「まぐわうぞ。尻をこちらに向けろ」
 部屋に入るなり、ヴィランデルは低い声で言い放った。

 パスナパの子宮に精を絞り出し、恍惚としていたジェナは、一瞬呆然とする。だがすぐさま、部屋の主が帰ってきたことを理解すると、パスナパから腰を引いて振り返った。
 廊下の薄闇から部屋の灯りに照らされ、美しく輝くヴィランデルの毛並み。
 その肉体の力強さ、気高さはいつもと変わらない。
 だが…何かが違う。何だ…?
 戦士特有の勘がうめいた。巨大な魔獣と対峙しているかのような…
 そう、これは聖戦の時、ヴィランデルと向き合った際の感覚。ヴィランデルの妊娠以来絶えて感じることの無かった……獣王の威圧感だ。

「どうした…ヴィラ…」
 何かに気圧されて、柄にもなく言葉を発したジェナは、息を詰まらせた。
 獣欲に満ちた、緑宝石色の眼光。闇の中でも濡れ光るのが分かる雌の性器。
 いや…そんなことよりも……
 視線がヴィランデルの一点に釘付けになる。
「ねえ…さま……!?」
 ジェナの背後で、パスナパは驚きの声を漏らした。

「…何を驚いている?」
 ヴィランデルは部屋の中に悠々と踏み込むと、その美貌に威厳に満ちた笑みを浮かべた。
 鉤爪が大きく張った白い乳房をなぞり…獣王の巨大なペニスをさする。

 天を貫き通す程に反り返った、二本のペニスを。



「ヴェナも良く寝ている…母は、ここまでだ。お前達にはたっぷりと精を注いでやろう…この、新たなる恩寵でな」
 赤紫に膨れ上がった双頭のペニスからは、その威力を抑えきれないかのように、ボタボタと大量の先走りが溢れ出ている。ヴィランデル自身の手でくつろげられた膣口からは、濃厚な白濁した愛液が滴り落ちていた。
「す…すご…素敵…素敵です…姉様ぁ……」
 掠れた声で、パスナパがつぶやいた。その目はヴィランデルの剛根を見つめ、感動と欲情によるものか、ほとんど涙目になっていた。
 目が離せないのは、ジェナも同じだ。
 自分の頬が、恥じらう処女のように紅潮しているのが分かる。ヴィランデルの性臭…両性具有のケダモノ独特の匂いを感じる度に、胸が強く動悸する。
 いつの間にか乾ききった喉を、かろうじで唾液が通った。
「…っ!」
 同時に……堰を切ったように、ジェナの股間から欲情の蜜が迸り始めた。
 とめどなく…ヴィランデルを求めて。


***


 ヴィランデルが語った所によれば、つまりは、こうだ。

 偉大なる神・シオン=ヴァイアランスの礼拝堂に赴いたヴィランデル。
 そこに待っていたのは、二人のケイオスヒーロー、ルキナとザラだった。
 二人はヴィランデルと共にひざまづくと、神像に感謝の精液を捧げ、祈った。ヴェナルティアの無事な出産への謝辞…そしてさらなる豊穣の祈願を。
 その時、ヴィランデルの体に、新たな神の恩寵−混沌の変異−が現れたのだ。
 新たな、二本目のペニス。それはまるで、二人の思い人と同時に交われと、神が下したかのように、みなぎる精力と共に起きあがった。

 母となった獣王に、今宵さらなるヴァイアランスの力が下されたのだ。


***


「っ…はあ…はぁ…はぁ……」
 息が荒い。ハードなトレーニングでも、格闘でも、滅多に切れることのないジェナの息が、切れ切れに吐き出されている。
 ここは、部屋の奥まった部分にある浴場。姉妹が激しく交尾する際に使う、入浴というより洗浄のための部屋である。
 ジェナはその広い浴場の、一辺の壁に手を突き、逞しい尻をヴィランデルに突き出していた。

 ヴィランデルの話を聞いた二人は、導かれるままにこの浴場へとやって来た。
 そして今、ジェナとパスナパは二人並んで、尻を高く突き出した痴態を獣王に見せている。
 ヴィランデルの新たな姿を見たためか…久しく無かった獣王としてのヴィランデルに抱かれるためか…あるいはその威力を増したケモノの発情フェロモンのためか……二人は興奮しきって、完全にヴィランデルのペースに呑まれていた。

 尻の谷間が露わになり、空気が秘所に触れる感触すら、狂おしいほどに感じてしまう。
 俺が…こんなに…発情するなんて……
 霞がかかった意識の中で、ジェナは自嘲した。
 ただ交尾を待つだけの、屈辱的な「メス」の姿勢だ。今ヴィランデルに尻を向けているのは、両性具有の戦士・ジェナではなく、ただ精液を注がれるためにある、子宮と、尻と、それを支える肉だけだ。
 だが…そんな被虐的な考えすら、ジェナの本能を燃やしていく。とろかしていく。
 滴る愛液で、すでに逞しい内腿は濡れきって、タイルには大量の愛液溜まりができていた。

「き…来てくれ…ヴィル…お前の…精液…子種を…」
 あまりの情欲に、珍しく自分から出す言葉すら、ままならない。
 二人の尻を品定めするように眺めていたヴィランデルは、ジェナの言葉に応えるかのように近付くと、その尻を撫でた。
「そうだな…パスナパの膣には、お前の子種が注がれたばかりだ。先にお前を犯して…後は、順番だ」
 そう言うと、ヴィランデルは巨大な掌をジェナの尻に置き、剛根の一本…下方のペニスを、膣口にあてがった。
「ぃぐっ……!」
 それだけで、腰が爆発する。先に犯されるのだという期待で、性器が潮を吹いた。透明な、ねばっこい液体が、ヴィランデルのペニスと膣の間からしぶいて、二人の体とタイルに降り注ぐ。
「行くぞ」
 短く言うと、ヴィランデルは逞しい腰をジェナの尻に叩きつけた。
「おおおおおおおおおっ!!!」
 咆哮じみた叫びが、ジェナの口から迸った。
 淫らに開いたジェナの花びらを一気に貫き、獣王の剛根が最奥に届く。子宮が突かれる感覚と共に、快感とわずかな苦痛がジェナを悶えさせる。さらにペニスは侵入を続け、ジェナの尻とヴィランデルの腰が密着して、ようやく止まった。
「かっ…はう…ぁぁ…」
 声にならない悲鳴が漏れる。
 ずるり、と凄まじい触感を膣壁に与えながら、ヴィランデルのペニスが動き始めた。
「おおっ! おぅっ…ぁ…おおっ…おおおおっ!!」
 聖戦での戦いを思い出させる力強さで、ヴィランデルの腰が叩きつけられる。
 性交などではない。ただ、ジェナという極上の肉を使ってペニスをしごき立てているような、一方的な動きだ。
 けれどそれすら、ザラとの交合に匹敵するほど、感じてしまう。ヴィランデルに征服され、ただの子袋として扱われることが、ジェナのわずかな被虐心を燃え立たせようとしていた。
「きふっ…あ…ヴィル…ぁあ…イっ…」
 堪らず、絶頂に達した。
 尻を突き出すというより、ほとんど壁に押しつけられたような恰好で、ジェナの体が震える。逞しい下半身の筋肉が痙攣し、射精した精液は浴場の壁を白く染めた。
「っああ…!?」
 軽やかな水音と共に、黄金の液体がジェナの股間から走った。
 失禁してしまったのだ。
 そんな経験がほとんどないジェナは、たちまち美貌を真っ赤に染めた。そしてその恥辱が、さらに次の絶頂を呼び込む。
 ジェナの隙を見逃さぬかのように、ヴィランデルの腰が勢いを増した。射精寸前で膨れ上がった剛棒が、形良い尻を激しく出入りする。さらに、挿入されていないペニスの裏筋が、尻の谷間とアヌスを擦り立てる。
「…出すぞ…!!」
 獣が呻いた。
「っ…あ…ヴィル…ヴィルっ…」
 ジェナの中で光が膨れ上がる。愛する獣に犯される悦びが、体を満たす。
 ここで…もっと…みじめな姿をさらせば…
 ジェナの被虐心が、さらなる快感を求めて、ジェナを叫ばせた。
「ヴィル様ぁっ!! 俺を…オレを孕ませて下さいっ!! オレに…ヴィル様の…御子っ……」
 ザラ以外に初めて使った「様」の言葉は、予想外にジェナのマゾヒズムを煽り立てた。
 涙が溢れ、表情が淫らに崩れているのが分かる。ますます、腰が熱く震える。
 そして、ジェナの中で獣の性液が炸裂した。
「うあああああああああっ!!!」
 炎の剣で子宮を貫かれたかのように錯覚して、ジェナは絶叫した。
 腰から何もかもが走り出て、視界は涙でぼやけ……暗転した。


***


 激しい快楽で、意識が揺り戻された。
 自分の股間から大量の白濁液をまき散らしながら、獣王のペニスが出入りしている。
「うっ…く…」
 快楽と苦悶が喉に詰まり、また自分が絶頂に駆け上っていることが分かった。
 すでに子宮は精液を詰め込まれて重く張り、足下は見渡す限り白い粘液の海になっていた。失神している間に、何回犯されたのだろうか。
 わずかに左を見れば、同じように虚ろな瞳をしたパスナパが、尻から濃厚すぎる精液を溢れさせて、タイルにへたりこんでいた。
「く…」
「うぁあっ!?」
 予想していないタイミングで射精が始まり、ジェナは思わず跳ねた。
 一度目から少しも熱さを失わない大量の精液が、ジェナの中に撃ち込まれる。当然、もう入る所などない。腹の中がうずき、溢れ返った精液が結合部分から漏れては、太ももからタイルへと滴った。
「っはあ…はぁ…はぁ…あ…ヴィル…様…」
 勝手に射精され、イキそびれてしまったことすら、今のジェナには心地よい。
 ヴィランデルを初めて見たとき覚え、ずっと眠っていた『女としての欲望』が、今夜は戦士の中で燃え盛っていた。
 ヴィランデルの雄となら、雌として交わってもいい。交わりたい…交わり、犯され、組み敷かれてみたい……
「ヴィル…様…もっと犯して…オレ…ヴィル様の匂いの雌にして………」
 懇願するジェナの頬を、ヴィランデルが撫でる。
「パスナパはしばらく休ませた方が良さそうだ。私を満足させてみろ…その素晴らしい尻で…」
 獣王はそう言うと、腰を大きく引いた。
 今まで挿入されていなかった二本目のペニスが、ジェナの小さな尻穴に押し当てられる。
「っ!!?」
 その意味を理解したジェナは、目を見開き……諦めたように、尻の角度をヴィランデルに合わせた。
「はぁ…あ…入って…く…ぅ…っあ! 凄いっ…両方にっ…ヴィルっ……ああああああっ!!」
 豊かな尻が割り裂かれていくいくような挿入感に、ジェナは泣き叫んだ。
 薄い肛門の粘膜を拡げ、ヴィランデルの極太の亀頭が押し入る。だが、すでに一本のペニスを受け入れている尻肉の圧力は、括約筋を強固に閉じてそれを拒否した。ぬるりと、肛門からペニスが押し返される。ヴィランデルは亀頭に指を押しつけると、再び肛門にねじ込む。
「ううぐっ…」
 快感とも悪寒ともつかない震えがジェナの背を走った。ヴィランデルの凄まじい力で、肛門の括約筋が押し広げられているのだ。
「さすがに…鍛えてある…」
 ヴィランデルが賞賛とも独語ともつかないつぶやきを漏らすと、その腰を一気に押しつけた。
「!!!!!」
 入った。
 内臓まで犯されている感覚に、ジェナは声もなくうめく。
「ヴィルっ…様……オレ……ぜんっ…ぶ……」
「よく全て飲み込んだな…。この私を破ったほどの肉体の、雌……やはり、素晴らしい。我が子を孕むにふさわしい強者の尻だ……」
 ジェナを讃え、ヴィランデルは腰を押しつけた。ジェナの愛液で濡れた毛皮の感触が、会陰やクリトリスを刺激する。
 しばらくそうした後、獣王は動き始めた。
「かひっ…う…あっ、あ、あ! あ! あ!あ!!」
 あまりの衝撃に目を剥きながら、ジェナは断続的に空気を吐き出した。
 容赦の無い交尾の動きが、ジェナの尻に叩きつけられる。ぱしん、ぱしんと、ジェナの重い尻の筋肉が打たれる音が、浴場に高く響いた。
「ぅ…くう…良い…心地だ…」
 ヴィランデルも濡れた呻き声をあげながら、前屈みになっていった。半ばジェナにのしかかるようにして、その尻に爪を突き立て、腰を凄まじい勢いで前後させている。
 ジェナを犯す二本の獣根はピストン運動で次々と快楽を撃ち込み、戦士の脳をスパークさせる。
 肛門の快感と膣の快感、その二つが腰で融合し、ペニスを絶頂に引きずり上げながら、一気に炸裂した。
「あ!!! ぁっ…ヴィ…ル……ぅ…」
 ジェナの指が浴室の壁に食い込む。食い込み、一部を剥ぎ取って握りつぶす。
 しなやかで逞しい肉体は激しい痙攣を繰り返し、美貌からは幾粒もの涙がこぼれ落ちた。
 同時に、ヴィランデルも牡獣の叫びを上げ、大量の精液を二本同時にぶちまけ始めた。

 灼熱の液体を体内に感じながら、ジェナはこれから毎夜行われるであろうこの交尾を思い、わずかに微笑んだ。


***


「こ…こういうの…ゆ、夢だったんです…嬉しいです、姉様、ジェナさん…」
 ジェナの腕に抱きしめられ、湯に半ば漬かりながら、パスナパが幸せそうに微笑んだ。

 広い浴槽。沸き上がる湯気。
 壁際での激しい交尾を終えた三人は、ぬるめの湯に体を半分ほどひたしながら、三人で交わろうとしている。
 ジェナがパスナパを抱き、先ほどのように尻を向ける。そして二つ並んだ尻に、ヴィランデルが同時に挿入するというわけだ。
 二本のペニスがあり、二人同時に種付けをするならば、ふさわしい体位だとジェナも思う。
「やはり…こうだな…」
 ヴィランデルもジェナと妹の尻を交互にさすりながら、まだ衰えすら見せないペニスをしごいていた。

「…来い、ヴィル…」
 ジェナは左手を背後に回し、ボリュームのある尻の谷間を拡げた。
「ん…どうした、もう『ヴィル様』は終わりか…?」
 少しきょとんとした目で、ヴィランデルが問う。
「…………また、ああいう気分になったら、な」
 照れ隠しに笑いながら、ジェナは腰をさらに突き出した。
「姉様…下さい…」
 ジェナの下で、パスナパも大きく股を拡げる。
 ヴィランデルがうなずいて、二人の腰をまとめて抱いた。
 その時。


「ほにゃ〜〜〜!!」
 元気の良いヴェナルティアの泣き声が、扉を通して浴場にまで届いた。
「ヴェナ!」
「うわっ!」「きゃ!?」
 ジェナの視界が一回転した。
 ヴィランデルは跳ねるように立ち上がると、広い浴場を数歩で駆け抜け、ヴェナの眠る部屋へと飛び込んでいく。
 その顔は先ほどまでとうって変わって、また母獣のものに戻っていた。
 しかしパートナー二人の方はと言うと、ヴィランデルの巨体に蹴散らされ、派手な水音を立ててお湯に投げ込まる始末だ。
「ぷは!」
 すっかり交わるつもりでいたジェナは、前のめりに転んだ末に受け身をとり、浴槽の中から顔を出した。
「けほっ…ぷひゃあ!  …あ! あ! 姉様、私も参ります…!」
 同じく湯に沈んでいたパスナパも、立ち上がってブルブルと毛皮の水を飛ばすと、姉の後を追って浴室から駆け出していった。
「……」
 やれやれ、と心の中でつぶやいて、ジェナは浴槽の縁に背をもたれさせた。

 なんとか三人落ち着いたものの、なかなか愛欲の日々とは行かないようだ。
 まあ…どうせ俺にも子が生まれたら、もっと忙しくなるのだしな…
 周りに誰もいないジェナは、日頃見せない微笑みを思わず浮かべると、頭を振って立ち上がった。

 そしてゆっくりと歩み始める。愛しい、ヴェナルティアを抱くために。


ケイオスビーストマン ヴェナルティア  Designed by A・S・K


 拳雄ジェナと獣王ヴィランデルの間に、ついに誕生した一子。主に母の血を引いてか、白い毛並みの獣人であるが、その金髪碧眼は確かにジェナのものである。
 少々元気は良すぎるほどに、人なつっこく食欲旺盛。すでに獣王の後継者の資格十分…と言ったところ。これからの成長を神殿の皆に期待される、幼き戦士である。

許されない罪がある。
贖いきれない過ちがある。

取り返すことのできない過去を人が求める時、シオン=ヴァイアランスは何を以てそれに応えるのか。

次回混沌聖戦第十九話『贖罪』。

ヴァイアランスよ、咎人を愛し賜え。

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