CHAOS JYHAD 第十一話 メイドの耳は、けものみみ。


 湯が滑り落ちる。透明な汗の粒を巻き込みながら、この上なく美しい乳房や筋肉の凹凸を、一筋一筋なぞるように。
 滴る水滴はタイルに敷かれた純白のマットに吸い込まれ、その上を形良い足指が踏みしめた。
 一枚一枚にヴァイアランスの紋章を刻んだ、白磁のタイル。しっとりと空気を潤す白い湯気。そして、天井まで届く大鏡。
 ケイオスヒーロー・ザラ=ヒルシュは、大きな鏡面の前にすっくと立つと、湯浴みを終えたばかりの裸身をじっくりと眺めた。
 美しい深紅の髪も、形良く張った乳房も、適度に鍛え上げられた肉体も、全て完璧。現世に肉体を持つ両性具有者として理想の肢体が、そこにあった。
−−美しい…ですわ…
 無意識に、太ももの間に指が伸びた。湯で温められた粘膜はほどよく充血し、軽い一撫でにも心地よい刺激を返す。
「あっ……」
 ザラの口から、湯気の中に甘い吐息が洩れた。

「あ! ザ、ザラ様っ、今お拭きしたしますぅ!」
「バ、バカっ!
 た、タイミング…悪すぎ……」 

 二つの幼い声を背後に受けて、ザラはピクンと眉を上げた。その肩に、腰に柔らかいタオルの感触が触れ、小さな掌が丁寧にザラの体を拭き始める。
「リサリア……ルカルナ……」
 ザラは優雅に髪をかき上げながら振り返ると、自分の体を拭く二人のメイドを、タオルごと優しく抱きしめた。
「フフ…そそっかしい所も、おてんばな所も、相変わらずですわね。でもリサリア、主人が秘め事をしている際には、メイドは控えておくこと。よろしいですわね。」
「は、ははは、はい! 申し訳ありません……ザラ様……」
 リサリアと呼ばれた少女、兎の耳をしたケイオスビーストマンのメイドは、大きな瞳を涙でいっぱいにしてザラの腕に抱かれた。



「あらあら…涙をお拭きなさい。」
 ザラはにっこりと微笑み、タオルの端でリサリアの目元を拭った。
「ルカルナ。あなたも控えている所まではよろしいのですけど……」
「ふにゃ!? は、はいっ!」
 こちらは犬の耳をした少女、ルカルナは、リサリアばかり抱かれているのを不満げに見ていたが…話が自分に振られると、慌てて尻尾を立てた。

「私の体を見てオナニーしているだけでは、メイドの仕事は勤まりませんことよ」
「……はぃぃ…」
 先走りの滲んだペニスを、ザラのしなやかな指でぷにぷにと押され、ルカルナは真っ赤になってかしこまった。
「さ…きちんと、最後まで仕事をなさい」
 ザラは二人を放し、再び美しい裸身を伸ばした。リサリアとルカルナは小さな体を懸命に動かし、ザラの逞しい腕や、きれいに並んだ腹筋にタオルを走らせた。
「あ……」
「…う……」
 タオルが一点で止まり、二人のメイドが唾を飲み込む音が、ザラの耳にまで届いた。
「ふふ…どうしましたの? 続けなさい。作法は覚えているでしょう?」
「は、はいです!」
「覚えてます!」
 ザラに頭を撫でられ、メイド達は上気した顔をタオルに向けた。
 ザラの股間に当てられたタオルは、中に鉄の棒でも仕込んだように、硬く逞しく天を指している。
 ルカルナが丁寧にタオルで水気を取り、そっとタオルを外した。
 リサリアは兎の耳を震わせながら、タオルの中から現れた……そそり立つザラのペニスに口づけした。
 やがて小さな二枚の舌と、欲情に焦がれる吐息が、ザラのペニスを這い回り始める。
「ふう……やはり使い慣れたメイドの心地……良いものですわね……」
 ザラは満足げに呟くと、熱い精液を二人に授けるまでのしばし、鏡の中で悶える火照った裸体を鑑賞することにした。

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