(後半執筆 Rebis)
「…以上です、ザラ様」
ローザは長い言葉を終えると、うやうやしく礼をとり、深紅の絨毯の上でひざまずいた。
淡い明かりが布の迷宮に柔らかな光を投げかけ、ローザとその主人の肌に優しい陰影を与えている。
ここは異界。旧帝国から遙かな次元を超えた大迷宮に存在する、ザラ=ヒルシュの本陣である。
デーモンの力を借りて時空を渡ったローザは、奴隷達の出迎えもそこそこに、まっすぐ謁見の間を訪れた。そして、長い間胸にしまっていたザラへの箴言を語った。
烈火の如き怒りも覚悟していたローザは、表情を変えぬザラを前に、わずかに安心していた。
そう、ザラ様はどこまでも賢明なお方だ。部下が諫めることがあれば、それを十分考慮して下さることだろう。
「分かりましたわ……ローザ」
ザラは指に巻き付いた深紅の髪のロールをくるくると解くと、ローザを見下ろした。
「そう…貴方がひどい思い違いをしていることが、分かりましたわ」
ザラの瞳が、研ぎ澄まされた刃のように冷たい光を帯びた。
「ざ、ザラ…様…?」
ローザは、その視線で貫かれたかのように身を震わせた。本能が、恐怖で悲鳴を上げようとしていた。
「し、しかしっ…私は……帝国は…ザラ様の統治を受けなければっ…」
ローザは怯えながら、言葉にならぬ言葉を口走った。
そんな…そんなはずはない。
ザラ様は至上の支配者だ。私の言葉に激昂して、道理も分からないような方ではない!
しかしローザの思いも虚しく、ザラは溜め息混じりに言い放つ。
「一人で帝国にいる間に、自分が何であるかも忘れてしまったようですわね。失望しましたわ」
ザラは立ち上がると、その右手に輝きを溜め始めた。
魔力がうねり、輝く結晶となって、ザラの掌に集まっていく。
それが、振るわれた。
「うああああっ!?」
反射的に四本の腕で体をカバーしたローザに、次々と鋭い刃が突き刺さった。
結晶の破片はローザの腕を貫き、その柔らかな両胸、引き締まった腹部、そして腿へと深く食い込んでいく。
一瞬の激痛に眉をしかめたローザは、次の瞬間その場に崩れ落ちた。
声も出ない。
体が爆発しそうなほど、血液が沸き立つ。
媚薬だ。ザラの魔力で作られた濃厚な媚薬が、ローザの体のあちこちで炸裂していた。
「…な…なぜ…ザ…ら様……」
絨毯をかきむしりながら、ローザはうめいた。
「そんなことも分からないとは……」
「きゃうぅっ!?」
ザラのブーツで胸を踏みつけられ、ローザはのたうちまわった。
カカトが食い込み、胸がえぐられる度に、痛みも吹き飛ぶほどの快感が胸を走る。
「再教育が必要そうですわね。……ヨハンヌ!」
「はい…お姉様」
ビロードの陰から湧き出すように、その白い姿は現れた。
「お…お前は…ヨハンヌ…?」
「久しぶりね、ローザ。相変わらず、お高く止まってる?」
美貌の淫魔は淫靡な微笑みを浮かべると、その肉体を醜くも美しい肉の塊へと、一気に変化させた。柔らかな女体と、屈強の筋肉と、触手の群で構成された体が、ローザに絡みついた。
「は…離…せ」
ローザは歯を食いしばりながら、ヨハンヌの胸の柔らかさに溺れまいとする。
ローザはヨハンヌを嫌悪していた。人間としての矜持も何もない、肉の化け物。ザラ様に対して君臣の礼も知らぬ、愚かな淫魔。
そしてそんな存在をザラ様が愛すること自体、許せなかった。
だが…媚薬に侵されたローザにとって、目の前にあるヨハンヌの体は狂おしいほどに魅力的だった。
「時々、あなたみたいな戦士がいるのよねえ……自分もわきまえず、お姉様に一人前の口なんか聞いちゃって」
「うるさいっ…私は、私は、ザラ様が統べる世界のために、こうして進言に来たのだ! 貴様のような色狂いに…愚弄される覚えはない!」
ローザは身悶えし、ザラに振り返った。
「ザラ様! あなたは、私の言葉を聞き入れることもできないほど、偏狭なお方だと言うのですか!? ザラ様! ザラ様ああっ!!」
ザラは無言で、手に溜めた光を、ローザに撃ち込んだ。
魔製の媚薬を子宮に直接ぶち込まれたローザは、失禁しながら息を詰まらせた。
「夜が明けたら戻りますわ」
涙でぼやけた視界の中。ザラはマントを翻すと、メイド達を呼び寄せ、通路の奥へと消えていった。
***
泥のように濃い精液が、絨毯を走り、白い染みを増やしていく。
意識は溶け、肉体は疲れ果てているというのに、性器は少しも衰えない。狂ったようにペニスを締め付け、狂ったように精液を吐き出す。
「やめ…やめ…て……」
自分の肛門を犯すヨハンヌが、二本目のペニスを構えているのを見て、ローザは溜まらず懇願した。
今、媚薬に侵され、両穴もペニスも責め抜かれたこの体で、ヨハンヌのペニスを二本も入れられたりしたら……
死んでしまう。
言葉も出ず、子供のようにいやいやと首を振るローザを見て、ヨハンヌは微笑む。
「何言ってるのよ…ローザのおまんこは、私のペニスが欲しくってぴくぴくしてるじゃない。お尻も締め付けて…」
そして一度大きく腰を引くと、淫魔は容赦なく二本目のペニスをローザの産道に突き込んだ。
「ひぃっ……ぐ……ひゅ…」
戦死者のように、ローザの口からひゅるひゅると息が漏れた。
もはや絶頂をいつ迎えているのかも分からない。すでに体は絶頂を迎え続けて、その高い波の上を微妙に揺れているだけなのかも知れない。
「ほおら…二本とも、ズップリ入ったわよ。腰が細いから、お腹の中が全部ペニスになったみたいでしょう、雌鳥ちゃん?」
「ぃ…ぐ…」
ヨハンヌは獣そのものの動きで腰を叩きつけながら、ローザの両胸を弄んだ。
触手と化したヨハンヌの乳首が、ローザの胸を揉み潰す。
鞭のようなヨハンヌのクリトリスが、ローザのクリトリスに絡みつき、引き絞る。
脳裏がスパークして、揺れる視界を自分の精液が稲妻のように引き裂いた。
ローザの意識がなくなる、その寸前……
「朝ですわ」
ザラの優雅な笑みが、ヨハンヌの責めを止めさせた。
***
「ザラ…さっ…ひはああああっ…ザラ様ああっ! ローザは、ローザはザラ様のペニスが大好きですっ! 何よりも…この世のっ…あ、あきゃふうううっ!!」
柔らかく広い寝台の上で、ローザは形の良い尻を振り、汗にまみれながら吠えていた。
犬のように舌と尻を突き出し、ザラと肛門で交わるその歓喜の表情には、戦女神の騎士としての面影も、帝国の監視者としての理性も残ってはいない。
ただ、撃ち込まれる快楽と、歓喜と、ザラだけが、そこにあった。
ヨハンヌの責めを終えさせたザラは、そのままローザを自室に運び込ませると、激しく犯し始めたのである。
淫魔の精液を溢れさせる双穴は、真の主人のペニスを得てさらに狂喜し、ローザの意志も無視して交接に応えた。
もはや、ザラへの疑問も、進言も、何もない。
嬉しい。
嬉しい。
ずっと焦がれていた自分の主君に愛されることが、何よりも嬉しい。
パンッ、と高い音を立てて、ローザの尻とザラの腰が密着した。
数秒置いて、ローザの腸の中に、熱さを少しも失わないザラの精液が次々と射出されていく。
沸騰しているのではないかと錯覚するほどのそれを受けて、ローザは一際高く、鳴いた。
そうだ。
結局、これが欲しかったのだ。
帝国など、どうでも良かった。ただ、淋しくて、恋い焦がれて、ザラ様に会いたかったのだ。
だから自らに言い聞かせて…ザラ様に進言するのだと理由をつけて……リリィナ達を置いていく大義名分が欲しくて………
「ラ…様…ローザは、ロ、ローザは……ザラ様に抱いて…ひぐっ…いただきたかったんです…帝国より…世界より……ザラ様が……くはうっ…」
「やっと思い出したようですわね」
ザラはクスリと笑うと、ローザを背後から抱き締め、その頬に唇を重ねた。
「貴方は私のケダモノ…私の戦士ですわ。ですから、私の快楽が欲しいというのに…それを忘れるなど、言語道断。帝国も、世界も、全てはこうして体を重ねた後……考えることですわよ」
「…はい……ザラ様……」
ローザはザラの体温に包まれながら、ぽろぽろと涙をこぼした。
「戦いはそう遠からずに終わりますわ。もちろん、わたくしの勝利で…ね。そうしたら…帝国など、力を増した私の前には砂の城のようなもの……」
再び力強く腰を動かし始めるザラを感じながら、ローザは思う。
ザラ様はこの世界に来て、ますます力を強められている。やはり私が進言などしなくとも……
そこまで。
それから先は快楽に飲み込まれて……
次に目覚め、この迷宮に留まろうと決意するその時まで、ローザの思考は途切れたのだった。
戦女神の聖堂騎士であった、優雅なる混沌戦士。自らの信念を貫くためにザラ配下となり、帝国の闇を暗躍してきた。
性格は誇り高い知性派。野蛮さや獣性を嫌う傾向があり、今回ザラに戒められたのはその点か……
四本の腕でエストックを操り、解剖学にのっとった的確な攻撃を見せる、戦の達人である。
Siriusさんにいただきました、ザラ勢の戦士ローザです。Rebisは面識がないのですが、ご友人が原案者のようですね。
部下に対するザラの態度、愛情……それらの一面が描ければいいな、と思って、後半のSSを執筆させていただきました。
ザラとはまた少し違う、高貴さや優雅さを描けそうで、楽しみなキャラですね。