「ひとまず、今のは、ボクの勝ちだね」
唇を離し、無邪気に微笑むルキナ。
「ルキナさんらしからぬ、せせこましい戦い方ですわ」
少女のように、唇をとがらせてそっぽを向くザラ。
すでに二人に戦いの殺気はなく……その表情は、戯れ合う恋人同士のようになっていた。
「まあ、そう言わないで…ね……?」
ルキナは、かつてザラと過ごした日々を思いだしながら、ザラの頬に手を添え、再び唇を重ねた。
***
それは、ヴァイアランスの混沌の渦の中だった。
全ての物が一時として同じ姿を取らない世界。デーモンとケイオスの将が戯れる、肉の宮殿世界。
ルキナが、産声を上げた世界。
そして、征服から凱旋したルキナと、初めてヴァイアランスの界に辿り着いたザラが、出会った世界。
二人はすぐに惹かれ合った。
ルキナは、ザラの中にある気高さを、まぶしさを、感じるのが好きだった。
ザラは、何にも囚われないルキナに、憧れると言ってくれた。
果てのない交わりの日々だった。
時に入れ替わり、時には主従を演じ、体から全ての快楽を搾り出すまで、どちらかが泣いてすがりつくまで、ひたすらに体液を交換し合った。
ルキナは、ザラが好きだった。
けれど何時からなのだろう…
けれどどうしてなのだろう…
どうして、ザラはボクを憎んでいるんだろう………
***
唇を重ね合ったまま、ルキナはザラの芳香をたっぷりと吸った。
官能的で優しい、肌の香り。ルキナの嗅覚は、その中に混じる淫らな獣のフェロモンまでを感じ取る。
「あぁ…」
わずかな疑念は、背骨を駆け下りる欲情が打ち砕いた。ルキナの脳裏に、ありし日々のザラの痴態が次々と甦ってくる。
離した唇の間で、二人の唾液が糸を引いた。
「ルキナさん…」
あの頃と同じように、ルキナへの恋慕を込めて、ザラの潤んだ瞳が見上げた。長い手足が、下からルキナに絡みついた。
いつの間にか、虚空は二人の意志を感じ取って、どこまでも広がる柔らかな寝台を創り出していた。
二人の体を包む混沌の鎧も、交わりの時を知って小さく変形し、主の肌をさらけ出している。
褐色と純白、最上の肌同士がこすれ合った。
「ザラの体…すべすべして…柔らかくって…気持ちいいよぉ…」
ルキナは甘えた声と共に、楕円形につぶれた胸を、なだらかな腹筋の段差を、厚い太ももを、ザラに押しつけた。
絹よりも滑らかな肌の感触と、柔らかく引き締まった美肉の弾力が、互いを刺激し合う。
心地よい。
ザラの体とボクの体が触れあう感触……きっと、この世のどんな物に触るのよりも、気持ちいいよ。
そんなことを、言ったっけ。
多分、嘘じゃない。
抱きあうケイオスヒーロー達の下腹から、たちまち男女双方の愛液が溢れ、互いを濡らし始めた。
***
「ふっ…くうううっ! ぁはっ…!」
堪えようとしても、堪えきれない。喉が勝手に、濡れた声を上げる。
「んっ…ザラ…… ぴちゃ… じゅるっ……」
自分の体にのしかかったルキナが、舌の水音を交えつつ、愛おしそうに呻いた。
その中に込められた愛情を手放さないように、ザラはルキナの頭に手を添え、しっかりと自分の胸に押しつける。
右の乳房は、長く伸ばしたルキナの舌に、何重にも巻き付かれていた。
左の乳房は、粘液まみれのルキナの触手で、絶え間なく形を変えられていた。
美しい紡錘形の胸が、濡れ、悶え、搾り上げられる。両胸に、容赦なく媚薬めいた唾液と粘液が染み込んでくる。
「あ…んんんんんっ……! ひうぅぅっ……」
両胸が巨大なクリトリスになって、くじり潰されているかと思うほどの快感に、ザラは身震いした。快感に、歯の根が鳴っていた。
「ザラのおっぱい…大好き…。揉んでも揉んでも…強く押し返してきて…いつまで触ってても…飽きないの……」
言いながら、ルキナの左手が、ザラの背中を…腰を…なで回した。
もっと触れていたい…ザラもそんな思いに駆られて、ルキナの肩に手を回す。太ももをこすり付ける。ペニスを褐色の胸に押し当てる。
「あっ…」
ルキナの肩が離れるのを、ザラの指先が惜しむように追った。
素早い動きで体をずらし、ルキナの顔はザラの股間に埋められる。
「はあああああっ!!?」
意識が逸れた隙に、股間から撃ち込まれた快感が、覚悟のできていないザラの脳を灼いた。
「んんっ!! んんんんっ!!!」
激しく涙が溢れ出て、視界が一瞬明滅した。長く伸びたルキナの混沌の舌が、錐のように硬く、ザラの産道に押し入ったのだ。
「いやっ…ルキナ…さっ…んぐううううっ!」
ザラの胎内で、濡れた肉がうねった。ペニスとも違う、膣内の肉粒を残らず舐め取られていくような感覚に、ザラはのけ反った。
硬くすぼめられた舌先が、子宮口を突く。
いけないっ……!
ザラの意識が体を制御しようとした時には、遅かった。
子宮が、はっきりと分かるほど収縮した。
ペニスを求め、子種を求め、子宮口がきつくルキナの舌を締め付ける。
欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい。
ルキナに犯されたい。ルキナの子種が欲しい。ルキナの濃厚な精液で子宮を満たされたい。ルキナに孕まされ、ルキナの子を産みたい……!
ザラの中に眠る雌の本能が、狂ったように暴れ始めた。
これが恐ろしい。
ルキナに攻められると、自分が雌になってしまうのが恐ろしい。
ルキナを攻めると、自分が雄になってしまうのが恐ろしい。
ルキナの体に触れると、自分の中にある男女両性が引き裂かれて、どちらかの欲望が暴走しそうになってしまう。それが、恐ろしい。
ヴァイアランスの力とはすなわち両性具有の力だ。男女どちらかとして溺れてしまえば、聖戦で勝利を得ることはできない。
「くうううううううっ!!」
ザラは、自分の下腹で荒れ狂う快感を、一気にペニスに引き上げた。
そう、ルキナに孕まされるだけの自分であってはならない。
ルキナの胎も子種も、どちらも思うままにするのが私、ザラ=ヒルシュだ!!
「かはあっ!!」
息を吐き出し、これ以上不可能なほど弓なりに反り返ったザラのペニスから、勢い良く精液が噴き出した。
尋常な量ではない。無理矢理に向きを変えさせられた快感が暴走するかのように、糸を引く粘液が噴き出し続ける。
ザラの精液は虚空の高みまで矢のように昇り詰めると、仮の重力に引かれ、白い雨となって二人に降り注いだ。
「ん…」
快感に震えるザラの子宮を、思う様にしゃぶっていたルキナは、陶酔した表情で降り注ぐ精液を眺めている。
「ふふ…」
蕩けた表情に微笑みを浮かべると、ルキナは一気に舌を引き抜いてきた。
それに反応して、たまらずザラのペニスは再び精液を打ち上げる。
「…よく、今のを我慢できたね。このままおちんちんを入れて……勝てるかなって思ったケド…さすがに、甘くないか」
「危ない…所でしたわ……。昔のワタクシなら、あのまま貴女に腰を振る雌犬になっていたかも知れない…」
ザラは息を整えながら身を起こし、ルキナに背を向けた。
「おいでなさい…ルキナさん。今日まで此の地でしてきた密会は、ほんの遊び。これこそが…混沌の界で別れて以来、初めて貴女に開く…ザラ=ヒルシュの体ですわ!」
むっちりとした美尻を両手で押し開き、絶え間なく潮を噴く花びらをくつろげる。
単なる雌の孔ではなく…相手と一つになる為の両性具有者の聖杯をルキナに見せつけ、ザラは艶やかに微笑んだ。
***
張りつくように渇いた喉を、唾液がいやに大きな音を立てて通り過ぎていった。
ルキナの目の前にあるのは、美しく汗ばみ、理想のカーブを描く、ザラの尻。
かつて幾度も抱いた。しかし、現在のザラが本気になった状態では、抱いたことがない。懐かしさと期待がルキナの中で混じり合い、心臓を焦がす。
ルキナの責めを克服したザラの性器は、両性具有者らしい包容力と積極性を併せ持ち、ルキナを搾り取ろうとしてくるだろう。
今度は、ルキナが雄の欲望に呑み込まれないようにする番だ。
「いくよ…! ザラ……」
半ば自分に言い聞かせるようにしながら、ルキナは膝立ちのまま進み、二本のペニスをあてがった。
尻の谷間にある美しいすぼまりに、ペニスを。濡れそぼる淫裂に、クリトリスのペニスを。
二本のペニスで二孔同時に攻める…ルキナが最も好み、得意とする交接だ。
「小細工なし…良い覚悟ですわ!」
ザラが振り返り、賞賛の笑みを浮かべる。
同時に、そのしなやかな腰が激しく波打った。
「っ!?」
ザラの尻が力強く押しつけられ、ルキナのペニスは一瞬で、膣と肛門に根本まで呑み込まれた。
……ずらされたっ!!
予想外のタイミングで挿入されたペニスを、凄まじい快感が急襲する。
「あっ…ぐううっ……ううっ!!」
大きく息を吸い、ザラの尻に指を突き立て、ルキナは射精を堪えた。
「……ぁ……!」
だが、その愛らしい頬を涙が伝うと同時に、抑えきれない絶頂は二本のペニスから迸り、ザラの中に流れ出していく。
「フフフ…ワタクシの、長い長い鍛錬の成果…たっぷり…味わって…んっ……いただきますわよ…!」
精を撃ち込まれる快感に柳眉をしかめながら、ザラはさらに激しく腰をくねらせ始めた。
「くっ…! あ…ダメ…ダメっ…ザラっ!!」
ルキナが攻めに転じる隙を与えずに、ザラの尻は激しく前後した。膣壁と直腸、それぞれ極上の粘膜と締め付けが、ルキナのペニスを無尽に搾り上げる。
このまま攻められたら…ダメっ!!
ルキナは焦りを覚えながら、何とか体勢を立て直し、ザラの腰をしっかりと掴んだ。そのまま、力を込めてザラの胎内に剛根を突き込もうとする。
しかし、思うように腰が動かない。
「うそ…何っ…で……?」
「どうしましたの、ルキナさん? それで責め立てているおつもり!?」
ザラの性器が、その締め付けだけで双子の淫魔少女を持ち上げるほどの力を備えていることを、ルキナは知らない。
その強烈な締め付けが、ザラの動きを助け、ルキナの腰使いを妨げる、微妙な伸縮を見せているのだ。
「うあっ…きゃううううっ!!」
そのままザラの腰に貪られるように、ルキナは二度目の射精を迎えた。
下半身から一斉に力が流れ出していくような、凄まじい放出感。心地よい。このまま、全てザラの中に呑み込まれても良いと思ってしまうほどに…
一瞬、全身を温かなザラの秘肉に包まれてしまうような錯覚に襲われた。
その快楽に引き込まれてしまう寸前で、ルキナの意識はなんとか立ち戻る。
「スゴいよっ…ザラ…! こんなに凄くなってるなんてっ…! でも…負けないっ……!」
ルキナは快感で霞んだ視界にザラを捉えながら、腰に力を込めた。
ルキナの巨根が、熱い血の流れを受けて、さらに一回り膨れ上がる。
「くはっ!?」
ザラの腰の速度が、ぎこちなく緩まった。
−−効いてる!
ルキナはさらに意識を集中させ、二本のペニスに封じられた混沌の変異を解放した。
ペニスの先端から太い舌が伸び、ザラの腸の奥深くを凌辱し始める。同時にその幹には、淫らな突起が膨らみ現れた。
クリトリス−ペニスは、その根本にある生体機械を作動させ、震動とうねりでザラの膣をかき回していく。
「く…ううううっ…見事ですわっ…し、しかしっ……!」
急激に高まった快感に身震いし、ザラは激しく射精を始めた。
これで、精力勝負だ…!
与える刺激が増した分、ルキナの受ける感覚も高まっている。ザラと同じリズムで射精を繰り返しながら、ルキナは己れの精力を信じた。
「あぁ…んんっ…くっ……こ、こんなっ……」
あまりに強烈な快感を与えるペニスでえぐられ続け、さしものザラの表情も蕩け始めていた。
逞しい背筋と腹筋、太もものバネから生み出されていた腰のグラインドも、徐々に勢いを失っていく。
ルキナはその機を逃さず、しっかとザラの尻を掴んで、腰を叩きつけ始めた。
「おおおおぉぉっ! はっ…ああああああっ!!」
ザラの媚声が、発情しきった獣のように、荒々しいものに変わり始めた。
心底感じ始めた証拠だ……かつてのザラとの交わりを思いだし、ルキナは内心笑みを浮かべる。
実際に笑みを浮かべるほどの余裕はない……ルキナとて、ほとんど絶え間なく射精を強いられている状態だ。
「ぐっ…ううううっ!!」
前の射精が終わる前に次の絶頂が来るほどに、射精のペースが速まり始めた。
このままでは、さらに高い絶頂まで引き上げられてしまう。だが、責めを緩めたらここで負けだ。
「ああああああああああっ!!!!」
ルキナは、快感の声とも戦の咆哮ともつかない叫びを上げて、一気に腰の動きを速めた。
「がはっ…!?」
ザラが喉を詰まらせ、その股間から失禁でもしたかのように愛液が噴き出す。
飛沫を上げる精液と愛液を全身に浴びながら、ルキナはザラとの間に快楽を作りだし続けた。
絶頂に絶頂が重なり、二人の間でバウンドする快楽のボールは、果てしなく膨らんでいく。
それを受けきれなくなった方が、負けだ。
二人は声を出すことすらかなわず、ただ交わるためだけの機械のように、激しく腰を打ち付け合った。
来る…来るっ!!!
ルキナの全身を、一際大きな快楽の波が洗った。
二本のペニスが弾けるように震え、まだこれほど出せるのかと自分でも思うほどに、大量の精液をぶちまける。
ザラの胎内の奥が、精液でまた一回り膨れるのが感じられた。
「……っ!!」
ザラは美しい碧の瞳に涙を溢れさせたまま、硬直した。
一分。
長く、長く続いた最大の絶頂に、二人のケイオスヒーローが硬直してから、一分。
ザラの体が、糸を切られた人形のように、崩れ落ちた。
***
「はぁ…はああっ……はあ……はああぁ……」
ザラの背中に身をもたせかけたまま、ルキナは必死に息を整えていた。
勝った。
これ以上は、自分も保たなかっただろう。最後の最後、わずかな差で、ザラの性力に打ち勝ったのだ。
長い戦いだった。でも、これで終わり。
聖戦は引き分け…もしかすると、ザラはこれからも一緒に神殿にいてくれるかも…知れない。
ルキナは微笑むと、失神したザラの背から尻をさすり、ゆっくりと腰を引いた。
締め付けたまま硬直した括約筋をくぐり抜け、ペニスを引き抜く。
「………え……?」
ルキナが違和感を覚えると同時に、その視界が激しく揺さぶられた。