アルコール……
 そうか、闘場にずっと漂っていたこの臭気は、酒のものだったのか。そしてあのキスティオという戦士が……発していたのか。

 粘膜から吸収されるアルコールは、飲むのよりも遙かに効く。ザラ様にそう教えられ、戯れに肛門に酒を注がれたことを、シャルレーナは思い出した。
 おそらくキスティオの体内には混沌のアルコールが蓄積されていたのだ。それを精液と共に、ギルメイレンは吸収してしまった。
 混沌の精液を動力にしているというギルメイレンだ……ひとたまりもあるまい。


 闘場には、動揺とざわめきが広がっていた。
 キスティオは相変わらずギルメイレンに抱きついて腰を動かし、ギルメイレンは完全に動かなくなっている。
−−負けたんだ。
 シャルレーナとラーガシュは、互いの体が繋がっていることも忘れて、ギルメイレンに駆け寄ろうとした。

「まだですわ!」
 ザラの声が、戦士達の動揺をかき消した。
「まだ勝者のルーンは出ていませんわ。戦いは続いておりますことよ」
 静寂。その中でキスティオの甘い吐息だけが続いている。
「そうなのだ! ふふふふふ、ギルメイレン再始動っ!」

「第二形態に変化なのだ!」

 壊れた機械が突然復活したかのように……ギルメイレンが、立ち上がった。

 尻から振り落とされ、唖然としたキスティオの前で、ギルメイレンの姿が変わっていく。
 肉が、骨が、そして皮膚が、蠢きながら形を変えた。
 過剰なボリュームを持っていた筋肉が、引き絞られるように締まり、移動していく。左肩が盛り上がり、右脇からも肉の突起が現れる。
 三本から四本へと腕を増したギルメイレンは、それを誇示するかのように胸を張り、大きく天を仰いだ。
 ズボ、という肉の水音と共に、その股間から隠れていたペニスの幹が飛び出す。

「ギルメイレン、再始動しました」
 ゆっくりと瞼を開き……ギルメイレンは、氷のような視線でザナタックに応えた。


「ほにゃ? え。え、え??」
 ギルメイレンの変身を目の前にしたキスティオは、目を白黒させながら、後ずさっていた。
 思いは他の戦士達も同じだ。ルキナ勢の者もザラ勢の者も、一様に驚き、ギルメイレンから目を離せずにいる。
「にゃーっはっははは! 我が輩の徹夜の成果なのだ! キスティオとやらに比べて性能が落ちることが分かった以上、大改造を加えて形態進化! 見たか我が輩の科学力、なのだ〜!!」
 目の下のクマも誇らしげに、ザナタックはひっくり返りそうな勢いで大笑を続けた。
「さーあギルメイレン! 行くのだ!」
「了解」
 応えた時には、ギルメイレンの姿はキスティオの眼前にあった。
「キスティオ、逃げろ! 距離をとって武器を使え!」
 ルキナ勢から副将の叫びが上がる。
「う、うん!」
 キスティオはよろめきながらも俊敏な動きで、闘場を円形に走り出した。
 だがギルメイレンは表情を一切変えずに、6本に増えた触手を繰り出す。触手は幾何学的な軌道を描きながら走ると、キスティオの体を床に打ち付け、一気にギルメイレンの懐まで巻き取った。
「け、けほっ……ふにゃああ!?」
「コアを攻撃します」
 無駄のない動きでキスティオの態勢を変え、触手で磔にすると、ギルメイレンはその長大なペニスの上に犠牲者を落とした。
「ぃっぐうっ!!」
 落下の勢いで膣を貫かれたキスティオは、磔にされたまま、白目を剥いて悶えた。
 無理もない。ギルメイレンのペニスはキスティオの小さな股間を貫いてなお、まだ半分以上余っている。
 そこからは、今までの戦いには見られなかった、性の拷問が始まった。

 キスティオのか細い腰は巨大な拳で掴まれ、少しの手加減もなく上下運動を強いられている。
 半透明の触手は、キスティオの肛門に入り込み、乳房に吸い付き、透明な粘液を噴出させていた。
 キスティオは声も無い。ただ陸に揚げられた魚のように、震え、跳ね、痙攣していた。
 酷いことだとは分かっている。自分だって、無惨に蹂躙されたことがあるから。
 でも…
 それでも、シャルレーナはその光景に見とれ、ラーガシュの子宮に射精してしまっていた。

「にゃははっは! まだルーンは出ないようなのだな。ようしギルメイレン、そのまま出力最大! 発狂させて、お前専用のオプションにしてしまうのだ!!」
「や、やめろ貴様っ!! ル、ルキナ様っ、もういいでしょう、試合を止めさせて下さい!!」
 ザナタックとギルディアの声が、混じり合うように天蓋に響きわたった。
 主の命令を受け、ギルメイレンは態勢を変える。全身に血管が浮き上がり、その中の液体が一斉に下腹部へ走った。
−−あの子、死んじゃう!
 そんな考えが浮かび、シャルレーナの顔から血の気が引いた。
「お姉様…やめて下さい…」
 顔を両手に伏せ、ラーガシュが首を振る。

「…ぐす…ん……許し…っぇ…た…たす…けて……」
 動きが、止まった。
 ぽろぽろと涙をこぼすキスティオを見つめながら、ギルメイレンは動かなくなっていた。
「ど、どうしたのだギルメイレン? 出力全開なのだ!」
「ザナタック様、その命令は不正だと思考します」
「うにゅ?」
 ギルメイレンの反抗を、シャルレーナは初めて目にした。…おそらくは、作り主のザナタックも。
「目標を手に入れたいと欲求しても、我慢する。相手の思考になって思考する。そう思考します。よって、ここで目標の精神を破壊するのは不正です」
「にゅ…???」
 ザナタックは帽子をおでこからずり落としたまま、目を丸くして固まってしまった。

「ギルメイレン……覚えてくれてたんだ……」
 シャルレーナは、中庭でギルメイレンに話したことを思いだし、大きく息をついた。

「第二形態持続時間が終了します」
 ギルメイレンの体が、淡い光に包まれながら、一回り小さくなった。
 そして元の、無表情な顔に無邪気な瞳を載せた、ギルメイレンの姿が現れる。

 その額にヴァイアランスのルーンが輝いて……消えた。

「勝負ありましたわね! ギルメイレンの……勝利ですわ!」
 ザラの声と共に、シャルレーナの周りから歓声がわき起こった。


勝者:ギルメイレン (ザラ陣営)

ザナタック「予想以上なのだ! 我が輩に意見するとは……成長したのだな、ギルメイレン!」
ラーガシュ「お姉様…やっぱり優しいんですね。良かったです…」
ギルメイレン「ん? なんで、おれ、ほめられてる? おれ、勝った、だから?」
ザナタック「うにゅ…ま、また第二形態になった時に、誉めてやるのだ!」

CHAOSJYHAD第三戦 決着!

ギルメイレンがザナタックの強化を受け、一気にパワーアップ!
キスティオがしばらく再起できないことを受け、ポイントは大変動することでしょう。
キスティオは復活の時期が来るまで、そのポイントを総計に足すことができません。

この結果は、次回対戦表更新で反映されます。

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