ファ=ビー


 殺してやる。
 忌まわしい混沌を、この世から一匹残らず。
 偉大な魔力の力で、跡形もなく消滅させてやる。
 忌まわしい器官を持って私を生まれさせた異界の力に、報いてやる。

 混沌は、人間なんかじゃない。
 奴らは、ケダモノだ。

 ミルファ=ビーチェは、帝都の天上魔術学院を主席で卒業した、天才少女と謳われていた。
 帝都には八つの魔術学院が存在する。天上魔術学院は帝都でも最も高い尖塔を擁し、星の世界、天界からの力を操る術の研究を続けている。
 その強大な力は、混沌どもと闘うのに十分なものだった。
 学院に引き留められたミルファは、魔術教師の座をあっさりと蹴り、冒険者となる道を選んだ。
 栄光より、研究より、早くこの力で、忌まわしい混沌を駆逐したかったのだ。

 ミルファの活躍は素晴らしかった。
 北方より押し寄せる混沌と戦う砦に赴き、稲妻の嵐でケイオウスォリアーの群を焼き尽くした。
 ビーストマンの脅威に怯える村を尋ね、流星の刃でケダモノどもを切り刻んだ。
 どんな剣も、どんなメイスも、彼女の天界の盾を破ることはできなかった。
 どんな足も、どんな翼も、サファイアの転送櫃の速度には敵わなかった。

 醜い怪物が、忌まわしい変異体が、ミルファの後に屍となって続いていく。
 これでいい。
 ケダモノめ。虫けらめ。世界のほころびから沸きだした膿どもめ!
 全て、殺してやる。

 だが。
 ミルファが知っていた混沌とはまったく違う一団が、ある日森に姿を現した。
 一団を率いる少女が、ミルファの前に踏み出す。
 熟練の職人が丹念に彫り上げたような、端正な顔立ち。
 帝都でも自分以上に大きい者は見かけなかった、豊かなミルファの胸よりまだ大きい、滑らかな曲線を描く乳房。
 規則正しく並び、官能を押さえつけているような腹筋。
 ああ、そして何より・・・あの逞しい・・・

 これも、混沌なのか。
 ラネーシアという混沌は、かくも美しいのか。

 ミルファは股間を押さえた。
 押さえ続けていた彼女のケダモノが、熱くたぎってローブを押し上げていた。

NEXT