第四夜 ミルファ=ビーチェ
殺してやる。
忌まわしい混沌を、この世から一匹残らず。
偉大な魔力の力で、跡形もなく消滅させてやる。
忌まわしい器官を持って私を生まれさせた異界の力に、報いてやる。
混沌は、人間なんかじゃない。
奴らは、ケダモノだ。
ミルファ=ビーチェは、帝都の天上魔術学院を主席で卒業した、天才少女と謳われていた。
帝都には八つの魔術学院が存在する。天上魔術学院は帝都でも最も高い尖塔を擁し、星の世界、天界からの力を操る術の研究を続けている。
その強大な力は、混沌どもと闘うのに十分なものだった。
学院に引き留められたミルファは、魔術教師の座をあっさりと蹴り、冒険者となる道を選んだ。
栄光より、研究より、早くこの力で、忌まわしい混沌を駆逐したかったのだ。
ミルファの活躍は素晴らしかった。
北方より押し寄せる混沌と戦う砦に赴き、稲妻の嵐でケイオウスォリアーの群を焼き尽くした。
ビーストマンの脅威に怯える村を尋ね、流星の刃でケダモノどもを切り刻んだ。
どんな剣も、どんなメイスも、彼女の天界の盾を破ることはできなかった。
どんな足も、どんな翼も、サファイアの転送櫃の速度には敵わなかった。
醜い怪物が、忌まわしい変異体が、ミルファの後に屍となって続いていく。
これでいい。
ケダモノめ。虫けらめ。世界のほころびから沸きだした膿どもめ!
全て、殺してやる。
だが。
ミルファが知っていた混沌とはまったく違う一団が、ある日森に姿を現した。
一団を率いる少女が、ミルファの前に踏み出す。
熟練の職人が丹念に彫り上げたような、端正な顔立ち。
帝都でも自分以上に大きい者は見かけなかった、豊かなミルファの胸よりまだ大きい、滑らかな曲線を描く乳房。
規則正しく並び、官能を押さえつけているような腹筋。
ああ、そして何より・・・あの逞しい・・・
これも、混沌なのか。
ラネーシアという混沌は、かくも美しいのか。
ミルファは股間を押さえた。
押さえ続けていた彼女のケダモノが、熱くたぎってローブを押し上げていた。