「苦労したよォ、まったく……場所は変わっちまってるし、変な奴らが乗り込んでるって言うし……」
「へへ、確かにそうですね。でも、ルーねえが帰ってくるなんて、そちらこそ何かあったんじゃないですか?」
「んー、まあねえ。ちょいと厄介ごとが、さ」
ヴェスタの逞しい腿の上に腰掛け、形良く柔らかい乳房を弄びながら、ルーレットは苦笑した。
久しぶりに帰還したヴァイアランス神殿は、ずいぶん賑やかになっていた。……いい意味でも、悪い意味でも。
しかし、この奴隷部屋に近いロビーが静かなのは、相変わらずのようだ。
「きれいだねえ…いつ見ても……」
お椀型の胸に乗ったヴェスタの乳首を、口に含む。舌で転がし、唇を離し、赤く励起したのを確認してもう一度責める。
「ん…ルーねえ……他の所も……」
「フフ、そんなに焦るもんじゃないよ…」
放浪癖のあるルーレットとは事情が全然違うが、同じように神殿を離れている期間が長い、略奪部隊長ヴェスタ。旅先で何度も出会う内に、いつの間にか深くなった間柄である。本来なら、ルキナに推参を報告するのが先決なのだが……そこはルーレットといえどもヴァイアランスの戦士、鉢合わせになったヴェスタの肉体を無視することはできなかった。
すでに剣のように屹立したヴェスタのペニスを撫で、指を下に這わす。薄い陰毛の間はじっとりと濡れ、木の椅子に体液を染み込ませていた。
「濡れが早いのも変わらないねェ。じゃあ、早速だけど旅の疲れを癒させてもらおうか。アタシだって、さっきからアンタのフェロモンを吸ってたまんないンだよぉ……」
ルーレットは手際よくベルトを外し、臍よりも上にそそり立ったペニスを解放した。凄まじい勢いで跳ねたペニスはヴェスタの腹筋を一打ちし、二人に心地よい痛みを与える。
「元気が良すぎますよ、ルーねえ……」
「ここんトコ抜いてなかったからねェ。さぞ濃いだろうから、よぉく味わっておくれよ…」
ヴェスタが背もたれに体重を預け、少し腰を上げた。大きく開かれた股の間に入り、ルーレットは自分のペニスを握った。
硬く勃起しすぎて、なかなか角度を落とせない。それを無理矢理押し下げ、ヴェスタの肉付きのいい陰部にあてがう。
−−こんなん入れたら、膣の天井が擦れてツルっツルになっちまうかね。
自分の燃え方に半ば呆れながら、ルーレットはヴェスタの中に押し入った。久々の熱い感触をじっくりと味わいながら、ゆっくり、ゆっくりと腰を押しつける。
「んっ…」
ヴェスタが青い眉を寄せて、苦悦に呻いた。根本まで挿入されてもなお、ルーレットは恥骨同士を擦り付け、押し入ることをやめない。
「ああ……いいよォ……ずっと、こうして抱き合っててもいいくらいだ……」
「じゃあそうしましょうか、ルーねえ」
ヴェスタが震えながら微笑み、触手でルーレットの体をがんじがらめにした。
密着した二人の体。互いの呼吸がもたらすほんの小さな動きだけでも、一つになった部分から素晴らしい肉感が伝わってくる。
「……ルーねえは、ルキナ様に賭けで負けて混沌になったんですよね?」
「え? あ、あぁ…そうだよ」
こんな状態で、世間話とは。しかしそれがまた気に入って、ルーレットも平静を装いながら答えを返した。
「でも、ルキナ様と賭けをしている所、見たことないです」
「ああ……御免だよォ、ルキナ様と勝負するなんてサ。いいかいヴェスタ、ギャンブルってのは…んっ……ああ、だからつまり…こ、心同士の勝負事さ、要はね。でもねえ、ルキナ様とは…もう金輪際勝負したかないよ。あの人はね、何にも考えないでやるのさ」
「考えない……?」
「そう。いや、考えてるんだけど、策じゃないんだ。策じゃないのに、手が動いてくる。だから読めない。分からないかねぇ……」
「んんー……」
いかにも分からないと言った風に、ヴェスタは天井を見上げた。
「そ、それよりさ、ヴェスタ……ひ、一突きもしてないのに気をやっちまったなんて言ったら、ヴァイアランスの名折れかねェ……」
「へへ、ルーねえが早いのは、みんな知ってますよ」
「そ、そりゃ…ないだ…ろぉ……んっ……んあああああっ!!!」
ヴェスタの厚い胸に抱かれたまま、ルーレットの体は痙攣した。精液が抜け出ていくのが痛く感じられるほどの、固形のような液体がヴェスタの中に射出されていく。
「は…はあぁ……でもねェ…ヴェスタ、アタシが”連射のルーレット”だってコト、忘れちゃいないだろうね…?」
唇を交わし合いながら、ルーレットはいよいよ腰を動かし始める。
ルキナに会うという目的が思い出されるのは、結局二時間ほど後のことだった。
***
「ザラ様……どうして、どうしてあんな風に言ったんですか!?」
上品な調度で構成された、ザラの寝室。濃密な性臭で満ちたその部屋の中、たった一人ザラと向かい合ったディータは、珍しく語気を荒げていた。
「どういう意味ですの?」
つい先ほど、ザラの日課である部下達の輪姦が行われたばかりである。全身に皆の精液を浴びたザラは、股間から流れ落ちる混交した体液をグラスですくい、優雅な仕草で味わっていた。
「アビカです。あんな風に言ったら、あいつ……」
「醜い者は醜い。当たり前ですわ。私があんな者に世辞を言う必要が、どこにあると言うのです、ディータ?」
「そ、それはっ……」
ザラの厳しい視線に射すくめられて、ディータは尻尾を股の間に挟んだ。
「でも…ザラ様…お、オレと初めて会った時は、言ってくれたじゃないですか……オレのこと……」
「美しい…でしたわね」
いつの間にか目の前にあったザラの顔を見て、ディータは真っ赤になって俯いた。美神と呼ぶべき顔立ち、かぐわしい香り、優しい吐息……幾晩枕を共にしても、ザラに対しての恋は消えない。
「そう…です…」
そう、あの時。混沌の力が流れ出した氷の海で、海軍の船が難破した時。ディータ達は、煮え立つ氷の中で混沌に汚染された。
氷山にしがみついて目にしたのは、醜い怪物と化してのたうち回る戦友達。ある者は仲間を喰らい、ある者は自らの命を絶つ、地獄絵図……その中で、ディータの前だけには、救いの女神が降り立った。
混沌の軍船から降り立つ、ケイオス=ヒーロー・ザラ=ヒルシュが。
「ディータ、あなたが美しいから、私は美しいと言った。アビカは醜いから、醜いと言った。まったく同じことですわ」
「ひゃぅ……ふっ…」
ザラの指がディータのペニスに伸び、粘液まみれの自分のペニスと擦り合わせている。白磁の指の一つ一つが肉襞のようで、ディータは堪らず精を洩らした。
「フフ、熱いですわね…」
ザラの掌の中で、ディータの精液が幾度も跳ねる。その度に指は滑らかに動き、ディータをますます翻弄した。
「できましたのだっ!」
「はえ…?」
すっかりザラの指戯に耽溺していたディータは、突如降って湧いた明るい声に目をぱちくりさせた。
「まあ、早かったですわね」
「うむむ、まずは簡単な遺伝子操作による再構成ですなのだ。あの姿を見て仮説を立てたのだが、やはり淫魔の構成を指示する霊軸酵素に不備があり、それを調整したところ…」
「講釈はそこまで。お見せなさい」
「うみゅぅ……まあ、つまりは部品の山を組み立ててやったのだ…。さあ来るのだ、アビカ、グシーナ」
ザラに長口上をうち切られ、不満そうなザナタックは背後を見た。
ズルズルと肉の這いずる音。切なげな呻き声。止むことのない交接の肉音。
「アビカ……」
ディータはよろよろと扉に近付き、闇から這い出てくる二人を見つめた。
「……きれいだな…」
組み上げられた肉の塔に磔となったアビカは、美しかった。
「……美しいですわね」
ザラの微笑みを見たアビカは……あの時のディータと同じ、歓喜の涙を流した。