愛・玩・少・年




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「あ、シンちゃん、ちょっと!」


「何ですか?」



呼ばれて、ミサトの部屋に入る。



「ちょっと座んなさい」


「え? で、でも.....」



膨大なビールの空き缶。 得体の知れない何かの部品。 車のステアリングホイールやペダル。


.....座るどころか、足の踏み場もない(^^;。



「ほら! こ・こ」(はぁと)


「..........え? え?! えぇぇぇぇっ?!


こら! シンちゃん! 騒いでないでとっとと座る!」


「..................はい..........(--;」



しかたなく、座る。 ミサトの、膝の上。 すかさず、抱きしめられた。
押し込むように、胸元へ。


むぐぐぐぐっ! もう...。 何なんだよ、ミサトさん...」



巨大すぎる胸に頭を抱え込まれて。 息が詰まる。 無理に押し曲げられた背骨が痛い。



「ん〜〜〜.....軽い.....。 軽すぎるわっ!! シンちゃん! もっとちゃんと
 食べなきゃ駄目よ! おっとこのこでしょ?!」


「な、何言ってるんだよぉ...」


「...ま、それはそれとして♪ シンちゃん、あんたアスカのことどう思ってるの?」


「どう、って...。 家族、でしょ?」



がくぅ。
ミサトの上体から力が抜ける。 でも。 抱きしめた腕だけは緩まない。



わ、っぷ! むぐぐぐぐっ!」


「.....シンちゃ〜ん...。 『家族』はいいんだけど、さ...。 家族ったっていろいろ
 あるでしょ? お姉ちゃんとかとか...奥さん、とか♪」


な! ななななな何言ってるんですかっ!」


「んふふふふ♪ で、さぁ...。 ホントのとこ、どうなの?」


「え? そ、その...どう、って...?」


うりゃうりゃ! おねーさんに話してごらんなさい♪」


「むぐ...。 苦しいってば(--;、もう...。 .....そうだなぁ...、かな...。
 とびっきり手のかかる」


「あ、あははははははははは(^^;」


とびっきり手のかかるお姉さんも居ますしね。 ど〜するんですか? この部屋」


「あぅっ!(^^;;;;;」


「それに.....お酒臭いよぉ、ミサトさん.....」


「む?! 言ったわねぇ?! このこのっ!」


「むぐぐぐぐぐぐぐぐっ!!!」



怒髪天を突いて部屋を覗き込む蒼い瞳に、ミサトはしっかり気付いていた。
.....知っててからかっているらしい。



「くぁ?」



あ、いや、お前も忘れてないって(^^;、ペンペン。





翌日。 本部。


シンクロテストを終えた少年は、技術部長室に呼び出しを受けていた。



「あの...リツコさん、用事って...? さっきのシンクロテストの事ですか?」


「あぁ、シンジ君。 違うわよ。 プライベートな事。 ...さ、こっち座りなさい」


「あ、はい...」



手近な椅子に座ろうとしたら。



シンジ君! そっちじゃないわ。 こっち」(はぁと)



...と、リツコが指差したのは.....


自分の、膝の上、だった。



「り、リツコさんまで.....」


『まで』? ..........誰かに先を越されたのね..........。  ミサト?」


「えぇ.....。 お酒臭かった.....(;_;)」


「そう。 ならもう平気よね。 さぁ」(はぁと)



じぃぃぃぃっ、と、視線で訴えかける。


リツコは、にっこり笑って、自分の膝を指差した。



「.....はい.....」



がっくりとうなだれて。 座る。 思いのほか優しく、抱きしめられた。



「あぁ...。 やっぱり抱き心地いいわ...。 ね、シンジ君、私の子供にならない?」


「リツコさぁ〜ん(^^;;;;;」


「ウフフ。 冗談よ」



笑いながら。 目は、この上なく本気だった。 抱きしめられたシンジに見えないのは、いいのか悪いのか。



「あの...ところで、用事って.....もしかして、これの事だったんですか?」


「あ、ごめんなさい。 本題は違うの。 ...ね、シンジ君。 あなた、レイのこと
 どう思ってるの?」


「.....リツコさんまで.....今度は綾波ですか.....」


「ということは、ミサトにはアスカのことでも突っ込まれたのかしら?」



がっくりとうなだれて、胸元に顔を埋めてしまうシンジであった。



「そう...。 そっちは聞かなかった事にしておくけど...レイのことは、どうなの?」


「どう、って...なんていうか...何でかわからないんだけど...家族じゃないけど.....
 全然、他人、って感じはしないんです。 でも...お姉さんとか妹って感じでも
 なくて...。 ずっと...覚えてないくらい昔に分かれ分かれになった僕の半分って
 いうか...。 よく、わかりません.....」


「『お母さん』?」


「う...ん...。 確かに何だか綾波って『お母さん』って感じがするけど.....
 凄く似合うような気がするけど.....でも、『僕のお母さん』、って感じは全然
 しないんです」


「そう...。 自分の子供を産んで欲しい、って感じなのかしら?」


意地悪に、突っ込む。


と。


シンジの相貌が、ぼんっ!、と音を立てて真っ赤に染まった。



え? えぇぇぇぇぇっ! な、何言ってるんですかっ! リツコさんっ!!!」


「ウフフ...。 レイとじゃなの?」


え、えと...そんなこと、ない、けど...。 でもそんな...まだ.....


『まだ』、ね」


「リツコさぁ〜ん(T^T)」


「拗ねない拗ねない。 でも、好きなのね? レイのこと。 女の子として...」


「よく、わかりません.....。 でも、多分、そうなんだと思う.....。 ところで、
 リツコさん...」


「なぁに? シンジ君」(はぁと)


「.....タバコ臭いよぉ.....(T^T)」


「.....言ったわね...」


「むぐぐぐぐぐぐぐぐっ!!!」



結局、自ら墓穴を掘る美少年シンジであった。 合掌。





「..........疲れた..........」



よろよろと、自販機コーナーにたどり着く。



「あら、シンジ君、今あがり? .....何だか疲れてるみたいね」


「あ、マヤさんもあがりですか?」


「えぇ。 昨日徹夜だったし、選手交代してきたの」


にっこりと微笑む。 ゆったりしたTシャツに、デニムのタイトミニ。 疲れている筈なのに。 化粧気の無い童顔も、すらりと伸びた素脚も、10代のように艶やか。



「.....お疲れ様です(^^;」



上には上のお疲れさん、である。 シンジ、敗北。



「はい。 コーヒーでよかった? 冷たいのだけど」



ひんやりとした缶が気持ちいい。



「あ、ありがとうございます...」


「どーいたしまして(^^)」



続けて自分の分も買う。

意識したのかしないのか。 缶を取り出す時。 ちらりと、白いものが覗いた。


ベンチに腰を下ろして。



「さ、ちょっと座ってかない?」



指差した先は.....もはや、お約束。



「..........マヤさん、なんですか.....」



ため息ひとつ。 観念して、腰を下ろす。
一瞬、真上から、谷間が見えてしまって。



「あ.....」



思わず、頬が染まる。



「...やだ、わかっちゃった?」


「...え?」


「ん〜、ちょっと疲れちゃったし、ね。 その...少しキツくなってきてたから...
 ...着替える時、外しちゃったのよね」



ぺろり、と舌を出す。



「あ、早く飲まないと、温くなっちゃうわよ」


「あ、はい...」



とりあえず、ひと口、ふた口。 疲れたココロに、コーヒーの苦みが心地好い。



「あ.....」


「どうかした?」


「い、いえ、その...マヤさん、何だかいい匂いがするな、って...」


「そう? 別に香水とか何も付けてないんだけど...」



今飲んでいる、缶コーヒーの匂い。 NERV浴場備え付けのボディソープとシャンプーの匂い。 リンスの匂い。 自分からも漂う、ほのかな匂い。
それとは別に。 ふわりと、甘い匂い。



「だって...女の人の膝に座らされると.....お酒臭かったり.....煙草臭かったりした
 のに.....」


「あ、あはは...(^^;。 の事だかよく分かるわ(^^;;;;;」


「それでかな、何か...疲れちゃったんだけど.....マヤさんだと、何だか落ち着くな」


「ウフ、ありがと(^^)。 ...私ね、ず〜っと弟が欲しかったのよね。 シンジ君が
 私のことお姉ちゃんみたいに思ってくれると嬉しいな」


「あ、あははははは(^^;」


「それにしても...先輩や葛城3佐の気持ちもよく分かるわ〜。 ...シンジ君、凄く
 抱き心地がいいんだもの」


「ま、マヤさぁ〜〜〜ん(^^;;;;;」



シンジを見つけたものの出るタイミングを逸してしまい、 物陰からそっと見つめる紅い瞳に気がついていない二人であった。




残念がるマヤと別れて。 何故か、自然と足が向いて。 シンジは、初号機のケージに居た。 アンビリカルブリッジ。 巨大な顔の目の前。


何も知らないと、悪鬼に捧げられた美少年のイケニエにしか見えない。
だが。 当人は、何の恐怖も感じてはいなかった。



「はぁ...。 何でこんな所に来ちゃったんだろ?」



当然、答えが返ってくる筈も無い。



「昨日から、ミサトさんといい、リツコさんといい、マヤさんといい...何かみんな
 変なんだよな...。 どうして僕なんか、膝に座らせたがるんだろ?」


ぴくっ!


「マヤさんは優しかったけど...ミサトさんもリツコさんも.....あんなにきつく抱き
 しめられたら息ができないよ.....」


ぴくぴくっ!


「ミサトさんはお酒臭いし...リツコさんは煙草臭いし...。 でも、マヤさんはいい
 匂いがしたな...。 何なんだろ、あの匂い...」


がこんっ!


初号機の顎部拘束具が外れる。


めきめきっ!


右腕のロックがきしみ。 もぎ取られる。


どんっ!


初号機の巨大な右手が、シンジの目の前に差し出された。 そのまま、動きを止める。



本部全体に広がる混乱の中。 館内の全モニターに、むさ苦しい髭面が映し出される。
武装組織の悲しさか。 緊急司令確認の習性。 モニターに、視線が集まる。
集まって、しまう。


にや〜〜〜〜〜り/-\


無差別。 手加減抜きの、ゲドウ・フラッシュ。 一閃。


精神汚染。


本人(?)

それどころではないシンジ。

咄嗟に目を閉じた冬月。

先天的に免疫のあるレイ。

うっとりと瞳を「はぁと」にするリツコ。


5人を除き、全員の時間が、止まった。


外部に伝わる寸前に、警報を解除して、総司令権限で記録を抹消する。



「.....ヤキモチか...。 無茶しおって.....」



何事も無かったようにいつものポーズにもどる。 ...今、使徒が来たらどうする気だ? ヲヤヂ...(^^;



「..........乗れ、っていうの...?」


初号機は、動かない。


普通なら、 握り潰されたらどうしよう、 とか、 投げ飛ばされたらどうしよう、 とか、 食べられるんじゃないか、 とか、 恐怖に駆られるものだろう。


その筈なのに。


普段なら、怖い事は大嫌いで、何とか逃げ出せないか、という事ばかり考えているというのに。


何故か。 この時は、ほんの僅かな恐怖さえ、感じなかった。



はぁぁぁぁぁ.....。


深ぁ〜〜〜〜〜いため息ひとつ。



「今度は、手乗りか.....」



諦めたように、差し出された掌へ。



「昨日は...ミサトさん、僕のこと抱っこしたまま寝ちゃったから...お酒臭い
 息苦しいしでほとんど眠れなかったから.....眠たいや...」



ごろん、と横になって。 ふと、別れ際のリツコの言葉を思い出す。
見掛けより遥かに断熱性の高い特殊装甲は、冷たくはなかった。



「そういえば...何か、リツコさん、変な事言ってたよなぁ...。 綾波が、僕のこと
 好きだなんて...。 まさか、ね...」



思わず脱力する初号機。 全身を押さえ込むロックのおかげで事無きを得る。
それでもがくん、と軽いショックはあったのに。 シンジを乗せた右手だけは微動だにしないのは流石。 もちろん、シンジが気付く筈もない。



「僕の事なんて...好きになってくれる娘、いるわけないじゃないか...。 昨日から...
 なんだか、ずっとオモチャにされてるし.....。 だいいち、本人も自分の気持ちが
 何なのか分かってないって...どうして、そんなこと、分かるん、だろ...?」



程なく、穏やかな寝息を立てる。 初号機は、少〜しだけ指を上げて、枕にしてやった。


と。


ケージの入口に、白い美少女。
静かに、シンジの許へ。


刹那、初号機と視線が絡み合い。


シンジの眠る、掌へ。


シンジを見下ろして。 我知らず。 微笑みが、零れる。


ほんの少し、ためらって。


するり。 白いものが、形のよい脚を滑り。 無造作に、ポケットへ消えた。


枕許。 軽く、脚を開いて。 暫し、佇む。 少年は、目を覚まさない。


起こさないように。 静かに、横座りして。 制服のス...


じぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜っ.....


え? 何? ..........あの.........これじゃ、ダメ?(^^;


「.....20000Hits記念、なんでしょ.....?」


あ、あのね、さっきのアレだけじゃ、ダメかな?


じぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜っ..........


あの.....レイちゃん...?(^^;;;;;


「お色直し.....」


はいはい、結局ヲ約束なのね......(T^T)


...純白のブルゾンを脱いで。 シンジに、掛けてやる。


純白の。 お臍の出てしまう、短いタンクトップが、あらわになって。
大きく開いた胸元から、谷間がたっぷり零れた。
下からも、見えそう。


座ってなお膝に届かない、短い、純白のプリーツスカートをめくり上げ。
すらりとした、透き通るように白い素脚に。 そっと、膝枕。



「う...ん.....」



少年が寝返りを打ち。 レイの体に、その顔を向ける。 目を覚ます気配は、ない。
少女の素脚に、少年のが触れる。


「...!」



一瞬、息を飲んで。 すぐに、表情が和らぐ。 シンジの髪を、そっと愛撫。


自然に、微笑みが浮かんで。 こころもち、頬が紅い。


少女の脳裡に、リツコとの会話がフラッシュバックする。


















−−− あなた、シンジ君の事、好きなんでしょう?


−−− よく、わかりません.....。 でも、肉体的反応から推定すると、好き、
    なんだと思います...。


−−− そう...。 やっぱり、そうなのね...。 それで、シンジ君に対するような
    肉体的反応は、他の男性...例えば、シンジ君以外のクラスの男子や碇司令
    に対しても起こる?


−−− いいえ.....。 全く、起こりません。


−−− そう...。 それにしても、肉体的反応からよく推定したわね。


−−− 何故か分かりませんが、司令にも、ドクターにも質問してはいけない気がして、
    症状を文献で調べました。 疑わしい症例は他にも多数ありますが、恋愛時
    欲情時の女性の典型的反応と考えると、ほぼ完璧に一致します。


−−− よ、欲...(^^;...そ、そう...。 なら、私からひとつアドバイスをあげる。


−−− ...?


−−− アスカも、シンジ君に対して同じような反応を示しているわ。


−−− .....!


−−− あの娘、意地っ張りだから自分から動こうとはしてないみたいだけど、
    地の利はアスカにあるわね。 このままだと、取られるのも時間の問題よ。


−−− .....っ!


−−− だから...はい、これ。 一式全部揃ってるわ。


−−− ...?


−−− これくらいの格好して迫ってあげないとシンジ君みたいな晩生は気がつかない
    わよ。 まだ本部は出てないみたいだから、早く着替えて追いかけるといいわ。
    制服も下着も、帰れば予備があるでしょ? 今日着てるのは今度、取りに来れば
    いいわよね。


−−− はい...。


−−− あ、それから着替えたら上からこれ、着ておきなさい。 そういう格好は
    シンジ君だけに見せた方がいいから。


















しばらくして。
ケージに紅い疾風が飛び込んできた。


ゲドウ・フラッシュの猛威から誰よりも早く立ち直った、美少女アスカ。
そして。 その光景を目にするや。


赤くなったり、青くなったり。 百面相。


脱兎の如く飛び出して。 驚くべき早さで戻ってくる。 しっかり、プラグスーツからワンピースに着替えて。 初めて出会った日とよく似たデザインの、パステルピンク。 スカートだけが、さらに短い。


二人の元に駆け寄ろうとして。 強烈な殺気に、思わず竦む。


そ〜〜〜っと、シンジを起こさないように、静かに歩み寄り。


レイの太股に手を置いて。 無防備な、シンジの寝顔。
うっとりと見下ろす、レイの横顔。 穏やかに。 透き通るような。 美しい。 見た事も無い、優しい、微笑み。


思わずキレて。 叫びそうになり。 再び、強烈な殺気に竦む。 恐る恐る見上げると。
初号機が、音もなく、起こしちゃ駄目、とばかりに睨んでいた。


しかたなく、静かに、その掌へ。



ちょっとファーストっ! 代わりなさいよ! それはあたしの役目よっ!



白い美少女の耳元に囁く。



駄目。 碇くんは私が護るの...



シンジを見つめたまま、呟く。


叫ぼうとすると、殺気が襲いかかる。



う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!



思いっきり不満そうに、唸って。


起こしてしまわないように、そ〜っと。


いささか、不本意そうに。 シンジのおなかを枕に、横になる。


そろ〜りと、手を伸ばし。 あと少しで、シンジの手に届く所で。
手首を、掴まれた。 瞳だけを動かして。 蒼い瞳紅い瞳が、火花を散らす。


既にの触れあっているレイが押し負けて。
アスカの手が、そ〜っと、シンジの手をとり。


レイの太股から。


自らの、胸元へ。 そっと、滑り込ませて。 抱え込んだ。


シンジが目覚めた後の展開は.....ご想像にお任せしよう。





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