対戦の時を告げる鐘が、神殿の高楼から鳴り響いた。
重々しく、美しく、鐘の音は階層を満たし、戦いの舞台となる本殿にまで届く。
「はふっ……」
その音すら胎内を震わせるようで、ジュヌビエーブは悩ましげな声を上げた。
「みゅう…調子に乗って、エナジーをいただきすぎちゃったですぅ…」
眉を八の字にして、女吸血鬼は腹を押さえた。体の中を巡る過剰な精力は、体を媚薬漬けにでもしたように、ジュヌビエーブの欲望を煮え立たせていた。血が沸き返る。瞳が潤む。吐息が燃える。普通のヴァンパイアが日光を浴びた時のように、体が燃えて塵になってしまうのではないか。日光に慣れて長いジュヌビエーブは、そんなことを思いつつ歩を進めた。
祭壇の炎で照らされた神殿は、その端々をぼやけた闇で守られながら、二つの陣営の戦士達を受け入れていた。
先の戦いで敗れたルキナ勢には、緊張の色が濃い。ジェナの子を孕んだヴィランデルも、妹の付き添いを受けて陣営の奥に控えている。
ジュヌビエーブは居住区から本殿へ続く通路のアーチをくぐり、ルキナ陣営の隅に立った。
背の高い戦士達は一様にザラ陣営を見据え、こっそりと入場したジュヌビエーブに気付く様子もない。声でもかけるべきか思案していたジュヌビエーブは、優しく肩を叩かれ、背後の薄暗がりに振り返った。
「先輩……」
メイドのサワナ。歌姫のトーニャ。魔術師のミルファ。日頃ジュヌビエーブを世話してくれる先輩奴隷達が、そこに立っていた。
「いよいよですね、ジュヌビエーブ。緊張もするでしょうけど、気持ちを落ち着けて、頑張って」
ジュヌビエーブの手を包むサワナ先輩の指は、しっとりと、暖かかった。
「性交と言っても、ジュヌビエーブには食事を採るようなものですものね。きっと勝てますよ」
ミルファ先輩の滅多に見せない微笑みが、嬉しい。
「……もう、あんまり言うのもシツコイからさ、言わないけど。……いってらっしゃい、ジュニ」
そしてトーニャ先輩の眼差しは、強く、頼もしかった。
「は、はい! 私、頑張りますですっ!」
負けはしない。私の体の中には、先輩達のエナジーが満ち満ちているのだから。
***
吹き上がった炎がヴァイアランス神像を照らし、美しい石の乳房に陰影を刻みつけた。
戦士達が息を呑む。ザラ様とルキナ様が笑みを浮かべる。戦いの始まりだ。
コロンは拳を握りしめて覚悟を決めると、一気に間合いを詰め、ジュヌビエーブを責めることにした。
大股で数歩踏みだし、自分より少し小柄なジュヌビエーブの顔を見つめる。いつも困ったように微笑んでいる愛らしい顔は、照らされる炎のせいか、赤く染まっているように見えた。
仕えている人は違うけれど、思いがけず仲良くなれたコだ。ボクと同じように気が弱くて、泣き虫で。お喋りしてると、いつまでも続けられるみたいだった。
「ジュヌビエーブ……ボ、ボク、戦う相手がジュヌビエーブで、ホントは少し嬉しいんだ。ジュヌビエーブとは仲良しで、いつか…そ、その、エッチなこともしてみたいと思ってたから。だから、ほ、本気で……本気でエッチなことするね!」
「は、はいですっ! お願いします」
「じゃ、じゃあ、えと……」
背筋を正すジュヌビエーブを前に、ことを始めようとして、コロンはふと固まってしまった。
ブランジェにしろザラ様やザイナさんにしろ、責められ慣れているコロンではある。だが、自分から積極的に攻めるには、どうすればいいか分からない。
「あ、あ、あ、あのっ、さ、触るねっ!」
白く豊かなジュヌビエーブの乳房。それがとても魅力的で、コロンは両の掌を大きな胸の表面に乗せてみた。吸い付くような肌の触感と、内部の柔らかさを想像させる微妙な揺れが、指先から伝わった。
「………」
多分このまま揉めばいいのだろうが、緊張で顔が赤くなるばかりで、指先が動かない。振り向けば、ブランジェが怖い顔をして両手をにぎにぎ動かして見せている。前を見れば、ジュヌビエーブまでもが困惑してコロンの手を見ている。
「あの……揉んでもいいですよ…」
「え!? う、うん! じゃあ揉みます!」
コロンは目をつぶって、両手に力を込めた。
途端に沈み込む十指。柔らかい柔らかい肉にどこまでも沈み込む、そう思った瞬間に強い弾力が押し返す。
――すごい…
コロンは感嘆の息を洩らして、何度も指を動かした。その度にジュヌビエーブの胸は複雑な動きを返し、コロンの欲望をかき乱した。
「はあっ……はきゅうううっ!」
「あっ!? ご、ゴメンなさいっ!」
ジュヌビエーブの嬌声を聞いたコロンは、思わず指を離して頭を下げていた。コロンは今のが快感の声だとは気付いていない。想像以上に硬く勃起していた自分のペニスに戸惑うばかりであった。
「そ、その、あんまり気持ちよかったものだから…ボク、つい夢中で…」
「あ、あ、コ、コロンさん! やめちゃダメですぅ…お願いです、もっと揉んで下さいぃぃ…」
「……へ…?」
ジュヌビエーブに握られた手が、その柔らかな胸に押しつけられた。再び沈み込む掌。コロンはくぅと小さく息を漏らすと、また女吸血鬼の巨乳を揉みしだいた。
「は…みゅくぅ……あ、ああんっ! コロンさん…おっぱい、おっぱいが気持ちいいですぅ…」
――か、かわいい……
コロンに押し倒されるような形で、ジュヌビエーブは甘い声を上げながら悶えている。その表情があまりに愛らしくて、コロンは思わず喉を鳴らした。
「気持ちいい? じゃあ、こ、これはどお?」
大きく胸を反らすと、コロンは自分の乳房をジュヌビエーブに押しつけた。ふっくらとパンケーキのような形をしたそれは、釣り鐘型のジュヌビエーブの乳房に劣らないボリュームを持っている。二人の間で大きすぎる胸同士が潰れ、形を変え、せつなげな快感をもたらした。
「は…ふ…んん…ボクのおっぱいが…いい……」
「コロンさんっ…もっと、もっとおっぱい潰して下さい…」
ジュヌビエーブが強い力でコロンの腰を抱き、二人の体はますます密着した。少し動く度に柔らかな脂肪がたわみ、小さな乳首の突起が出会うと素晴らしい刺激を与えてくれる。このままずっと抱き合っていてもいいとすら、コロンは思った。
「あふゅ!?」
陶酔するコロンの脳を、激しい快感が襲った。亀頭の先端をぬるりと擦った、熱い粘膜の感覚。
「ジュヌビエーブ……も、もうこんなに濡れてるんだ……」
偶然擦れたジュヌビエーブの股間は、まだ胸にしか触れていないというのに、豊潤な愛液で濡れそぼっていた。
胸を合わせながら腰を動かすと、ペニスの先端が秘唇に触れる。繊細な花びらはペニスを渇望するように蠢き、コロンはそこで腰を引く。
「あ! コ、コロンさんっ! 下さいっ、コロンさんのおちんちん、下さいっ!」
腰を必死に動かし、コロンのものを受け入れようとするジュヌビエーブ。いつもの気弱そうな態度からは想像もできない淫乱ぶりに、コロンは戸惑った。
「え? でも、まだ、その…弄ったりとか、してないし…」
「いいんですぅ…もう、もう、おちんちんが欲しくておかしくなっちゃいそうなんですぅぅ!」
コロンの胸の下で哀願しながら、ジュヌビエーブはぽろぽろと涙をこぼした。
残された理性が溶けていき、胸の中で痛いほどの欲望に変わる。
コロンはジュヌビエーブの体をしっかりと抱くと、一気に腰を突き下ろした。
「きゅあああああんっ!!! コ、コロ…ん…さ…んっんんんっ!!!」
「うあ、あ、あぅぅ…凄いっ…凄すぎるよおおっ!!」
肉食動物の口にペニスを突っ込んでしまったのかと、コロンは錯覚した。
それほどに、ジュヌビエーブの胎内は熱く蠢き、貪欲にコロンへと食らいついてきたのだ。乳首をしゃぶる赤子のように、小さな膣口は収縮を繰り返して精を搾り出そうとしている。何百という舌が絡みつくかのように、膣粘膜の微細な襞がペニスを舐め尽くす。そして固いはずの子宮口までもが、蕩けたようにコロンの亀頭をくわえ込み、吸い付いていた。
「ああんっ…あああっ…大きいですぅ…エナジー、エナジーたくさん射精して下さいっ!!」
「う、動けない…動けないのにっ、で、出ちゃ……ひぐっ!!」
根本までジュヌビエーブの中に没入したコロンは、そのまま微動だにすることもできず、射精した。海綿体が膨れ上がり、生命のエキスが噴出する。それを感じるのか、吸血鬼の胎内はまた動きを激しくした。
「ひやあっ…ま、待って、ジュヌビエーブさんっ! ボク、ボク、ダメだよ、そんなっ!」
「おいしいですぅ…ああ、コロンさんのエナジー、濃くって美味しい……もう止まんないですよぉぉ★」
妖艶な歓喜の笑みを浮かべて、ジュヌビエーブはコロンの肩に腕を回した。動き始める力強い迎え腰と、ますます動きを大胆にする膣内。
コロンは悟った。
全て吸い尽くされてしまうまで、ジュヌビエーブからは離れられないのだ。
***
ヴェスタは笑う。
ジュヌビエーブは極上の吸精鬼に成長している。コロンという奴隷程度の力では、どれだけ射精してもジュヌビエーブの精力を増すことにしかならない。
勝負は決した、と。
ブランジェは笑う。
敵はコロンの潜在能力を知らない。そしてその能力は、この後の極限の性の中で目覚めるだろう。
勝負はこれからだ、と。
***
「はきゅうう…気持ちいいですぅ……うふふふふ……あっ!」
熱いバネがビクンビクンと、体の中で跳ねた。ジュヌビエーブは身をよじり、下腹を密着させたまま、胎内に放出されるエナジーに酔った。
すでにコロンはジュヌビエーブの胸にぐったりと体を任せ、ただ時折快楽の喘ぎを洩らすだけになっている。
それでもジュヌビエーブの性欲は衰えを知らず、コロンの精液を絞り尽くすまで止まらないようだった。
「もう…ゆる…し…て……」
「ダメですぅ……はあっ…はああっ…わ、私、もう止まらないですぅ……」
「ひ…う……」
ジュヌビエーブの鎖骨にポタポタと涙をこぼしながら、コロンはうなだれた。
――ああ…このまま勝っちゃうなんて、緊張することなかったです……
勝利を予感したジュヌビエーブが、体位を変えるべく腰を動かした瞬間。
その視界が180°回転した。
「え……ぇぇぇええええっ!!?」
丸い尻に鉤爪が食い込む。熱い吐息が背中にかかる。
そして腹の中で、力無く溺れていたペニスが、膨れ上がった。
「きゃひいいぃぃいっ!!?」
焼けた鉄のような熱さが、膣内を蹂躙した。尻全体に凄まじい力がかかり、激烈な一突き。脳天まで杭で貫かれたような挿入感に、ジュヌビエーブは絶叫した。
「は…はひ……ぐ……?」
息も絶え絶えになりながら、かろうじで首を回した。
そこでは快楽の極みに溺れるコロンが、発情した野犬のように舌を出しながら、ジュヌビエーブの尻を味わっていた。
「ジュヌビエーブ……ボク……熱いよ…」
愛らしい表情が、獣欲に染まっていく。
「…熱いよおぉっ!」
パン、パン、と激しい音を立てながら、コロンのペニスは何度もジュヌビエーブを突き刺し始めた。吸血鬼の性器は必死にそれを責め、コロンはそれに応えて射精を始めた。だが、先ほどまでとは桁違いに、熱い。濃い。
濃密な獣のエナジーはジュヌビエーブの子宮に収まり切らず、全身の血流に乗って肉体を犯し始めた。
――破裂しちゃうッッ!!
ジュヌビエーブの瞳から、恐怖で涙が溢れ出した。コロンの射精は止まらない。射精しつつ抽送は繰り返され、一つの絶頂が終わればすぐさま次が訪れる。しかもジュヌビエーブの性器は、己れの限界を迎えても、奉仕をやめることを知らない。
「ゆ、許してぇぇぇっ!!! 死んじゃう、お願いですっ、死んじゃいますぅぅぅ!!!」
「ボク……止まらない…よ…」
心臓に杭を打たれた吸血鬼と同じ、恐怖と快感で引き裂かれる叫びが、神殿に木霊した。