それ以来、レディオスはローブの一団の来訪を夢見て暮らした。
 実際、彼らは一月に一度程の感覚で、街を訪れていた。
 一団は路地を通ると、待っていたレディオスの尻を抱き、おびただしい量の精液と、十分暮らせるだけの金貨を残して去っていった。
 彼らが何者なのか、どこから来るのか、そんなことはどうでも良かった。

 そんな生活が数年続き、レディオスの肉体は十分な成熟を遂げていた。
 今思えば、毎月注がれるあの精液が、彼女の肉体に影響していたのだろう。
 胸は抱えきれない程大きく、ふくよかに張り出し、一団の大きな性器を挟み込んで奉仕できるまでになっていた。
 膣壁も肛門も、人間とは思えない程発達した。強靱な括約筋で締め付け、複雑に折り重なった粘膜で摩擦すると、ローブの人物達もすぐに射精するようになっていた。
 自然に回数も増す。一人の出す回数が、二回になり三回になり、レディオスの子宮は六人の精液で満たされるのだ。
 自分の夢など、所詮は叶わぬと分かっていた。
 でも今の生活は、ジナスの住人にとっては夢のように素晴らしい。
 これが、私には相応の夢なのだ。
 レディオスは来訪の間だけ、幸福だった。

 だが、その日の一団は、いつもと違っていた。
 人数は変わらない。だが、一人の体格が異常に大きいのだ。発達した上半身の筋肉と、柔らかく引き締まった胸のラインがローブの上からでも見て取れる。
 そして何より、鋭い角と、純白の毛皮。
 混沌の獣人。
 やはり、この一団は混沌の信者だったのだ。
 レディオスは驚き、しかし取り乱すこともなく、新たな客の腰に腕を回した。
「貴様がレディオスか。数年の間、よく我らに仕えてくれた」
 獣は低い声で唸ると、レディオスの赤毛を撫でた。
「……?」
「我はヴィランデル、偉大なる快楽の神ラネーシア様の使徒。時は満ち、貴様の肉体も十分に育った。今宵は貴様の力を引き出し、迎えるために来たのだ」
「ラネーシア……力……迎えに……?」
 しばし言葉を反芻していたレディオスはその意味を理解するや、喜びと期待に溢れた目でヴィランデルを見返した。
「じゃ、じゃあ、ヴィランデル様、私は、何を……」
「我が精を受けるのだ」
 ヴィランデルはローブをはだけた。
 胸元まで勃起し、内に満ちた精力で爆発しそうな獣の性器。
 レディオスの腿を、熱い液体が濡らした。

 いつものように腰を突き出す。尻の左右を獣の巨大な掌が包み、膣口にペニスの先端があてがわれる。 
 ヴィランデルは無言で、濡れそぼる肉の管にペニスを打ち込んだ。
「かはあああああああああぁぁぁぁっ!?」
 想像を絶する快感だった。これに比べれば、今まで交わってきた六人の感覚など、無いに等しい。
 力強く前後する腰。内側にねじ込まれ、外側にめくれ上がりそうな襞。
 レディオスはあられもない絶叫を上げ、何度もエクスタシーを味わった。
 嬌声は街の区画中に響きわたり、薄汚れた観客達が、どこからともなく集まる。
 ヴィランデルはさも愉快そうに牙を見せると、レディオスの腰を抱え上げ、信者を引き連れて歩き始めた。
 腐敗した街並みを、美しい娼婦と逞しい妖獣が一つになって歩む。周りで詠唱を続ける白いローブ。その後を遠巻きに追うボロ屑のような人々。
 それはあたかも、混沌が生み出したパレードだった。
 熱く巨大な性器は、歩きながらも激しく出し入れされている。
 市場に着き、自分の痴態を見る目が倍増すると、レディオスは堪らず失禁した。
 大通りに広がる飛沫を見ながら、何度もイッた。
「はあぁっ!?」
 そして、一度目の射精。
 灼熱した液体が子宮から膣まで溢れ、収まりきらずに往来へこぼれ落ちた。街の腐臭を上回る性臭が満ちる。
 ぼこりという音を立てて、右腕が裂けた。それはのたくる触手の群に変わり、白く濁った粘液を分泌し始める。
「あ、あくぅ! 熱い、また、出てるぅ!!」
 二度目の射精。
 脳が白熱した。瞳の色が変わり、全身に不思議な力が満ちた。叫び声は見えない力と化して、見物人をなぎ倒し、露天を押し潰した。
「最後だ! 受け止めろ、レディオス!!」
 三度目の射精。
 先の二回を上回る量の、固形に近い濃厚な精液が、レディオスの子宮を埋め尽くし、鳴動する混沌の力を放った。 
「あ、あ、ああ、来るっ、何か、あああああ!!!」
 レディオスは股間に凝集する熱を感じて、泣き叫んだ。陰核と恥丘の端が一つになって盛り上がり、熱くたぎる二つ目の性器を作り出した。
「あ…あ…」
 快楽に意識を薄れさせ痙攣するレディオスのペニスから、稲妻のように液体が噴出した。それは白い糸を引き、飛沫となり、市場から建物の屋根までに降り注ぐ。
「出てる……すごい……こ…れ…が……」
 最後の一撃ちが搾り出され、地面に白い水たまりを作る。黒ずんだジナスの街の一画は、レディオスが放った精液で白く美しく染め上げられていた。
「素晴らしい。ラネーシア様のご加護の下へ、共に参ろう。レディオス=ニーズよ」
 三回の射精を終えたヴィランデルは、しかし息を荒げることもなく、愛おしげにレディオスの頬を舐めた。
 二人の周りで、信者達が祝福の祈りを上げる。
 レディオスは不可視の力で身を反転させ、ヴィランデルの胸に顔を埋めた。

 自由と、力と、愛。
 全てが……今。

 レディオスの夢は叶った。
 そして今彼女は、ラネーシアの魔術師として、別の者達に夢をもたらしている。
 売られた子供。犯されようとしている少女。腐敗に埋もれた女。
 それらを見つけ、ラネーシア様の救済をもたらすのが彼女の仕事だ。

 今宵もレディオスは、救った少女達を寝台に招き、愛を与える。
 熱くたぎった愛を、彼女らの胎内に、たっぷりと。

NEXT Night→Tonia Glacia