村中に漂う淫臭に人々が気付くまで、そう時間はかからなかった。

 手に手に武器を構えた村人は、白く染まった部屋で無心に性器をしごくレードルを前に戦慄し、聞くに耐えない囁き声を交わし合った。
 レードルの手の動きが速まり、微かな呻きと共に精液が噴出した。それは飛沫を上げて頭上高く吹き上がり、レードルの愛らしい顔に降り注いでいる。
 それが、合図だった。
 手斧が、鎌が、石が、一斉に振り上げられる。
 忌むべき混沌を始末するために。
 村の日常を取り戻すために。
 レードルは白く染まった視界で、ぼんやりと刃の反射を眺めていた。

 紅い。
 どうしてこんなに紅いんだろう。
 さっきまでは、レードルの体から出る水で、真っ白だったのに。
 どうしてみんな動いてないの?
 パパ? ママ? シャイルストックのおじさん? レイクおにいちゃん?
 ………
 お姉ちゃん……

 お姉ちゃん、誰?

「ボクはルキナ。いい匂いがすると思ったら、キミだったんだね」
 村人の血で染まった轟斧を肩に掛け、美しい混沌の戦士は、
 微笑みながらレードルを抱きしめた。

 そしてレードルは、その日から一度も、淋しいとは思わなくなった。




NEXT Night→Canadia Feet