決戦を控えた神殿の広間。集まった両陣営の戦士達は、少しばかり奇妙な光景を目にしていた。
 酔っぱらってすやすやと寝息を立てるキスティオを担いだ、副官ギルディア。
 ぐうぐうと盛大なイビキをかきながら寝るザナタックを背負った、ギルメイレン。
 誰が戦いに赴くのやら、どんな戦いが行われるのやら、事情を知らない者なら見当もつかないような有り様である。

 ザラ勢の一画で勝負を見守ろうとしていたシャルレーナも、今までの戦いと違った緊張感の無さに、落ち着けないでいた。
「お姉様、大丈夫でしょうか……」
 シャルレーナの脇では、ザナタックに作られたもう一つの生命、ラーガシュが不安そうに手を組んでいた。
 緊張している子も、いるんだ。
「大丈夫だよ」
「シャルレーナ様……」
 シャルレーナは背後から大きな胸でラーガシュを抱くと、ラーガシュの視線の先……闘場を見つめ直した。

「ふ…む…むにゃ……お、おあ!? ここは…ほにゃ、もう戦いの時間なのか!?」
 最初に奇声を上げたのは、ギルメイレンの背中で飛び起きたザナタックだった。
 目の下にくっきりとクマのついた目をこすりこすり、ザナタックは床に降り立つ。
「ざな様、おはよう」
「おはようとは朝が早いからおはようと発言するのであって、こういう時は『お目覚めですか』などなどと言うのだ! 分かったかギルメイレン」
「はい。お目覚めですか、ざな様」
「お目覚めなのだ! 連日の徹夜で不覚にも睡眠に陥ってしまったが、もう大丈夫! さあギルメイレン、あいつらにお前の能力を見せつけてやるのだ!」
 ザナタックは大声を張り上げながら、ルキナ勢を威勢良く指さした。

「にゅああ…うるさいよお」
「やっと起きたか! ほら、降りろっ!」
「むにゃあ!」
 床に投げ出されたキスティオは、しばらくぼんやりと宙を見上げた後、自分の置かれた環境に気付いたようだった。
「あ…えっと…ぎれんめ…だっけ? こんにちわ」
「おれ、ぎれんめ、違う。ぎるめいれん」
「ふーん。アタシは、ヴェーラ=クィススチオだよ、ギメルイレン!」
「ぎめるいれん違う。……う゛ぇ、う゛ぇー……ら……??」
「クィススチオだよ」
「く、く…くすす?」
 二人の間の抜けたやりとりを見て、戦士達の唇にも、呆れたような微笑みが浮かんだ。
 シャルレーナの向かい、かなり遠くに座ったルキナはクスクスと笑い続け、一方背後にいますザラ様は不機嫌そうに柳眉を動かしている。
 このまま戦いなんかしなくてもいいのにな…と、シャルレーナは一瞬考えてしまう。
 けれど次の瞬間には、ザラの鋭い叱咤が闘場に響いていた。
「きりがありませんわ! 始めてしまいなさい、ザナタック!」
「了解なのだ! ギルメイレン、攻撃開始!」
「はい。 行くぞ、きすてぃお」
 ザナタックの指令を受け、ギルメイレンはなんの躊躇もなくキスティオに挑みかかる。
「あ…名前、言えたね〜♪」
 キスティオはニコニコと笑ったまま、ギルメイレンの手につかまれた。

 巨人ほどもあろうかというギルメイレンの右腕が、ガッシリとキスティオを掴んでいる。
 混沌の兵器として作られたギルメイレンのパワーは、幾度も手合わせをし、抱き抱かれあったシャルレーナにはよく分かる。いくら敵の戦士がそれなりの筋肉を備えていても、抜け出せるはずのない力だ。
 ところが。
「んー!」
 キスティオはだだをこねる子供のように顔をしかめると、一気にギルメイレンの拳を振り解いてしまった。
 ザラ勢の戦士達から驚きの声が上がる。ギルメイレンは事態に思考が追いつかないのか、自分の掌をぽかんと見つめている。
「えっとね、えっとね。ギルディアに、いやらしいことしろ、って言われたから、するね」
 そしてキスティオは千鳥足でギルディアの背後に回ると、その逞しい腰にしっかりとしがみついてしまった。
 キスティオの腰から、跳ね上がるようにペニスが勃起する。肌と同じく漆黒のそれは、グロテスクなほどに巨大で、血管で膨れ上がり古木の幹のようだ。
「…♪」
「あ……」
 キスティオに背後から抱きつかれたギルメイレンは、ピクンと体を反らせると、白い頬を桃色に染めた。キスティオの舌が唾液をたっぷりと塗りつけながら、筋肉の密集したギルメイレンの背中を這っている。背筋の溝をなぞるように、敏感な肌を吸い立てるように。漆黒のペニスはギルメイレンの股間を不規則に擦り上げ、キスティオの両手はギルメイレンの弾力ある胸に食い込んでいた。

 シャルレーナは思わず唾を飲み込んだ。抱いているラーガシュの肌が、しっとりと汗に濡れていくのが分かる。

「ややや…先制攻撃から攻勢にと思ったが……構わないのだ、ギルメイレン! お前の超強化膣壁で、そいつの精巣から精液を全部搾りだしてやるのだ!」
「はい…」
 ギルメイレンは自ら四つん這いになると、腰の高さをキスティオに合わせて尻を突き出した。
 ピュッ、ピュッっとリズミカルに、透明な愛液が漆黒のペニスを濡らす。人造生命であるギルメイレンは、命令一つで生理機能をかなり自由にできるのだと聞いた。
 腰をたっぷりと愛液で濡らされて、とぼけたキスティオの表情も、ついに欲情に支配された。一抱えはあるギルメイレンの尻を抱えると、ゆっくりと、無言で、ペニスを挿入し始めた。
「あ……」
 無感情な、しかしか細く女らしいギルメイレンの声が、吐息と共に吐き出された。
 そう…あの瞬間。無表情で無反応なギルメイレンが、一瞬だけ性を見せるその瞬間に、シャルレーナも仲間達も欲望を駆り立てられるのだ。
 キスティオも同じだったらしい。自分の倍ほどもあるギルメイレンの体にしがみつきながら、凄まじい力強さで腰を叩きつけ始めた。
「ふにゃあ……あ…おまんこ、このおまんこ、気持ちいいよお…! 腰っ…動いちゃうよっ…」
 キスティオのペニスは、ギルメイレンの体格にも遜色ないほど、太く逞しい。それが、引き締まって柔らかいギルメイレンの尻を引き裂き、貫いている。
 その激しい責めを受けながら、ギルメイレンが何の表情も浮かべていないのが、また異常に淫靡だ。

 シャルレーナの喉は、いつの間にか張りつくように乾いていた。極薄のボディスーツの中でペニスが反り返り、ラーガシュの緑色の尻にぐりぐりと当たっている。
 ラーガシュもまた、目を闘場に釘付けにされたまま、濡れた股間をもぞもぞとシャルレーナに押しつけていた。

「ダメだよお、射精しちゃうっ! アタシの精液、どびゅどびゅって出ちゃうよおお!!」
 キスティオが漆黒の肌に珠の汗を流しながら、叫んだ。
「いいぞなのだ、ギルメイレン! そのまま第二系生殖器動作で、全部射精させるのだ!」
「は…ぃ…っ…ざな…様……」
 ギルメイレンが、始めて表情を変えた。誰もが絶頂の時に浮かべる、苦痛と快楽が入り交じったような表情で、腰を反らせた。
 濡れた肉が激しく蠢く音と、キスティオの絶叫、そして熱い液体が噴出する響きが、シャルレーナに届いた。


「すごい…です……お姉様のお尻から…あんなに…溢れてる…」
 シャルレーナの腕の中で、ラーガシュがうわごとのように呟いた。
 射精は続いている。まだ続いている。おそらくは、立て続けに数度達しているのだ。……ギルメイレンの膣が織りなす、人外の動きによって。
 もう……我慢がきかない。
 シャルレーナはボディスーツの一部分、その先端を爪で破ると……何も言わずに、ラーガシュの胎内へそれを突き入れた。
 ラーガシュが息を呑み、体を硬直させる。それに構わず体を揺すると、興奮しきっていたペニスは大量の白濁を名器の中にぶちまけ始めた。

 キスティオの射精が始まり、シャルレーナがラーガシュを犯し始めてから、どのくらい経っただろうか。数秒…それとも数分?

 勝ち誇った笑みを浮かべていたザナタックが、ぴょこんと飛び上がった。
 ギルメイレンが倒れ伏している。その尻に乗ったキスティオは、歓喜の極みといった表情を浮かべたまま、まだ腰を動かしていた。
−−まさか、勝負あったの!?
 シャルレーナが我に返ると同時に、ザナタックが叫ぶ。
「し、しまった……なのだ! アルコールっ!?」
 床に伏してピクリとも動かないギルメイレンの肌は、見たことがないくらい、紅く染まっていた。

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