−あるいは、墓石都市の小さな日常
「ふう…」
小さく息をつくと、墓石都市の守護者・セルージャは、密着した白衣を留める金ボタンを外し始めた。
鍛錬を終えたばかりの肌は汗ばみ、白衣から褐色の美肉が透けんばかりになっている。
ボタンを全て外し、布を引き剥がすように脱ぎ捨てた。
現れるのは、隙もなく鍛え上げられた肉体。
汗と埃にまみれながらも、セルージャの肌は筋肉美と両性具有の美を遠慮なく放っていた。
呼吸のたびに、大きな球状の乳房がかすかに震える。
一見疲労しているように息が荒いセルージャだが、その股間で屹立するペニスは、彼女が少しも衰えてはいないことを誇示しているかのようだった。
ここは、ネクロポリスに唯一存在する浴場である。
そもそも、湯浴みをする死人というのはあまりいない。
ゆえに、広大なネクロポリスの中でも、浴場と言ったらネクロナースの居住塔にあるこの部屋だけなのだった。
巨大なドクロの顎に湯がたたえられた、色気もない−−というより悪趣味な−−湯船に向かって、セルージャは無造作に歩く。
「…ん」
そこで、背後に立つ気配に気付いた。
「アヴィダヤ」
浴場の入り口には、ヴァンパイアの魔導看護婦・アヴィダヤが立っていた。
逞しい体を包んではちきれそうな白衣の一点、ペニスはさらに大きく張り詰めている。ブロンドと美しい碧の目を持つ美貌は、すでに欲情に濡れていた。
「ボス…お背中、流しますよ」
床に置かれた液体石鹸のボトルを手に取ると、アヴィダヤは微笑む。
「随分暴れてたじゃないスか、ボス。そういう後には、汗流すだけじゃなくて…体ん中に溜まった熱を、誰かん中に出しちまった方がいいってもんですよ♪」
鍛錬の間ずっと精力を溜め込んでいたセルージャのペニスが、ズキンと疼いた。
……悪くない。
「良し、頼んだぜ、アヴィ」
セルージャは、これまた趣味の悪い彫刻のされた石の腰掛けにどっかと座り、ネクロナースの奉仕に身を任せることにした。
大きく開かれた内腿の肉が、反り返る男根が、汗ばむ胸と腹が、アヴィダヤの視線を引き寄せる。
ギュッと、背後から抱かれた。
逞しいセルージャの背中に大きな双球が押しつけられ、太い腕が腰に回る。アヴィダヤが、背中を流し始めたのだ。
アヴィダヤは看護服を脱いでいなかった。服に石鹸を直接つけ、その布地で背中を洗っている。セルージャの背を、布越しに潰れる柔らかな乳肉の感触が、泡のぬるみを伴って繰り返し上下した。
「セルージャ様…」
色気のない呼び名をやめて、アヴィダヤの唇が濡れた息を吐く。セルージャは首をひねると、肩越しにその唇を吸った。
「…セルージャ様、アタイの体、たっぷり感じて下さいよ…」
今度はセルージャの正面に回り、アヴィダヤがつぶやいた。
白衣の胸元だけをはだけ、そこにたっぷりと泡をまとわせている。その体をセルージャに密着させ、アヴィダヤは巧みに奉仕を続けた。
「上手いぜ、アヴィ…」
かすれた声で、セルージャは応えた。
褐色の胸と白い胸が、たっぷりと潰れ合いながら泡を立てる。白い胸はそのまま滑り降りて、セルージャの腹筋の段一つ一つをなぞった。逞しいペニスを挟み込み、豊かな肉感を数度楽しませると、また上昇して胸同士の悦びを味わわせる。
「くぅ…」
その行為が十回ほども続くと、セルージャの煮えたぎる欲望は堪えきれなくなっていた。
「…あっ!?」
アヴィダヤの大きな体を抱き上げると、一気に浴室の床にに押し倒した。
看護服の全面を乱暴に開くと、紡錘形の胸が震え、規則正しく並んだ腹筋と、反り返ったペニスが露わになる。
「ん……」
一瞬驚いた表情のアヴィダヤだったが、主人の欲情を知ってか嬉しそうに微笑み、自ら逞しい両脚を開いた。
「すまねえな、ちいと乱暴で…でも、お前にあんなにされちゃ…辛抱たまらないぜ…」
セルージャは開かれた太い両脚を抱え込むと、力任せに腰を突き込んだ。
「うぐっ…! ぅ…セ…ぅあ…様っ……!!」
「くうぅっ…たまんねえ……キツイ…」
セルージャの剛根をぬめる肉が包み込み、その根本を太い括約筋が締め上げた。強力なゴムに縛り上げられたような喰い締めが、重く精の溜まったペニスに心地よい。
「やっぱり…いいぜ、アヴィ、お前の女は…。この、まっすぐに攻めてくる感じが…堪えられねえ」
お前の戦い方とおんなじだな、とセルージャは心の中で付け加える。
「…行くぜ」
そして、荒々しく腰を使い始めた。
「うっ…ぐ…あああああああっ!! 凄っ…くうううううっ!!」
激しく腰が打ち付けられる度に、アヴィダヤはセルージャの下で悶え、暴れた。背を反らせ、腰を振りたくり、脚を絡ませる。
荒れ狂う大蛇のような動きを力強く押さえつけ、セルージャはアヴィダヤの引き締まった股間を貫き続けた。
「どんどん締まるぜ…アヴィ…ぐっ…」
「セルージャ様っ…アタイ…もう気をやっちまうよォっ…!! あぐっ…ひっ…うううううっ!」
アヴィダヤの体が弓のようにしなり、反り返って激しく痙攣した。
絶頂を迎えて膣が激しく収縮する、その瞬間を逃さず、セルージャも交尾の速度を一気に上げる。
レイシャや他のネクロナース相手には出せない膂力を込め、素早い連撃もかくやというスピードで、刺し、引き、刺し貫く。
「ぐ…あああっ!!」
肺にためられた息を力強く吐き出し、セルージャは吸血鬼の膣内に精をぶちまけた。
涙を溜め、歯を食いしばり、盛大に男女の絶頂を迎えているアヴィダヤ。その胎内に、リズミカルに大量の精液が撃ち込まれていく。
「はあ…はあっ…はあ……」
陶酔した表情のまま、セルージャはアヴィダヤの胸に頬をあずけた。
細やかな技巧の点では他に劣るかもしれないが、自分の中に溜まった劣情を肉体の望むままにぶつけられるアヴィダヤとの交接は、いい。
セルージャはアヴィダヤの体を再び抱き起こすと、その向きを変え、背後から二戦目を挑もうとした。
「あ…ちょ、ちょっと待って下さいよ、ボス……」
「ん?」
珍しいアヴィダヤの反応に、セルージャは怪訝な顔をしてしまう。
「なんて顔してんですか…ボス。へへへ、アタイに夢中になってくれるのは嬉しいケド…それじゃあ、ドリィとフロウに恨まれっちまいますよォ」
「そうですよ〜!」
「!」
悲しそうな声に顔を上げれば、浴場の入り口には2人のネクロナース、フロウネルとドリコーナが立っていた。
「アヴィダヤさんばっかり、ズルイですぅ…」
「確かにアヴィ殿の体は素晴らしいのでしょうけれども……私達のことを忘れてしまわれるというのは、あまりと言えばあまりな御仕打ちですわ、セルージャ様」
「おう…あ、いや、そういうわけじゃねえって…」
早速涙目になっているフロウネルと、ドリコーナの静かな抗議に、セルージャは慌てて言葉を取り繕った。
「クスクス……かっこわり〜、ボス」
「な、何言ってんだよ! そもそもお前が、3人で来てるって言わねえからだろ〜!」
セルージャはアヴィダヤを小突いてから立ち上がり、照れ隠しに手桶の湯を頭からかぶった。
頭を一振り、改めて3人のナースに振り返る。
「よし。じゃあ改めて、4人でひとっ風呂浴びるか」
その顔は、いつもの精悍な守護者のものに戻っていた。全身を伝い落ちる湯の滴が肉の美しさを強調し、まだアヴィダヤの粘液を絡ませたペニスは、生き物のように脈打っている。
「………」
笑っていたネクロナース達の表情が、一瞬にして主への欲望に塗り直された。
「セルージャ様…」
誰ともなくつぶやき、湯気に包まれたセルージャの肉体に、3人のアンデッド達が群がっていく。
体の中に撃ち込まれる膨大な生命力に痺れ、気を失うまで主に抱かれる3人の魔導看護婦達。
ネクロポリスの、いつもと変わらぬ日常である。
(了)