第十一夜 ギルディア
=フェアデンス
その日、ギルディア=フェアデンスはいつになく猛り狂っていた。
トカゲと馬の混血のようなラネーシアの騎馬を駆り、突撃するケイオスナイツの先陣を切って、その巨大な爪で兵士どもを切り裂く。
旧帝国の辺境に位置する、小都市の城門前である。
ラネーシアの略奪部隊の大規模な攻撃に対して、街の警備兵、民兵、そしてわずかな騎士達は、一丸となって抵抗していた。
その必死の様すら、非道く腹立たしい。
ギルディアの全身は熱に冒されたように燃え上がり、その熱を殺戮に向けなくては、自身が燃え上がってしまいそうだった。
雄叫びを上げ、爪の一薙ぎで戦列を崩壊させ、騎士を甲冑ごと握りつぶす。ピューレのようになった肉が、鎧の隙間から戦場に飛び散った。
五騎ほどいた騎士達はそれを見て恐慌をきたし、一斉に退却を始めた。
その中に高い悲鳴を認め、ギルディアは騎馬から飛んだ。
最後尾の騎士に背後から飛びかかり、馬から引き落とす。兜からこぼれる長い金髪、華奢な輪郭。やはり女だ。
ギルディアは女騎士の甲冑の尻の部分だけを剥ぎ取り、真っ白な双臀の間に灼熱したペニスを突き立てた。
「いやああぁぁっ! やめてっ! やめっ!!!」
「………くっ……」
「………?」
挿入はされていない。ギルディアは顎を上げて辛そうに顔をしかめると、爪の一撃で女騎士を気絶させた。
「お、いいケツしてるじゃねえか、その女。騎士なら多分どっちの穴も処女だ、一緒にやろうぜ♪」
両腕から硝煙を上げながら、サイバーミュータント・カナディアが騎馬で乗り付ける。
「ああ……カナディアか。お前にやるよ」
「ん? そいつぁ嬉しいケド……ギル、お前ここんトコ全然出してないんじゃないのか?」
「ああ…」
うなだれるギルディアの股間では、魔力を持つリボンで縛られたペニスが隆々と勃起し、耐え難い熱と欲望を全身に送り出していた。
「ルキナ様の、言いつけなんだ」
ゼブジールの巨大な戦鎚が城門を破壊し、街は陥落しようとしている。
殺戮と略奪の饗宴が繰り広げられる中、ギルディアは一人、欲望を抑える苦痛と快楽に身を焦がすのだった。
ギルディアが混沌の戦士になってから、もう五年は経つ。
傭兵をしていたギルディアは捨て駒の部隊に配属され、敗走した。敗残兵として敵軍の慰み者にされるよりはと、ギルディアは森で出会った混沌の軍勢に身を投じた。そこでもやはり慰み者にはされたのだが……相手は信じられない程美しい両性具有の上司達。気にはならなかった。
そしてギルディアは三ヶ月前から、新たなケイオスチャンピオンに仕えている。
その名はルキナ。
ずっと年下のはずなのに、ギルディアを虜にして放さない、褐色の悪魔。
ルキナはいつも無邪気で奔放で、長く軍隊生活をしてきたギルディアにはとてもついて行けないタイプだった。
なのに、やはりルキナには本能的に逆らえない。
そんなわけでギルディアは、遠征中の禁欲をルキナに命じられ、今も苦悶しながら神殿に凱旋したわけだ。
部下達が神殿に奴隷や物資を運び込む中、ギルディアはルキナの居室に向かっていた。
辛い一週間の禁欲ももうすぐ終わる。快楽の神ラネーシアの信徒に禁欲を命じるからには、恐らく大事な祭礼の一端なのだろう。
「ルキナ様、入るよ」
ノックの間中も、体は解放を期待して熱く息づいている。
「ギルぅ!! おっかえりー!」
ずっと聞きたかった、ルキナの声。ああ、今からどんなに淫らな儀式が待っているのか……
「ギル! お風呂入ろう!」
さすがに、言葉が、出なかった。