守護者小説

 

巫女子・セルージャの章

 清影に柔らかく包まれた社には、早朝を思わせる心地よい冷気が漂っていた。
 無論迷宮の中に朝日は届かない。しかしこの両性具有の諸神を祀る大社は、時を感じてその境内の光景を刻々と変化させているらしい。
 セルージャの吐き出した力強い吐息が白く、巫女子(みこね)の息に混じっては彼方に消えていく。

 墓石都市守護者・セルージャ。アルセノテリス交易社務所守護者・巫女子。二人の守護者は今、社務所の本体とも言える大社の境内で、体を重ねあっていた。
 巫女子はセルージャの膝の上に座り、セルージャはそれを背後から抱き締めている。巫女子の体は華奢で、そのまま逞しいセルージャの体に包み込まれてしまいそうだ。
 抱き締めたら折れそうなこの感じ、レイシャに似ているな。
 そんなことを思いつつ、セルージャは巫女子の秘部を指で弄んでいた。
「ぁ………ふ……セルージャはん……」
 時折小さく声を洩らしながら、巫女子はセルージャの掌を押さえ、自分の股間に強く押しつけていた。
 胸とペニスを除けば、清純な少女と言った方が似合いそうな巫女子であるが、こうして見る女性器はまた殊更に幼い。細い筋一本しかないそこへ、拳撃で太く鍛えられたセルージャの指が入り込んでいる様は、痛々しいほどである。

 実はセルージャ、巫女子を抱くのは今朝が初めてであった。
 巫女子は守護者の中でも遅れて召喚された存在であり、ザラほどではないにしろ、異邦人という感があった。住む階層も離れている。しかもザラ乱入やらパルボIQ襲来やら迷宮移転やらと事件が続き、ロクに顔を会わせる機会もなかったのだ。
 それが今朝、走り込みでこの境内まで足を伸ばした所で、玉砂利を掃く巫女子と出くわしたのである。
 互いに興味もあったようで、また両性具有の守護者同士ということもあり、立ち話は自然に交接に変わった。

 こんなに可愛いんなら、さっさと抱いておけば良かったかな…
 艶々とした黒髪の、優しい匂いを嗅ぎながら、セルージャは思う。
 指を、柔らかい粘膜の中で曲げてみた。
「きゃっふっ!」
 巫女子は丸眼鏡の奥で黒い瞳を見開いて、硬直した。数秒震え、切なげに息を殺し、セルージャの大きな胸に頭をもたせかける。そのまま首を反らした巫女子の潤んだ瞳が、ついとセルージャの瞳に合った。
「はぁ…はぁ……や、やっぱセルージャはんは『てくにしゃん』やわぁ……」
「ん、そうか? そんなコト初めて言われたな…」
 一本気なセルージャは、性戯の最中はついつい夢中になって、相手の快感にまで気が回らなくなってしまうことも多い。
「守護者同士だ。別に、お世辞なんか言わなくってもいいぜ」
 照れ笑いを隠すように、セルージャは巫女子の額に唇で触れた。
「そんなん、ちゃいますぅ……。ほら見はって下さい、セルージャはん…う、ウチのオメコ、こんなにピクンピクン言うて……自分でも恥ずかしいくらいですわ…」
 セルージャの指が、柔い肉の輪で強く締め付けられた。締め付けごとに巫女子の隙間からは透明な果汁が吹き出し、セルージャの手やら緋色の袴やらを濡らしていく。
「はあぁ…すげえな、巫女子。こんな子供みたいなあそこしてんのに、この締め付けかよ…いやらしいネコちゃんだな」
 感嘆の呻きを上げながら、セルージャは指を動かした。中指で巫女子の膣を味わったまま、親指と人差し指でその上にあるペニスの付け根をつまむ。巫女子はセルージャの腕の中で身を強ばらせ、くうと悲鳴をこらえた。二本の指の中では、ペニスが一気に二回りも膨れ上がっている。
「はうぅ…もっと…もっと言って下さい、セルージャはん…。ウチ、巫女なのに変態やって…いやらしいって……」
「ああ。ほんと、いやらしい変態巫女だな…へへ。発情した雌猫のくせに、こんなにちんちんまでデカくして……」
「はふうう……」
 セルージャの言葉に恥じ入り、巫女子は顔を真っ赤にしてうつむく。だがその涙の中に混じった歓喜が、巫女子の性格をよく伝えていた。
 −−巫女子ってマゾだったのか…知らなかったぜ…
 セルージャはニヤリと笑うと、乱暴なくらいの勢いで、指を操った。膣の天井をこすり上げるように中指でくじり、輪にした親指と人差し指でキツくペニスを絞る。苦痛と快感がない交ぜになったように、巫女子は激しく喘いだ。
「セ、セルージャ…はんんっ…あかん…ウチ、ウチ、もぉ堪忍ききませんわ…ぁ…」
 声をうわずらせながら、巫女子は真っ白な尻を上下に振り始めた。すべすべした尻の谷間は、看護服から飛び出したセルージャの巨根を擦り立てる。とめどなく流れる愛液が潤滑油の働きをして、セルージャのペニスを素晴らしい快感が襲った。
「くうぅぅ…たまんねえ…。よ、よし、巫女子、やろうぜ…」
 石のベンチから立ち上がると、セルージャは近くの石灯篭に巫女子の手をつかせた。ちょうど朝日が昇る時刻なのか、迷宮の一画から美しい陽光が差し込み、突き出した巫女子の尻を白く輝かせている。
「…はよぅ…はよぅ交尾して下さい、セルージャはん……」
 袴から剥出しにされた尻をくねらせ、ネコの尾で局部を指し示しながら、巫女子が擦れた声を出した。さしものセルージャも誘惑に耐えかね、自慢の腰のバネを発揮しようと巫女子の尻を抱え……
「なあ、巫女子」
 ふと思いついた疑問が、セルージャの腰を止めた。
「は、はいぃ…?」
 挿入に期待していたらしく、巫女子は焦れに焦れた顔つきで振り返った。
「ここって…その、一応聖域なんだろ? 巫女子のクニの風習がどんなんだか知らねえけど、境内で思いっきりヤっちまっていいのかぁ?」
「そ、そら、いけないけど、いいんですわぁ! せやから、はよぅ下さいっ!」
「へ…?」
 興奮しすぎて言葉がついていかないのか、無茶苦茶なことを言う巫女子。
「せやからっ、ホントはいけないんですけど、ウチんとこの神さんはこういうのが好きなお人ばっかしやから、いいんです! お賽銭みたいなもんですわ! ああだからもうこれで分かりましたやろセルージャさん!!」
「お、おお。焦らしてすまなかったな、じゃあ思いっきり……」
 逞しいペニスを巫女子の幼い性器に押し当て、セルージャは今度こそ力強く腰を突き入れた。
「うにゃあああああっ!!!」
「ぐ…くうぅぅ……」
 ぷちぷちっ……
「……!?」
 窮屈な肉の感触を愉しもうとしたセルージャは、ペニスを通り過ぎていった違和感に目を見開いた。
「きゅふ…にゃあぁ…ぁ……」
 尻尾を自分の股に挟み、巫女子は必死に苦痛に耐えているように見える。この狭さ、この感触、この初々しさ…
 そして玉砂利に点々と滴る、鮮血四つ。
「巫女子、お前まさか……でもそんな……」
 しかし間違いない。セルージャは確かに、巫女子の処女膜を引き裂いていた。
「ぇ、ええん…です……」
 石灯篭に爪を食い込ませたまま、息も切れ切れに、巫女子は言った。
「いいって…だってお前、さ、さっきまでオレ、指入れてたのに……!? どうなって……!?」
「ウ、ウチ、ほら、巫女でっしゃろ。昔っから巫女ちゅうもんは処女って決まっとりましてな…ウチら猫巫女は、夜明け毎に生娘に戻ってまいますねん……」
「そ、そうなのか…でもよ、オレの物じゃ、いくらなんでも…」
 先程朝日を浴びていた巫女子の尻は、セルージャの腰よりずっと小ぶりだ。隆々としたセルージャの剛根が入っているのも、信じられないほどである。
「そ、それがエエんですわぁ……」
 巫女子は予想外にも、愛らしく淫蕩な笑みを浮かべた。
「セ、セルージャはんのごっつい魔羅で、ウチのオメコ、めちゃめちゃに酷く虐めはって下さい……ウチ変態やから、セルージャはんみたいなお人に非道いことされるの、大好きなんですぅぅ」
 涙目と、八の字の眉と、微笑み。被虐の喜びに震える巫女子は、告白しながら射精していた。石灯篭にべっとりと白い精液が張りつき、玉砂利に落ちた破瓜の血にも入り混じった。
「よし、よぉぉく分かったぜ……死ぬほど虐めてやるから、覚悟しな、巫女子……」
 珍しくサディスティックな衝動に駆られながら、セルージャは強く巫女子の尻をつかんだ。手加減はしていても、丸い尻の肉は指の間で潰れ、ピンク色に染まっていく。
「オラァっ!!」
 パンっ、と高い音が境内に響きわたった。
 パン、パン、パン、パン、それは立て続けに起こり、木々の間の静寂を侵していく。
「ぎにゃっ…ふにぃぃぃっ……アカン、セ、セル、セルージャはんっ、ウチ壊れてまううううぅぅっ!!」
 褐色の腰と白い尻が、激しく無残にぶつかり合っていた。セルージャの背の、腰の、腹の、腿の筋肉がうなり、凄まじい力が巫女子の細い体に叩き込まれている。
「守護者がこれくらいで壊れるわけねェだろ……もっと激しくいくぜ…!」
「か、堪忍、堪忍やああぁぁぁっ!!」
 巫女子の哀願も聞き入れず、セルージャはさらに腰を早めた。そして反り上がったペニスが小さな膣内を通り抜ける度、思わず舌を巻く。極上の名器、しかも初々しい処女のものとなれば、流石のセルージャも余裕というわけにはいかない。
「ちょっと早ぇが…一回目出すぜ……オラ、もっと締めなっ!!」
 セルージャは右手を前に回すと、巫女子のペニスを強く握った。
「ひぐっ……イヤやっ、それはっ、堪忍してぇぇ! ウチ、気ィ遣りすぎて、変になってま……ぐ!!」
 セルージャの指が力任せに扱き始めると、巫女子の息が詰まる。
 立て続けの射精。声も無く、ずり落ちたメガネをぽたぽたと涙で濡らしながら、巫女子は絶頂に駆け昇っていた。収縮する膣口の感触に、ついにセルージャも陥落する。
「く…ぅ……う、うあああああっ……出すぞ、巫女子っ! 出る、出るっ…くうううっ!!!」
 夜の間に溜め込まれていた、絶倫魔導看護婦の精液が、一気に噴出した。一瞬でそれは巫女子の胎内を満たし、入り切らずに溢れだす。二人の腿といい着衣といい構わず滴り、濃厚な精液は足元に水溜まりを作っても止まなかった。
「ふぅ……ぁぁ……」
 処女を蹂躙される悲劇の乙女を演じていた巫女子が、初めて満足気な声を上げた。


 日が高い。
 玉砂利の上に巫女子を押し倒し、正常位で犯し続けていたセルージャは、射精の余韻で喉を反らして初めてそれに気付いた。
 あの光が太陽を真似て動いているのだとすれば、もう二時間近く、巫女子を犯し続けていたことになる。都合三回、巫女子の性器を治療してやったのははっきり覚えているのだが…何度射精したのか、どこでどう体位を変えていったのか、さっぱり覚えていなかった。
「は…はれ…? セルージャはん…もう終わりでっか……?」
 セルージャの動きが止まったことに気付いたのか、虚ろだった巫女子の瞳にも光が戻っていた。
「あ、あれ? アカンわ、こ、腰が抜けてもうて…いたた」
 玉砂利の上で身悶えしながら、巫女子が微笑んだ。どうやら、自力では起き上がれないらしい。
 セルージャも思わず笑みを返すと、片手で軽々と巫女子を抱き起こした。
「ずいぶん夢中になっちまったみたいだな…すまねー、巫女子……」
「ええんですよぉ……ウチもごっつう気持ち良かったさかいに。ホンマ、セルージャはんSMの素質あるんとちゃいますかぁ?」
 白衣の胸に頬を押しつけ、ごろごろと喉を鳴らす巫女子。それが可愛らしくて、セルージャは繋がったままであることも忘れて巫女子を抱き締める。
「はい、じゃあ、いただきます」
「……?」
 突然に顔を起こした巫女子の言葉がよく分からず、セルージャは戸惑った。
「はい」
 差し出されているのは、肉球つきの猫の掌。巫女子の手だ。
「はいって、何が?」
「ゼニに決まっとりますやろ、セルージャはんー。まっさか、巫女にここまで『さーびす』させといて、お賽銭も出さずに帰りはるおつもりだったんでっか!?」
「ん何ー!?」
 セルージャは思わず立ち上がり、粘液の糸を何本も引きながら、巫女子が腰からずり落ちた。
「あ、きったねー! 汚ねえぞ、巫女子! 金…金とか、普通この迷宮で言うかよ!?」
「他のお人のことなんか知らしまへん。そらあ他の階層では、そういうこともあるかもしれまへんが、交易社務所では何事にもしっかりお代をいただくことになっとります」
 口をとんがらせて、ますます掌を大きく突き出す巫女子に、セルージャの顔はたちまち怒りで染まった。
「知るかンなもん! 金なんか持ってねえ! リッチのじじいどもならたくさん埋まってっけどな!」
 逞しい腕を組み、そっぽを向く。
 −−ちっくしょー、一瞬でも可愛いと思ったオレが馬鹿だったぜ。
 −−レイシャ……レイシャはこんなコト言わねえのになあ。何やったって、ぽけーっとされるがままなだけで……レイシャ……
「ほー、開直りでっか。そいたら仕方ありまへんな……体で払ってもらいましょか!」
 言いざま、巫女子はセルージャの胸に飛び込んだ。
「…え!?」
 思考が飛んでいたセルージャは、すぐには事態を理解できない。
「んんー、嬢ちゃん、ええ体してまんなー♪」
「???」
 セルージャが対応に困って頭を掻いていると、巫女子はぷうと頬を膨らませた。
「ああもうっ、鈍いんやから、セルージャはんはっ! もう一回逢瀬しとうても、直接言うのなんて恥ずかしおますやろ……せやから、金の代わりにあんたの体を〜、なんて洒落とりますのに…いけずぅ」
「あ! …う、あー……そ、そうか。すまねえ」
 白衣の胸を指でグリグリと突かれて、セルージャはようやく我に返った。
「今度は、縄とか蝋燭とかつこて、ホンマもんの責めにも挑戦してみまひょ、な! 楽しみやわ〜♪」
 無邪気に笑う巫女子の顔を見ているうちに、セルージャは真っ赤になってしまった。
 −−やべ、なんだか胸がドキドキしてるぜ……
「っとぉ、巫女子、じゃ、じゃああれだ。オレもそろそろ守護の任務に戻らなきゃなんねえし、か、帰るぜ!」
 セルージャは慌てて巫女子から身を引き剥がすと、着衣もろくすっぽ直さずに、魔導エレベーター目指して踵を返した。
「はいな、じゃあまた」
 こちらも脱げまくった巫女装束をそのままに、巫女子が手を振る。
 玉砂利を蹴散らさない程度に力を込めながら、セルージャは颯爽と駆け出した。
 −−なんだか、悪いことしたような気分になっちまったな……
 雑念を振り払うように頭を振ったセルージャの背後から、最後にもう一声、巫女子の声が上がった。
「そうそう! セルージャはーん! もっとフタナリ心を勉強せんと、レイシャはんと何時になっても結ばれまへんでー!」
 ゴン!
 こけたセルージャの周りで爆風が巻き起こり、石鳥居が一つ、轟音と共に沈んでいった。

(続く)