その影は、優に2.5mはあった。
異形でないことが逆に違和感を与える。北方系の美しい顔立ちに、はち切れそうにしなやかな筋肉をまとった、全裸の姿。
闇から身を起こした巨人は、ザラと一瞬目を合わせた後、地面で快感の余韻に浸る獣……ヴィランデルへと組み付いた。
あたかもレスリングの組み技。一瞬遅れて反応し、もがこうとしたヴィランデルを軽々抱え上げると、巨人は勢いよく下半身を跳ね上げた。
「ウォオオオオぉぉぉぉぉッ!!?」
一際高い獣の嬌声が、空気を震わせた。先ほどまでのザラの責めでとろけきっていた獣の性器は、さらに長大な巨人の性器を受け入れ、
泡立つ酒樽が壊されたかのように愛液を吹き出した。
終始無言で責め続ける巨人の腰が地を揺らす。セリオスは無意識のうちに己の男根をしごき立てていた。
「失礼。あのケダモノが淋しがるといけませんので、飼い主に返しましたの。
ジェナ、ペットの具合はよろしくて?」
「ああ」
巨人…ジェナはそれだけ答えると、獣の唇を愛おしそうに吸い、閉じた目を震わせた。射精の音が、獣の胎内からここまで響いてくる。
「準備はできたか? 己の肉を引き裂かれる準備は…」
二つの巨体がぶつかり合う性交は、セリオスの欲望をもはや限界近くまで高めていた。剣を両手で上段に構え、セリオスは跳んだ。
天狼剣よりも、肉の剣で美しい魔人を貫きたい衝動で、脳裏は深紅だった。
剣戟の音が木霊した。天狼剣を振り下ろし、ザラの肉を斬る感触を予期していたセリオスは、衝撃に痺れ数歩よろめいた。
「ぐううぅっ!?」
追って、体内を反動が駆けめぐる。天狼剣が震える。歓喜するかのように、わななくかのように…
剣との共鳴が始まっているセリオスは、地に天狼剣を突き立て、失禁するかのように愛液の奔流を地に叩きつけた。
「こ、これは…魔剣か…?」
「そう。あなたの剣と同じ混沌の剣。銀狼神の魂を吸いし悪夢の運び手、ブーゼントラウムブリンゲナーです!」
巨大な剣を持ったその美女は、大蛇の下半身を素早くのたくらせ、ザラとセリオスの間に立ちはだかった。
「ザラ様に手を上げるなんて、不届き千万です! こんなヤツ、私にお任せ下さい!」
「リュカーナ…ええ、ではそういたしましょう。久しぶりに、あなたの剣技を見せて下さいまし。
倒したら、「領地は切り取り放題」ですわよ…フフ…」
「わあい! ありがとうございますっ、ザラ様!」
歓声を上げたリュカーナの股間で、まさしく大蛇のように長大なペニスが、正直にそそり立っていく。
「甘く見るな、下衆な魔人が!!」
魔剣共鳴の反動から立ち直ったセリオスは、地を摺るように天狼剣を構えながら、低い態勢でリュカーナへと走った。
並みの魔人なら両断されているであろう剣撃を、リュカーナは毒蛇のような跳躍でかわし、空中から逆襲にかかる。
再び激突する二つの魔剣。互いの肉体まで響く衝撃が、魔剣士の脳を甘く痺れさせる。
パワー、スピード、テクニック、いずれも譲らぬ二人の撃ち合いが続いた。当然、数号と打たぬうちに、足下は愛液のぬかるみと化す。
だが、幾度目とも知れぬ鍔迫り合いの時。天狼剣の柄は、触手となってリュカーナに絡みついた。
両腕の動きが封じられ、さらけ出された白い腹を、突きが襲う。
柔らかい脂肪と、締まった筋肉と、温かい内臓の肉感を想い、セリオスは狂喜の笑みを浮かべた。
「調子に乗るんじゃないよっ!」
セリオスの視界が回転した。
背後からの、強烈すぎる一撃。魔剣士の体は宙で激しく回転し、一瞬後、大地に叩きつけられる。
「ぐぬぅっ!?」
衝撃で脳を揺さぶられながらも、セリオスは超人的な意志力で受け身を取り、天狼剣を振るった。
その剣筋の上を滑る、巨大な紅い尾。
………ドラゴン!?
確かめる間もなく、巨木のような尾が鳩尾に叩き込まれた。
地面を削りながら転がるセリオスに、その竜は素早く飛びかかり、両の鉤爪を叩きつける。
巨大な落石に押しつぶされるような、凄まじい拳撃の連打。
剣を振るう間も、もがく余裕もなく、上半身に拳を乱打されたセリオスはぐったりと動かなくなった。
「おやめなさいラディアンス! 殺してしまいますわ!」
ザラの叱咤を受け、凶暴な竜はようやくその攻撃の手を止めた。
「ラディ姐! いきなり襲いかかるなんて…」
「ああ…うー…すまないね。リュカが斬られそうになってるのを見たら、頭に血が上っちゃって…」
照れ笑いをしながら、オーガの上半身と赤竜の下半身を持つ美女は、気絶したセリオスを持ち上げた。
「そんなことよりさ、ザラ様。「切り取り放題」だったよねえ…」
ラディアンスの、オーガとドラゴン……二本のペニスが、糸を引きながら先走りの液を垂らした。
「リュカ、一緒にやろうよ。フフフ…アタシ好みの、ようく締まった腹をしてそうだねえ…」
「あ…じゃあ、ザラ様、こいついただきますね!」
ラディアンスは、オーガの腕とドラゴンの前足でセリオスを磔のようにつかみ、小さい方のペニス……それでも人間と比べれば遙かに巨大だが……をあてがった。
その肉の磔台に、リュカーナの下半身は絡みつき、セリオスの股間で屹立する肉剣を捕らえる。
「……ぅ……う……うああああああっ!!?」
痛みと快感で意識を取り戻したセリオスは、二つの肉の怪物に挟まれている自分に気づき、絶叫した。
持ち主の声が高まり、つかえ、哀願と屈従の媚声に変わる中……地に突き刺さった天狼剣は、歓喜するかのように刀身を濡らしていた。
心地よい芳香に満ち、淫靡な形の花が咲き乱れる、緑の庭園。
混沌の美に彩られたラネーシア神殿の庭園は、両性具有者達の肉の宴で満ち満ちていた。
ファルカナとディータの引き締まった肢体に組み付かれたザイナは、もはや貴士の誇りの微塵もない。
ファルカナの膣の造りに歓喜の声を上げ、ディータの腰のリズムに翻弄されたまま、己の興奮を高める言霊を叫び続けている。
ブランジェは限界まで怒張したペニスをコロンに突き入れ、ザナタックとギルメイレンの動きに身を任せたまま、コロンと唇を貪りあっている。
ジェナとヴィランデルの腰が打ち合わされる水音は高く響き、ヴィランデルが悶絶する度に、木々が引き裂かれ地が削られていた。
天狼剣の刀身をリュカーナの巨乳で包まれ、膣にドラゴンのペニスを先端だけ挿入されたセリオスは、雄叫びのような媚声を繰り返していた。
「フフ……やはり、混沌の渦が収束するラネーシア様の聖地……淫らな者達はその因果に魅かれ、自ずから集まるのですわね…」
先ほどまで白い獣の体内に何リットルと射精していたザラのペニスは、しかしまったく衰える素振りも見せず、天に向かって屹立している。
部下達の痴態を霞がかった瞳で見据え、ザラはしなやかな指で自慰を続けていた。
その熱い先端が、滑らかで暖かい肉に包まれる。
「……レベッカ」
いつの間にか自分の巨根をしゃぶる少女を見て、ザラは珍しくはにかむような表情を浮かべた。その紅潮もすぐさま快楽に上書きされ、柳眉の間に一筋の皺が寄る。
「んぐっ……ん……ん…はぁ。いつも濃いね、ザラの精液は」
ザラのとめどない精液を飲み干した両性具有の少女・レベッカは、自然な動きでザラに抱きつくと、その腰を上下させ始めた。
「ああ…いいですわ…レベッカ…」
「それはそうだよ…私の体は全て、ザラの体に合わせて調教されているんだから。さあ、私達も楽しもう……」
ザラはレベッカを抱えたまま、部下達が織りなす肉の渦へと歩んでいく。互いの軟らかな肉を擦り合い、体液を交換し、時に入れ替わり時に組み替わる肉の宴は、
優に一時間も続いただろうか。ラネーシアの戦士達の性欲は少しも衰えず、犠牲者達の理性も溶けきった頃……庭園を囲む霧が、薄れ始めた。
「あ…残念だけど、もう時間だよ…ザラ。お客さんが、来る時間だ」
ザイナの尻を犯しながらザラを受け入れていたレベッカが、微笑むように庭園を見渡した。
「そのようですわね」
腰を引くザラの股間で、入り交じった体液が長く糸を引く。ペニスを引き抜く感覚に身震いしながら、ザラは薄れ行く霧の彼方を見やった。
「さあ皆さん! 新しい獲物の、お出ましですわよ……!」
霧の彼方から無数の足音が響き、混沌の戦士達の強靱な戦意が、ザラ達の身を共鳴させる。それを受け、ザラのペニスはますます熱く硬く勃起しているのだった。
「この霧を作り出したのは……貴方か」
神殿の副官・ギルディアが、巨大な鉤爪をザラに突きつけた。
「俺達の足を止めてヴィル様としっぽりとは……いただけねえなァ。ここがルキナ様の領域と知っての真似かよ?」
サイバーミュータント・カナディアの腕が銃口に変形し、残忍な瞳が戦士達をねめつける。
その背後に立つは、触手で空を裂かんと身構える部隊長ヴェスタ、誇り高き舞闘家シャルリアン、ドワーフの貴人マチルダ…
いずれも強大な力を持つ戦士と戦奴達は、ザラ達へこみ上げる欲望と殺気を身中で融かしながら、霧の晴れた庭園に立っていた。
「出迎えご苦労ですわ……ルキナさんが見あたらないのは気に入りませんけども…」
微笑むザラの背後で、繋がる体をそのままに、配下達が武器を取った。
それを見逃さず、走る影がある。舞闘家シャルリアンは戦士達の命も待たず、刃の風と化してザラ達へ斬りかかっていた。
エルフ最強の戦人に先を取られては、いかに混沌でも反応するのは難しい。
ザラが微笑みを解き、ギルディアが目を見開いた瞬間には、シャルリアンの姿はザラの頭上にあった。
「油断したな。終わりだ!」
曲刀が振り上げられる。ザラの鎧が瞬時に防御形態に変形する。
だが、シャルリアンは剣を振り下ろすことなく、硬直したまま着地した。
「レ……レー…ナ……ぐっ!!」
呆然としたシャルリアンを、ジェナの強烈な蹴りが見舞った。吹き飛ぶ体をギルディアに受け止められてなお、シャルリアンはザラの背後から目を離さない。
「久しぶりね、姉様…それに、カナディア!」
「お前はっ…!?」
ザラの背後から、妖しい笑みを浮かべつつ歩み出た優美な姿は……舞闘家シャルリアンの妹、かつてカナディアの凌辱を受け、恋人を殺された……シャルレーナであった。
「レーナ! レーナっ! お、お前が……なぜ、ラネーシアなんかに…そ、そんな…私は…」
「フフフ。再会を見るのを、私も楽しみにしておりましたのよ、シャルリアンさん」
うずくまるシャルリアンと、戦慄に震えるカナディアを交互に見た後、ザラは大きく両手を広げた。
「さあ! これで私達は全員出揃いましたわ。そろそろ出てきてもよろしいのではなくて、ルキナさん!?」
戦士達の列が割れる。混沌の神殿のただ中に足音が響き、くすぐったそうな笑い声が、ザラの耳まで届いた。