微笑みかける。

 ザラは無言でうなずくと、二人の戦士を連れて研究室を出た。


***


 遠くで、液体の流れる音が聞こえていた。
 聞きなれた、グシーナの鼓動だろうか、とアビカは思う。
 だが、それはいつもと違う音だった。
 これまで激流のようだった流れは、穏やかに、シバンの街で唯一美しかった北門の小川のように、アビカの中に流れ込んでくる。
 とくん。
 小さな鼓動と共に、それは来た。
 快楽を味わいたい。
 犯したい。犯されたい。
 精力に満ちた美肉に触手を突っ込み、かき回し、体液をぶちまけたい。穴という穴を拡げ、両性具有者の性器も四肢も、呑み込んでしまいたい。
 粘膜と粘液を通して、何もかもと一つになってしまいたい。

 それは、初めて流れ込んできた、グシーナの欲求だった。


***


「みゅはあ…うむ、作業完了大成功なのだ!!」
 新たに形作られたアビカとグシーナを前に、ザナタックが誇らしげに言った。
「終わりましたね…」
 イレーネはマスクを取ると、ようやく一息ついた。
 手に握った水晶玉を見る。呪力を失ったそれには、もはや何の映像も映し出されていなかった。
 ようやく安定した姿を与えられたアビカとグシーナは、呼吸を一つにして手術台の上で眠っている。

 髪の様に触手を生やした頭部と、いくつもの乳房で構成されたグシーナの上半身。
 下半身は筋肉を兼ねた生殖粘膜の塊となっていて、幾本もの触手生殖器の狭間から、アビカの華奢な体が突き出していた。位置的には……グシーナにとってのペニスに当たる位置だ。
 栄養源として限界近くまで酷使されたアビカの体を生かすためには、「グシーナのペニス」として精力が流れ込む形にせざるを得なかったらしい。

「さて、我輩はザラ様とルキナ様に報告して、帽子をなでなでしてもらうのだ。お前達は、術後の経過を見守るという助手的作業に邁進するといいのだ!」
「はい、いってらっしゃいませ」
 珍妙なセリフにも慣れたらしく、ユリアはにっこりと笑ってザナタックを見送っている。そして、メガネを直しつつイレーネに振り返った。
「イレーネさん…見事な作業でしたね」
「ありがとう。ユリアさんこそ、あれだけの手順を、よく……」
 作業の逐一が正確に記録されたノートを見て、イレーネも笑みを返した。
 神殿では数少ない女同士…年もそう離れておらず、学術の道を選んでいるのも同じ。ユリアと一緒にいると、親近感……いや、両性具有者に囲まれて意識していなかったが、「女同士」である同性愛の欲情が、胸を焦がす。
 ユリアもまた、マノというハーフリングと愛し合うレズビアンの側面を持っていると聞いた。
 眼鏡の奥の青い瞳が潤んでいる。イレーネを見つめ返している。
 イレーネはユリアの手に手を重ねようとして…
 背後の気配に気づいた。

「んっ……私……」

 アビカが、立ち上がっていた。


***


 長い夢から醒めたような気分だ。
 記憶はしている。邪術師に呪いをかけられ、淫魔に寄生されたこと。老魔族によってこの地に連れられ、神殿に墜落したこと。
 自分を気にかけてくれた、ディータとルーレットのこと。神殿の住人のこと。
 そしてとめどなく続いていた、快感。
 全ては眠りの中で味わったようにおぼろげだが、確かにアビカの身に起きたことだ。

「アビカさん! まだ起きちゃダメよ」
「イレーネ………に……ユリア…」
 記憶の跡をなぞるように、アビカは自分の周りにいる女達の名をつぶやいた。
「まあ……」
「意識は…はっきりしてるの?」
 イレーネとユリアは、アビカの側に駆け寄ると、顔を近づけて瞳をのぞきこんできた。
「うん……。私…治してくれたんだ…ありがと……」
 アビカが小さく微笑もうとした、その時。
 グシーナの嗅覚を通して、二人の女達の柔らかな雌臭がアビカの脳に届いた。

「……………!!!!!!」

 瞬間、アビカの全身を沸騰した血が駆け巡った。
 小さく膨らんだ胸が甘い痛みと共に張り詰め、色素の薄い乳首が硬く励起した。
 さらに、へそに生じたクリトリス状の器官も激しく充血し、包皮がめくれて粘膜が剥き出しとなった。
 下半身から脳天までを貫く熱い律動。全身からにじみ出る汗と、こぼれる涙。

 グシーナと感覚を共有するようになったアビカは、本能的に理解した。
 グシーナが、そのペニス……つまりアビカ自身……を勃起させたのだ。

「は……ぁぁ……ァ……」
 今まで感じたことのない狂おしい欲求が、アビカの意識を蝕んでいく。
 目の前にあるのは、両性具有者達に芯の芯まで快楽を仕込まれた、二つの極上の女肉だ。
 自重でわずかにたわんだ大きな乳房から、丸い腰、細い脚まで……連なる美しい曲線。それを、このグシーナの体で……犯せる…
 初めての雄の欲求が、グシーナと一体化することで両性具有となった体を、電撃となって通り抜ける。
「ア、アビカさん…もしかして…」
「発情……してるのね……」
 アビカの様子に気づいた美女達は、驚きと不安の表情で、巨大な淫魔を見上げた。だが、二人とも心底まで奴隷として調教されているためか……恐怖しながらも、顔を上気させている。

 ぴゅるる、と、アビカの両の乳首から”先走り”が噴き出した。
 同時に、内臓が引きずり出されるような感触と共に、グシーナの触手が一斉に動く。

「はあああぁんっ…ダメっ!! まだ、術後のっ……!!」
「あぁぁぁっ…!!! アビカさんっ…待ってっ!!」

 二人の抵抗の声も虚しく、アビカ=グシーナの無数の触手は、一瞬で豊満な女体を絡め取っていた。
「うっ…ああ…柔らかいよォ…イレーネも……ユリアも……」
 ペニス同様の感覚を持つ触手が、二人の柔らかい胸に、細い腰に、なめらかな下腹部に、熱い太ももに、絡み付いている。
 すべやかな肌。肉の弾力。汗の熱さ。ほつれた髪。長く伸びた複数のペニス全体で味わう美女の感触に、アビカはたまらず呻いた。
「すごい…よ……イレーネの体が……グシーナから私まで届くの……」
「ひゃあっ…ダメなのっ…おっぱい搾っちゃ…ダメぇっ!!」
 イレーネの爆乳にたっぷりと粘液をこすりつけ、先端に巻きついて引き絞ると、純白の母乳が辺りに飛び散った。触手の先端に4つずつ生えた、クリトリス型の小触手でそれを舐め取ると、アビカの口中にも薄甘い母乳の味わいが広がった。
「美味しい……はぁっ…ユリアも…すべすべでふかふかで…」
「あっ…ううんっ…アビカさんっ…味や感触まで分かるのっ…!?」
 ユリアの尻から股間、そして胸の谷間まで触手を這わせ、激しく前後に擦り付ける。粘膜、腹の柔肌、そして乳肉…全てにペニスを擦り付けている快感が、アビカにも流れ込んだ。
「分かる…分かるの……グシーナから…伝わってくる……」
 成熟した柔肉が、汗と愛液と粘液と唾液でぬるつき、触手をますます受け容れていく。アビカは二人の体表全てをペニスで犯しているような錯覚に陥っていた。

<もっと…深く……>

 言葉にならない言葉、純粋な欲求が、グシーナからアビカへ流れ込んだ。
 もっと深く。そう、アビカ=グシーナは、底知れぬ快楽を秘めた二人の肉体の、まだ表面しか味わっていないのだ。
 もっと深い所、熱くて濡れて溶けている、雌の最奥へ……!
 アビカは触手を完全に動かせないことをもどかしがりつつも、ユリアとイレーネの秘肉へ、一気に触手を突きたてようとした。


 だが、触手の支配権を持つグシーナが、違う動きを命じた。


「ぃっ………………はぁっ………!!!!!


 もし人間の膣が、二人の女性を丸ごと飲み込むことができたら、今のアビカと同じ感覚を味わうことができただろう。

 グシーナは、触手を引き寄せ、もっと奥……グシーナ自身の奥、敏感な生殖粘膜の塊の中へ、ユリアとイレーネを没入させたのだ。
 膣と同じ感覚を持つ肉孔の中へ、ユリアのしなやかな腕が、イレーネの豪華な太ももが、次々と「挿入」される。
 陰唇のような肉襞が、イレーネのボリュームある尻を包み込んだ。クリトリス状の突起が、ユリアのヘソや肋骨といったくぼみと擦れ合った。
「はあっ…わたし…私っ……二人も…入れひゃったああっ……!!」
 亜麻色の髪を汗でぺったりと濡らし、天を仰ぎながら、アビカは人外の悦びに嬌声を上げた。
「す…ごいっ…まるで…膣内っ…」
「女の子の中に入るって…こ、こんな感触なのっ……!?」
 ペニスを持たないせいか、アビカの中の二人も、未知の快感に恍惚としている。

 けれど……まだ……
 アビカは唾液を嚥下し、恐ろしいほどの期待に背を震わせた。
 グシーナの行動が予測と違った、ということは……
 これから、二人の柔らかい胎内に、改めて触手を挿入するということなのだ。
「イレーネ…ユリア……私を助けてくれたお礼…だよ…フフフ……」
 アビカはグシーナとシンクロしつつ、触手ペニスを12本ほど動かすと……
 とろけたように微笑みながら、一気にそれを突き立てた。
「あああああああああっ!! ああああっ…入るっ…入る入る入るよおお…ど、どこまでっ……うあああああ!!!」

 熟した肉襞をくぐり抜け、出産で柔軟になった子宮口を貫き、イレーネの子宮内壁にクリ触手を這わせる。
 4つのクリ触手で拡げたユリアの膣口に、極太に充血させた触手の先端をねじり込む。
 イレーネの小さな肛門のすぼまりを貫き、直腸の奥まで触手でかき混ぜ、変異した味覚で腸液を味わう。
 触手の先端…ペニスで言えば尿道口でユリアの乳首をついばみ、重い乳房を暴れさせるように乳首を引っ張る。
 母乳がたっぷりと詰まったイレーネの乳房に、触手を3本も絡ませ、縛り上げ押し潰して淫乳を搾り取る。
 ユリアの理知的な美貌に触手をこすりつけ、眼鏡の冷たさを味わいながら、精液でそれを汚していく。
 イレーネの肥大化したクリトリスを、同じクリトリス触手で締め上げ、互いがちぎれそうなほどに擦り付ける。

 それら異常な快感が、全て同時に、アビカの幼い肉体に詰め込まれた。
「んくっ…」
 嘔吐に似た、込み上げる熱を感じた。
 グシーナの中から、膨大な量の粘液がアビカに注入される。ほとんどが膣と輸精管になってしまった内臓を膨らませ、胸元へ。
 アビカの未成熟の胸が、スイカ大の綺麗な球形の爆乳へと、一瞬で膨れ上がった。その中を満たすのは、全て淫魔の精液。


 ---ああ……私はペニスだから、射精するんだ……


 狂おしい歓喜と、諦めに似た安心感を覚えながら。

 アビカの胸が、アビカの全身が、盛大に射精を始めた。



 小さい乳首が大人のペニス並に勃起して、そこから濁流のごとく精液が放出された。
 全身が電撃に打たれたように痙攣する度に、精液を撃ち出した双球は縮み、また精液を注入されて膨張する。
 白い激流が天井にぶつかり、雨となって部屋のそこかしこに降り注いでいた。
 連動するように、二人の奴隷の柔肌と胎内にも、アビカ=グシーナの精液がぶちまけられた。
『…………………!!!!!』
 並みの人間なら気絶か発狂していてもおかしくない人外の快楽を、しかしヴァイアランスに適応した女奴隷達は、しっかりと受け止めて喜悦の極みに達し続けている。
 触手がアビカの意思を離れて一斉に蠢く。
 二人の知的な美女の、しかし淫乱な名器の中を、思う様触手でえぐる。
 クリトリス触手が膣内の肉粒と擦れ合い、触手の先端が子宮口から胎内の液体まですすり上げた。
 触手の中を精液が駆け登ると、小触手で子宮を押し広げ、亀頭部分を突っ込んで直接射精した。

 膣。子宮。胸。腹。口。汗。舌。腸。出し入れし、絡みつき、搾り上げ、包み込み、粘膜という粘膜が触れ合い溶けていく。

 自分の膣に二人の美女を飲み込み…膣から生えた数十本のペニスでその全身を犯し……くまなく精液を塗りつけ注ぎ込むという、あり得ない悦楽。
 だが、すでに淫魔と一体化したアビカは、それを受け入れている自分に気づいた。


 ---私、こんな化け物になっちゃったんだ。



 ---悪くないよ……







「ほえええっ!? ど、どうしたの!?」
「イレーネ! ユリア! 何事ですのっ!?」
 どれほどの時間が経ってからか。アビカ=グシーナの二人の主が、戦士達を連れて、研究室の入口で絶句していた。


「……別に。これが、今の私の『普通』だよ。ルキナさま、ザラさま……」
 失神した女奴隷二人を、粘膜のゆりかごで優しく愛撫しながら、アビカは醒めた微笑を浮かべた。