CHAOS JYHAD 第八話 鎖(きずな)と契約(やくそく)

   前編: ギルディア−鎖(きずな)
                             夜魔


 薄明かりに浮かび上がる優美な裸身。鍛え抜かれた鋼の筋肉に鎧われた戦士の肉体には、快楽の汗が滴り落ちていた。彼女は、天井から下げられた鎖に巨大な両手を繋がれ、膝立ちの姿勢をとらされていた。引き締まった乳房を上下に大きく揺らしながら、それは、さながら一つのオブジェのようであった。見る者全てが、欲望をかき立てずにはいられない淫らな彫像。
 彼女、ギルディアは、快楽に拡散しそうになる意識を必死につなぎ止めていた。
 鎖を引きちぎる努力は無駄だった。どういう仕掛けになっているのか、強く引っ張れば引っ張るほど、それに比例して耐え難い程の激痛がギルディアを襲った。
 幾度と無く吐き出された精液で子宮を満たされた女性器は、今はゆっくりと撹拌を続ける張り型で栓をされ、いくら放出しても萎えることのない男性器は、搾乳機に似た筒状の触手に包まれ射精を強いられていた。
 ……くっ……不覚をとった……。こんな事じゃルキナ様に合わせる顔がない……。
 その時、不意に部屋の扉が開き、射し込む光が暗がりに慣れたギルディアの瞳を焼いた。
「ご機嫌いかが? ギルディアお姉さま」
 まぶしさに顔をしかめながらも、ギルディアは顔を背けることなく入り口に立つ影を睨み付けた。

「なかなかやるじゃないか……」
 ルキナ旗下、副将をつとめる混沌の戦士、ギルディア=フェアデンスにとって、久しぶりに出会う強敵であった。
 行軍中に突如襲いかかってきた、混沌の魔術のみならずかなりの体術を使うその少女は、ギィルディアに目を留めると、純白の髪を掻き上げながら、まだあどけなさの残る、しかし蠱惑的で淫猥な笑みを浮かべた。
「お姉さん、とっても綺麗。私と遊んでくれません?」
 ギルディアの返事は苛烈だった。乗馬の鐙を蹴り宙を舞うと、少女の頭上に怪力無双の巨大な腕を振り下ろした。大地が裂け、周囲にいた軍勢が地の底へ落ちて行くのを気にとめもせず、ギルディアは横殴りの第二撃を放ち、少女から投げつけられた火球をはじき飛ばした。
「なかなかやるじゃないか……あの攻撃をかわすだけでなく、反撃までしてくるなんて」
 強い興奮に、ギルディアの男性器が高々と鎌首を持ち上げた。それは少女にしても同じらしく、股間を突き上げる見事なペニスが、身を包む紗の上からでもはっきりと分かった。
「まだ名前も言ってなかったですね。私は、アエネス。お姉さんは?」
「ギルディアだ。では、アエネス、参る!」
 現れては消え、消えては現れ、ギルディアを翻弄しながらアエネスは幾度と無く強力な魔力を放った。ギルディアは、それらを受け、避け、一撃必殺の攻撃を放った。
 実力は近かった。が、勝負の趨勢はじきに見えてきた。ギルディアの攻撃を避けながらの魔術の使用は、目に見えてアエネスから俊敏な動きを奪った。
「……?」
 しかしながら、徐々に優位に立っているはずのギルディアは、何かしらの違和感を覚えていた。
 ……迷うな! 一瞬の迷いが、戦場では死を招く。目の前の敵を倒すことに集中するのだ。
 無数の戦場でギルディアを救ってきた信念。ギルディアは、幾度その身にアエネスの魔力を受けても、倒れることなく追いつめ、ついにその両腕で地に叩きつけた。
「ふむ、素材は悪くないな。ルキナ様への手みやげとするか」
 倒れ伏しはだけた紗の間から、透き通るように白い太股と、そして凶悪な一物がギルディアの目に晒された。ギルディアは、鉤爪を紗にかけると、一気に引き裂いた。顔に似合わぬ巨大な乳房と、その上にちょこんとのった小さな乳首。そして、ギルディアの目をひいたのは、可愛らしいお尻からのびる尻尾であった。先端部から透明な液体を吐き出すその尻尾は、見まごう事なき男性器の形状をしていた。
「その前に、少し味見だな」
 それを油断と言っては、ギルディアに酷であろう。難敵であったアエネスを倒すために極限まで張りつめた緊張も、さすがにこの瞬間にはゆるんでいた。その時だった。
 疲労困憊していたはずのアエネスがニヤッと笑うと、近距離から特大の雷撃を放った。
「な、何だと……」
 避けることも出来ずに直撃をくらい、ギルディアの意識は霧散した。
 薄れ行く意識の中、ギルディアの視界には、ダブって映るアエネスが映った……。
「お姉さん、惜しかったですね」
「さすがに私だけじゃ危なかった。ありがとう、イーリス」
「さあ、早くおうちに運びましょ。久しぶりに楽しめそうね、アエネス」
 そんな会話を聞いたような気もした。そして、ギルディアは、闇に捕らわれた。

「またいっぱい犯してあげますね、ギルディアお姉さま」
「私はお姉さまのでいっぱいして欲しいです」
「あ、ずるい! 私も」
「じゃあ、交代交代ね」
 そんな会話を交わしながらギルディアの躰をまさぐる二人は、完全な対称体だった。白く流れる髪も、美しい弧を描く眉も、ぱっちりとした目元も。大きな胸の形も、可愛らしい乳首の色も、くびれた腰も、付きだした男根も。顔の造形から指の先まで、二人を区別できる物は何一つ無かった。唯一区別することが出来るとすれば、互いに呼び合う名前が異なる、その一点であった。

 アエネスがギルディアと熱いくちづけを交わしながら自分の胸をギルディアのそれに擦り付ける。柔らかい肉と硬くしこった乳首の感触に、どちらとも知れずにあえぎ声が漏れた。イーリスが後ろからたくましいギルディアの背に躰に抱きつき、腰をくねらせながら尻尾でギルディアの尻の間をまさぐった。
「お姉さまの、いただきますね……うん、はぁぁ……す、すごいです……私の中でまた膨らんでる!」
 そう言って、ギンギンにそそり立つギルディアの性器に腰を沈めたのはアエネスだった。ゆっくりと動かすと、ギルディアはその不可思議な粘膜の動きに翻弄された。二人の乳房の間に出来た谷間からにゅっとのびてきたアエネスの尻尾を、二人で奪い合うように頬張り、しゃぶる。お腹に擦り付けられるアエネスのペニスの圧迫もまた、ギルディアの性欲をかき立てた。
「アエネスばっかりずるい! 私もお姉さまの中に入れさせて下さいね」
 返事も待たずに、イーリスはギルディアの股間の拘束具を解くと、自分の怒張をギルディアの菊座に突き立てた。
「あはっ、すごい締め付け。いっぱい感じちゃう! ……そして、前は、こっちでね」
 ギルディアの熱く濡れそぼった性器には、イーリスのもう一つのペニスである尻尾が潜り込んだ。リズミカルに突き立てられる二本の肉棒に、ギルディアは腰を振り応えた。
「あぁ〜ん、そんなに動かされたら、私もうだめぇ!」
 アエエスが、尻尾をギルディアの口にねじ込む。奥までくわえ込み、ギルディアはのどで締め上げる。舌先で筋を舐めるようにすると、のどに叩きつけるように大量の精液が吐き出された。
「お姉さま、全部飲んで下さい!」
 アエネスが叫ぶと同時に、きつくギルディアの男根を締め付けた。複雑な粘膜の蠢動に、ギルディアも堪らず精を吐き出す。
「あぁ……はぁっ!」
「次はこっちの番ですよ」
 射精の余韻に浸らせる間も与えず、背後からイーリスが激しく責め立てる。
「……そんな、激しっ……うぁっ」
 イーリスは背後から手を伸ばし、アエネスの精液にまみれたギルディアの両胸を掴み激しく揉みしだいた。可愛く付きだした乳首を、未だギルディアのモノを加えて放さないアエネスが吸った。
「お姉さま、すごく可愛い。こんなに先っちょ尖らせちゃって」
「ええ、あそこの締まりもすごく良い。いっぱい感じてるみたい」
「……馬鹿……」
「じゃあ、やめちゃっても良いんですか?」
「あっ……」
 イーリスが、大きく腰を引いた。抜けかけたペニスを追って、ギルディアの腰が突き出される。すると、それに併るように、イーリスが力強く腰を振った。
「あぁぁぁぁ!」
「きゃっ!」
 予想以上のギルディアの反応に、イーリスも我慢できずに激しく射精を繰り返した。ギルディアの中に、イーリスのものが浸みいった。
「イーリス、今度は交代ね」
「じゃあ、私がアエネスを犯してあげる」
 狂宴は、終わる気配がなかった。

 あれから、どれほどの時が流れたのか。ほんの数時間のことなのか、或いは数日のことなのか。
 強く弱く、深く浅く。絶えることなく犯され続けたギルディアの股間からは、アエネス、イーリスの精液とギルディア自身の愛液が泡を立てながら垂れ落ちていた。
 萎えることなく股間にそそり立つたくましいペニスは、口腔、たわわな双球、そして秘裂の奧にうごめく暖かい粘膜にしごかれ、そのたびに大量の精を放った。
「お姉さま、もう完全に私達のものね」
「ええ。もう、誰にもあげない。私達だけのおもちゃよね」
 白濁した意識の中、ギルディアは夢うつつでその言葉を聞いていた。
 ……私は、この二人のもの……私は……。
「お姉さま、それでいいわですよね?」
「これからは、私達がお姉さまを飼ってあげます」
「……私は、これから……」
 その時である。アエネスとイーリスで埋め尽くされようとしていたギルディアの心に、一人の美しくも愛らしい、一人の少女の姿が浮かんだ。その姿、言葉、愛し合った日々。さおれは、ギルディアの中で、突然強大な光を放った。
 ……ルキナ様……?
「……私は、ギルディア=フェアデンス……」
「えっ?」
「どうしたの、お姉さま?」
「……ルキナ様の忠実なる部下。我が主はルキナ様のみ。我を縛るは、ルキナ様のみ!」
 絡みつく二人を、大きく体を振って弾き飛ばすと、ギルディアは、渾身の力を両腕に込めた。
 ミシリ。
 微かに天井の鎖がきしんだ。激痛が、ギルディアの四肢を貫く。
「無駄ですよ、お姉さま。お姉さまの力ではその鎖は千切れません」
「無理をしても、命を失うだけですよ」
「……こんな所で、鎖に繋がれお前達に飼われて生きるなら、私はルキナ様の部下として死ぬことを選ぶ。言ったはずだ。我を縛るは、ルキナ様のみと」
 ミシリ。再び鎖がきしむ。脳をえぐられるような痛みに、ギルディアの意識が飛びかけた。
 ……ルキナ……様……。
 愛しいルキナを抱き抱くように、ギルディアは大きく腕を前に付きだした。
 鎖が千切れた。
 …………世界が、壊れた。

 ギルディアが気づくと、見覚えのある荒野だった。つき従うは、見慣れた混沌の戦士達。何一つ変わったことなど無い、行軍の途中であった。
「……今のは……」
「ギルディア様、如何しました?」
 不信に思った部下が尋ねる。
「……いや、何でもない。それよりも、ルキナ様が待っておられる。急ぎ戻るぞ!」
「はっ!」

「失敗しちゃったね」
「ええ。でも、絶対に欲しくなっちゃった」
 去りゆくギルディアを見下ろしながら、アエネスとイーリスが囁き合う。
「それなら、奪いに行けばいいじゃないか」
 いつの間に舞い降りたのか、二人の後ろに、闇を纏いし黒き翼を持つ男が立っていた。
「面白い。俺がお前達に教え込んだ淫夢の力を破るとは。実に面白い」
 男は、ギルディアが残した土煙が昇る地平を眺めながら続けた。
「ルキナという名前は憶えがあるな……。確か、奧玄の爺さまが話してた、Rebisとか言う魔人殿の迷宮の住人だったはずだが。どうだ? あの娘の後を追ってみるか?」
「ええ、夜魔様」
「かならず、お姉さまを私達のものにして見せます」
 欲情に顔を赤く染めた二人は、再びギルディアを犯し抜く時を思い描いた。

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