■メリンの家出 (作・水池竜樹)

竜樹さんよりいただいた小説を掲載させていただきます。



 「めらんはあ、来てないよねぇ……?」

 メリンは辺りをきょろきょろ見回して、双子の妹がついてきてないか確認する。

 「ふぅんだぁ。めらんのいぢわるなんてもう知らないもんねぇぇだ。」

  間延びした口調で怒りを口にしてみるが、ちっとも怒ったように見えない。

 メリンは双子の妹、メランと喧嘩をしてインフィニア次元樹を飛び出してしまったのだ。次元を飛び越えて飛び越えて……気がついたらまったく知らない場所だった。そもそもメリンは次幻樹を滅多に離れない。

 「でも、ここってどこだー?見た事あるような気はするぉー。」

 怒っていた事もすぐに忘れてしまうのか、今度は好奇心できょときょとと辺りを見回す。

 「ここはぁ……どこだっけぇ。次幻樹の幻影で見た事あるぉ〜……。」

 頭をひねりながら、考えているとふと声が聞こえた。

「あれぇ?あなた何してるの、次の授業始まっちゃうよぉ?」

 大きな門の向こうから、メリンと同じ服の女の子が歩み寄ってくる。

 金髪のショートカットで眼鏡をかけた女の子だ。

 「ほぇ?きみはだぁれ?『じゅぎょう』ってなぁに???」

 「………変な子…。何組の生徒なの?」

 「変じゃないもん〜〜。で、『なんくみのせーと』って?」

 「うちの生徒だよねぇ…?体操服着てるし、ついてるし…。」

 ちらっとメリンの股間に眼をやって、女の子は小さく呟いた。

 「『たいそーふく』?あ!それは知ってるぉ〜。」

 今メリンが着ているのは、淫魔であるメ一族の正装だ。やっと思い当たる単語に行き当たったメリンは薄い胸を得意げに反らしてみせた。

 「でも、見掛けない子だね。ボクと同じ中等部なのかな、それとも転校生?」

 「え?ふぇ…『ちゅとぶ』?『てこーせ』?ふにゃ?」

 「・・・・・・・・・ぷっ…あははははは!」

 まったくわからない言葉の羅列にメリンが眼を白黒させているのを見て、女の子は思わず笑い出した。

 「あははははぁ〜♪」

 意味もわからずつられて笑うメリンを見て、またひとしきり笑うと女の子はふと気がついたように話し出す。

 「そうだ!もしかしたら交換留学生かなにかでしょ?変な耳ついてるし、背中になんか羽みたいな飾りつけてるし、日本語もぜんぜんわかんないし!」

 「『りうがくせ?』」

 どうして耳や羽がついていると留学生なのか、良く分からないが彼女なりの理論があるようで、得意げに言うと女の子はメリンの手をとって歩き出した。

 「気にしなくていいよね、うちってそんな子も結構いるし♪」

 「???」

 きょとんとしたまま、ずるずると引っ張られているメリンに女の子はにっこり笑った。


 「メリンちゃん……だっけ?音神学院へようこそ♪」




 「えぇっ?自習なの?」

 メリンを連れて女の子は自分の教室に入ったが、先生はおらず自習になっていた。

 「交換留学生が来てるってゆーのに。不真面目だなぁ。」

 女の子の中では、もうメリンは交換留学生に決定してしまったのか、自習にした教師を不真面目と断ずると、教室を見回した。

 「あれぇ?メリンちゃんの机がないなぁ。用意されてないのかな?」

 教室を見回して、メリンの机を探すがもちろん用意してあるはずもない。もし、本当にメリンが交換留学生だったとしても、そもそも自分と同じクラスかどうかも分からないのに、女の子は気がつかなかったのかまったく頓着していなかった。

 「ねぇ、サレナ〜。そのかわいー子どこでつかまえてきたのよぉ?」

 女の子……サレナ=真条は自信満々で尋ねたクラスメートに応える。

 「校門であったんだよ。交換留学生のメリンちゃんっていうんだって。」

 きっぱり断言されてしまえば、クラスメートも多少メリンの格好がおかしかろうが疑う余地もない。

 「きゃぁ、可愛いっ♪」

 「お肌もすべすべしてるし、耳もふわふわ〜。」

 「あ、ずるぅい!私もさわるぅ。」

 「ちっちゃくてぬいぐるみみたいだねぇ」

 「ねぇねぇ?この羽って何?コスプレ?」

 あっという間に意味も分からずぼーっと突っ立っていたメリンはもみくちゃにされてしまう。

 「はわぁ…はわはわ。」

 人波に溺れてあっぷあっぷしているメリンをサレナはしばし見守っていたが、一段落したところで助けあげる。

 「メリンちゃん。机が無いみたいだし、自習のうちに上の階の空き教室に取りにいこっか。ボクが一緒に行ってあげるから。」

 「あぁ〜、サレナずるいぞぉ。」

 たちまち数人からブーイングが怒るが、サレナは明るく笑って矛先を躱す。

 「だって、メリンちゃんはボクが最初に友達になったんだもんねぇ〜。外人同士仲良くしよーね?」

 「よーね♪」

 次幻樹から離れた経験の少ないメリンは、友達という言葉にうれしくなってこっくり頷いた。その頃には、新しく目に触れるものばかりでメランの事はすっかり頭の中から消え去っていた。




 「レイシャ!メリン知らない!?」

 物凄い剣幕で至聖後宮回廊に飛び込んできたメランは魔メイド・レイシャに開口一番で尋ねる。

 「はい、メリンさんなら存じ上げておりますが。」

 モップがけの手を休めて、レイシャは無表情でメランの問いに答える。

 「ほんと!?どこどこっ!?どこ行ったのっ!?どこ探しても居ないのよ!」

 勢い込んで尋ねるメランに、レイシャは無表情で先ほどとまったく逆の答えを返した。

 「それは存じ上げません。」

 「…………………なによそれっ!!」

 思わず、数秒間硬直してしまったメランだが、めげずにレイシャに尋ねる。

 「先程の文脈ではメランさんの発言は、『私がメリンさんを認識できるかどうか』という問いに感じられましたので、存じ上げておりますとお答えいたしましたが。『メリンさんがどこへお出かけになられたか』という意図でなされた発言ならば………。」

 「あぁぁぁぁああ!!いい、いい、もういい!!」

 メランは無表情のまま延々と説明を始めるレイシャを苛だたしげに制する。レイシャが説明しだしたらキリが無いのは良く分かっているからだ。

 「そうですか。」

 「じゃぁ、レイシャはメリンの居場所は知らないのね?」

 「はい、存じ上げません。」

 「じゃ、いいわ。ありがと。」

 話をするのももどかしそうに、鷹揚に手をあげるとそのまま去ろうとするメランを、レイシャは静かに呼び止めた。

 「あの。メランさん。」

 「何よ?」

 「メリンさんの現在地は存じ上げませんが。メリンさんは先ほど回廊をお出になられたので、迷宮内ではなく別次元にいらっしゃられるかと思います。」
 「何でそれを早く言わないのよーっ!!!ったくぅ、次幻樹から離れた事なんてほとんど無いくせにっ!!」

 絶叫しながらそのまま走り出すメランに、レイシャは丁寧に挨拶をした。

 「申し訳ございませんでした。それではいってらっしゃいませ。」

 そして、そのまま掃除に戻る………これがメイドの仕事なのだ。





 「ねーねーされなー。」

 サレナの後をひょこひょことついていきながら、メリンが覚えたてのサレナの名前を呼ぶ。

 「ん?何、メリンちゃん?」

 「『つくえ』ってなんだー?」

 「…………君、どこの未開地のひと?」

 流石にじとっと冷や汗が垂れるサレナだったが、あえてそれを無視して空き教室に入る。

 「てーぶるがいっぱいなのだー。」

 (……テーブルならわかったのか……。)

 サレナは少々頭痛を覚え始めていたが、気を取り直して、机と椅子を一組持ち上げる。

 「じゃ、これ持っていこっか。」

 「ねーねーされなー。これどーするのー?」

 「……君が使うんだよ。」

 ひきつりながらもまだ何とか笑みを浮かべてメリンに応えられる自分を誉めたくなったサレナだったが…。

 「ねーねーされなー。」

 「………………今度は………なに?」

 恐る恐る尋ねるサレナに、メリンは元気に答えた。


 「エッチしたい!」
 ごんっ!!


 「あたたたたっ!!」

 突拍子もない発言に思わず机を足の上に落としてしまったサレナは痛みに飛び上がった。

 「されなだいじょーぶか?」

 「あ、うん、だいじょーぶ……。って、きゅ、急になんてこというのっ!」

 「だってしたいもんー。」

 「だって、こんなとこじゃぁ…。それに自習って言ってもほんとは授業中だし。」

 …論点がずれている事にサレナ自身は気がついていない。

 「したいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたい〜。」

 メリンが駄々っ子のように両手両足を振り回して駄々をこねると、『たいそーふく』がずりあがってすべすべした腹部と、ブルマの先からはみでたペニスの先が覗く。。

 「う…ごくんっ。」(参ったなぁ。ボクもともとこーゆーシチュエーションって…好きなんだよぉ〜……。」

 サレナは、体操服で誰も居ない空き教室で…というシチュエーションに思わず生唾を飲む。そもそもサレナはコスプレ部の部長(自称)をしているぐらいで、こういうシチュエーションプレイには眼が無いのだ。

 「……んっと…そんなにしたいの、メリンちゃん?」

 「したいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたい〜。」

 「……じゃ、じゃぁ……しよっか?」

 「したいしたいしたいしたい………ほぇ?うん☆しよっかー☆」

 サレナは、急に飛びついてきたメリンに押し倒されるように、教室の床に転がった。





 ばたんっ!!

 メランは、目の前の簡素だが丁寧な造りの扉を乱暴に開け放った。

 「メリンっ!!ここにいるのっ!?」

 しかし、部屋の中は薄暗く静まりかえって、何の反応も示さない。

 「メリン!?居ないのっ!?」

 「あの・・・・・・何か御用ですか?ここでは静かにして頂かないと困りますが。」

 どこからともなく、柔らかな声がメランにかけられる。

 「あなたは?」

 「私は、この図書館の管理を任されております。ミュウと申します。」

 「えっと・・・・・・図書館?」

 ミュウと名乗った長い髪の女性は、柔らかな物腰で微笑した。数冊の古い本を抱えていて、薄暗い室内も目が慣れてくると本棚で埋まっているのが良く分かる。

 「あ・・・・・・そうだ・・・メイがさぼってるから、華劇紅房宮の知識を代わりにまとめてくれている人がいるとか何とか…。」

 「たぶん、私のことですね。それはともかく、どんな御用件ですか?調べ物では無さそうですけれど。」

 「…あぁ、そうそう。あたし、姉さんを探してるの。あたしと同じ服着たとろい感じの女の子だよ。」

 言われたミュウはカウンターから一つの本を取り出しページをめくる。どうも来館者の名簿のようだ。

 「……メリンさん…インフィニア次幻樹の守護者の方ですね。いらっしゃっていないようですよ?」

 「そう。ごめんねっ!お邪魔しましたっ!」

 言うが早いかメランは踵を返して扉から駆け出していく。

 「静かにと言ったのに……。」

 ミュウは名簿を閉じると、苦笑しながら開けっ放しの扉を閉じた。





 「んっ・・・何・・・・・・これぇ。」

 サレナの見事な胸に、メリンがしがみついて、顔を擦り付けるたびに、電撃のような快感が広がっていく。性格に問題ありでもやっぱりメリンは立派な淫魔なのである。ごく普通の人間のサレナが対抗できようもない。

 「されなの胸ー。ふわふわだぉ。」

 絶妙な感覚で、サレナの乳房をやわやわと揉みしだき、徐々に張り詰めてきた乳首を柔らかな頬でなぎ倒す。

 「んあっ?め、メリンちゃん、何でこんなに・・・んぷっ。」

 声をあげようとしたところを唇でふさがれる、ぬめぬめした舌がサレナの唇を割り、押し入ってくる。

 「んっ・・・・・・んぐ。」

 メリンの舌が自分の舌に絡み付き、口の中の粘膜をくまなく舐めあげ、唾液を啜り上げると、サレナは為す術も無く身体から力が抜け、教室の床に倒れ込んでしまう。

 「にゅふ♪」

 メリンが体操服を脱ぎ捨て、全裸になった。。

 「……わぁ…。」

 サレナの身体も見事だが、メリンの身体の幼さは、また別なベクトルの淫らさを発散している。

 ぎゅっ!

 「ひゃ…っ。」

 メリンが裸の身体を、サレナのブルマを痛いほど押し上げているペニスに押し付けると、それだけでサレナは身震いしてしまった。

 「も……おかしくなっちゃいそぉ…だよぉ。」

 たまらずに、サレナはブルマをずりおろし、直に亀頭をメリンの乳房に押し付け腰を動かし始めた。

 しゅちっ、しゅちち、きゅしゅちゅっ。

 衣擦れの音と、肌と肌が擦れ合う音がいやらしく響く。それはサレナの興奮とともに亀頭から溢れる先走りで次第に濡れた音になっていった。

 「えへへ☆たくさん気持ち良くしてあげるぉー。」

 メリンはサレナの腰を抱きしめるようにして、上半身を上下させ始める。

 「きゃっ!ひゃうっ!きもちいいっ!ちんちんどーにかなっちゃうよっ!」

 にゅるるっ、にゅむにゅむっ。

 痙攣するように腰を時折突き出しながら悶えるサレナを、身体全体で押さえ込みながら、メリンは亀頭を舐めまわす。
 

 「はっ!?きゃはぁぁぁあああっ!!!」
 びゅるっ!!びゅるびゅるるっ!!


 堪えきれずに思いきり精液を吹き出すサレナ。

 そのサレナの精液を顔に受け止めて無邪気に微笑むメリンは、その時だけは誰が見ても正真正銘の『淫魔』だった。





 「ここはっ!?」

 メランは巨大な城門の前に居た。迷宮の最上層キャッスル・ヴィセルガイストにも城門があるが、それとはまた趣の異なる壮麗な門だった。

 「・・・・・・何だ、お主?何処の妖魔だ?」

 「何よ!迷宮の守護者に向かって!…ってそれどころじゃない。ねぇねぇ、ここにあたしみたいな子って来なかった?」

 門番だろう、鱗だらけのリザードマンのような人型のモンスターがメランに誰何の声をあげる。

 「知らんなぁ・・・まぁ、最近は貴様のような異界の妖魔も来るには来るが・・・。」

 「隠してないわねっ?隠してると為になんないよっ!!」

 メリンが見つからなくて苛立っているメランは、自分の倍もありそうな門番に威勢良く言い放つ。

 「・・・・・・・・・なんだとぉ?お主、此処がりゅ・・・。」

 「何やってんの?うるさいなぁ。」「何やってるんです、入り口で・・・?」

 メランの態度に声を荒げようとした門番が一瞬で直立の体勢に戻る。もう一人の門番が慌てて門を開いた。

 「他のとことも回廊を繋げるようになったんだから、キミ達も居丈高になってちゃ良くないよぉ?もっとこう、フレンドリーにさ。」

 扉から出てきた黄色い龍袍…皇帝の衣装を着た美女がくすくす笑いながら、直立不動で固まった門番をつつく。笑うたびに、頭の両脇で結わえた金髪が涼やかに揺れた。

 「おや……あなたどこかで…メランさん…でしたっけ?」

 もう一人、こちらは同じ金髪だが長く癖の無い長髪を、靡かせるように下ろした美女がメランに視線を留める。

 「あっ…あなた…えっと…。」

 メリンも確かに会ったような気がするが、思い出せない。

 「華劇で一度お会いしましたよね?あの時は黒髪だったから解らないのも無理はないかもしれませんが・・・・・・。」

 「あぁ!思い出した!竜の人だ!!」

 「はい、ここは竜宮ですから。私が居てもおかしくないでしょう?」

 長髪の美女・・・・・・タツキが柔らかに微笑する。

 「竜宮…イェンとかが喜ぶかも……あ、それどころじゃないや。ねぇねぇ、タツキ……だったよね?あたしの姉さんを探してるんだけど知らない?」

 「姉さん・・・・・・。コウ、まさか連れ込んだりしてないですよね?」

 メランに問われて、タツキがコウと呼ばれた女性……こちらはメランは面識が無かったが。……の方を振り向く。

 「知らないかって、私だって誰彼構わず連れ込んでるわけじゃないよぉ?」

 タツキとメランに向かって、コウは面白そうに笑う。

 「そうですか。コウじゃないって事はここには居ませんね。」

 「何さ、それ。まぁ…当たってないことも無いけど。」

 とりあえずここにメリンが居ないと分かって、メランは他へ良くことにした。

 「うん、居なくなったから探してたんだけど。じゃ、他を当たってみる、ありがと。」

 「ちょっと待ちなよ?」

 そのまま踵を返して飛び去ろうとするメランの肩をコウが掴んだ。

 「?」

 「居場所の見当つかないんでしょ?私がちょっと調べてあげるよ。」

 微笑してコウが、すっと袖から手を出して振ると薄い水の膜のようなものが空中に現れ、そこに徐々に映像が映し出されていく。

 「・・・・・・・・・これは・・・・・・人界かな?・・・・・・・・・学校・・・・・・みたいだね・・・・・・おと・・・・・・音神?」

 「!」

 音神と言えば、次幻樹の幻影に時々現れる土地だ。次元樹の幻影を見てふらっとそこに行ったに違いない。

 「あ、ありがと。コウ・・・だっけ?」

 「なぁに、何だか随分心配してたみたいだったからさ?」

 悪戯っぽく笑うコウの指摘に、メランは思わず赤くなって背を向けた。

 「べ、べべ、別にそんな事ないよっ。ありがとっ、じゃぁあたし行くねっ!」

 慌ててその場を飛び去るメランをしばし見送ると、二人の竜は再び竜宮の中に姿を消した。





 「あーーーーーーーっ!!やっと見つけた!!」

 「ふにゅ?・・・・・・・・・あー。めらんだー!!」

 「・・・!?飛んでる!?」

 叫び声に外を見たサレナが目にしたのは、窓の外にぱたぱたと浮かんでいるメリンと良く似た顔立ちの女の子だった。ただ、向こうの子の方がちょっとキツめな印象を受ける。

 「ったく!!勝手に飛び出して、どんだけ心配したと思ってんのよっ!!」

 鍵の掛かっていない窓ガラスから校内に侵入したメランはサレナに構わず、メリンに詰め寄り睨みつける。

 「めらんも一緒にえっちしよーよぉ。」


 ごつんっ!!


 「このお馬鹿っ!!帰るわよっ!」

 「ひーん、痛いのだー・・・。」

 思い切り脳天に拳骨を落とされ涙を浮かべるメリンをメランはずるずると引っ張っていく。

 (あは・・・あはは・・・あんな小っちゃな羽根で飛んでるなんて・・・もしかして・・・ボク夢でも見てる?)

 裸のままへたりこんで(搾り尽くされて腰が立たないというのも多少あるのだが)虚ろな笑みを漏らすサレナに、メリンはメランに引きずられながら手を振る。

 「ばいばぁい。またエッチしよー。」

 「あ・・・・・・・・・うん、バイバイ・・・・・・。」

 思考が真っ白なままサレナが手を振ると、メランはまだ手を振っているメリンを窓から外に放り出し、そして自分も窓から飛び降り・・・・・・・・・・・・そして姿を消した。

 「は・・・・・・ははっ、行っちゃった・・・・・・・・なぁんだぁ、交換留学生じゃなかったのかぁ・・・ちょっと残念だったなぁ、コスプレ部に誘おうかと思ったのに・・・・・・。」

 メリンの正体はとりあえず考えない事にして、サレナは身を起こした。とりあえず服を着ないと、もう随分時間も経っている。

 「あーっ!!サレナ!!こんなとこで裸で何してんのよ!!」

 帰って来ないので見に来たクラスメートが、服を着ようとしていたサレナを発見する。

 「っっっ!?あ、あのこれは、いえ、えと、いや、あの・・・?ひぇーんっ!」

 『抜け駆けしたなぁぁ、サレナぁぁ』

 にじり寄ってくるクラスメートに、サレナは情けない泣き笑いで応えた。





 「あのね、あのね、『がっこ』ってものすごくたのしかったぉ。」

 「はいはい・・・まったく、こっちがどれだけ苦労して探したと思ってんのよ。喧嘩して出てったこともすっかり忘れてるし。」

 「ごめん。じゃー今度はいっしょにえっちしにいくのら。」

 「・・・・・・・・・まったく、姉さんにはかなわないわよっ!」

 ヤケクソ気味に叫ぶメランにメリンは無邪気に笑ってみせた。