メリン&メランの章3
  (夜魔)   
          
 アタシ達の大切な次幻樹があのパルボとか言う猿面の変な機械に襲われてから、どれぐらいが経っているのだろう? 一瞬のようにも、ひどく長い時間が過ぎているようにも感じる。
 くやしいけど、アタシやメリンの力じゃ、あいつを倒すどころか、止めることすら出来なかった。Rebis様が来てくれなかったら、次幻樹は跡形もなく消し去られていただろう。
 そう……あいつは、破壊者じゃない。破壊よりも更に質の悪い。
 パルボIQ。全てを消し去る最悪の存在……。

 ダンジョンマスターRebisの背後に隠れながら、アタシとメリンは敬愛するRebis様と唾棄すべき猿の顔を変わる変わる見つめた。
 Rebis様の技を受けても倒れないどころか、また立ち上がろうとしてるパルボ。
「Rebis様……あいつは……」
 無意識にRebis様の裾を掴みながら、アタシはじっとその顔を見つめた。
「来るぞ……私の後ろに隠れろ」
 メリンの首根っこを掴んでRebis様の後ろに隠れるのと、パルボが攻撃を再開するのが同時だった。

「埒があかんな……。 ……何故あいつは後宮回廊に居るのだ?」
 Rebis様は、何か呟きながら次々とパルボの攻撃を跳ね返していた。
 それでも、懲りることなく攻撃を続けるパルボ。やっぱり猿なのかな、なんて馬鹿な考えを、頭を振って追い出す。
「めらんちゃん、楽しいの?」
 グルグルと頭を回しながら、メリンが尋ねてくる。取り敢えずその頭を押さえつけながら、アタシはRebis様に何か手伝うことはないか尋ねた。
 ここの守護者はアタシ達なのに、何もできない自分が歯がゆい。少しでもあいつを倒す手伝いをしたかった……のに……。

「漸く到着したか。……メラン。お前は、早く次幻樹の淫魔達を避難させるのだ。この場は、あいつに任せてな」
「えっ?」
 Rebis様の視線を追うと、その先には盛大な土煙を上げながら疾走してくる屈強な白衣姿があった。白衣の主、セルージャは、驚いたことに巨大なパルボの本体に突っ込むと、そのまま跳び蹴りを見舞った。
「……馬鹿?」
「かば?」
 なんだか、自分の仕事場を他人に荒らされているような、そんな嫌な気分が心に浮かぶ。おかしいな、なんか、今日のアタシは変だ。
 そんなあたしの気持ちが顔に出てしまったのか、Rebis様がアタシの肩に手を置いて続けた。
「戦いがお前の仕事ではないだろう? あの淫魔達を救えるのは、お前達だけだ」
「Rebis様…」
「私はラネーシア神殿に向かう。彼の地の二人は、お前達ほど息があっておらんからな」
 Rebis様は、そう言って優しくアタシとメリンの頭を撫でると、スッとその姿を消した。
「……メリン……アタシ達は、アタシ達の仕事をするよ!」
「するよ♪」
 背中の翼を一打ちすると、アタシ達は、一直線に次元樹へ向かった。

(メリン&メランの章・4へ続く)