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柔らかな夕日が、学園全体を包んでいる。
ベティの視線の先には、学園都市・御空崎市のビル街が、美しいオレンジ色ににじんでいた。
冬の空気は澄んでいて、逆光に照るビルの窓も、くっきりと見えている。
ふう、と溜息を一つ。
チアリーディングの練習を終え、チームメイトとバレンタインプレゼントの交換をしたベティは、カフェに行くのを辞退して、一人校庭に立っていた。
一度、応援団の練習を覗いてみたけれど……キリカは、居なかった。
やっぱり、キリカに西洋の習慣を期待するのは、無理だったかな。
ベティはお下げの頭を振ると、校門に向かって歩き出した。
そこに、居た。
いつの間にか立っていたのは――
学園の冬のコートに身を包んだ、朝影キリカだった。
「キリカ!」
ベティはキリカに駆け寄ると、思いっきり抱きつきたい衝動を抑えて、そっとその手を取った。
お互い手袋をしていても、相手の指のしなやかさが分かる。
「捜していた。その、色々あって――用事が、その」
キリカにしては珍しく、語尾をもごもごと呑み込んでいる。
その顔が真っ赤なのは、夕日のせいだけではない。
「用事、と言うのはだな」
キリカはあちこちに視線を飛ばしながら、口をぷるぷると震わせた。
「ばっ、ばれっ、ばれっ」
「St. Valentine's Day?」
「そ、それだ」
ベティの胸の中で、期待が高まっていった。
「ちょこれいとぉを……渡すものだ、と聞いた。だが、その、燃えてしまって。人からもらった物は沢山あるのだが、それは贈り物にできぬし……」
キリカはカバンの中から、小さな包みを取り出した。
「野沢菜……しか、ないんだ……」
これ以上ないほど顔を真っ赤にしたキリカは、それだけ言うと、ぐすっ、と鼻をすすりあげた。
「Thank you、キリカ♪」
ベティは包みを受け取ると、にっこりと微笑みを返した。
「…………?」
キリカは不意をつかれたように、涙を浮かべた目を丸くしている。
「い、いいのか? ちょ、ちょこれいとではないぞ。固くないし、甘くないし、み、緑色だぞ!?」
「Yes♪」
「しょっぱいし、ご飯に合うし、お茶漬けにも、あの、その」
「女の人がチョコレートをあげるの、日本の習慣デス。ステイツだと、仲の良い人や家族同士、みんなで何でも、プレゼント交換するデース!」
ベティは、大きな胸にぎゅっとプレゼントを抱きしめた。
「ノザワーナ! おつけものデスね。日本のおつけもの、大好ーき!」
「そ、そ、そう……か。の、野沢菜でも、良かったのか! そうか、そうか!」
キリカはぴょんぴょんと飛び跳ねると、突然、ベティを抱きしめてきた。
「ひゃうっ!」
キリカの逞しい腕と、どこまでも柔らかい乳房に包まれて、ベティは一瞬息を止める。
体の芯を貫くような、高揚感。
でも。
嬉しいけれど……
「き、キリカ……みんなに……見られチャう……」
校庭の人影はまばらだけれど、まだまだ、生徒達が居る。
キリカとベティの関係は、皆にはヒミツなのだ。
「大丈夫だ。朝影忍法、茜隠れ――夕陽にまぎれて、数瞬なれど、我らは見えぬ」
「――!」
周りを生徒達が歩いていく。でも誰も、学園の有名人2人を、見てはいない。
「……だろう?」
「……Yes」
微笑んだキリカの唇が、ベティの唇に重なった。
***
湯気に混じるのは、甘いイチゴとバニラの香り。
ここは、御空崎市の綾藤(あやのふじ)という地区にある、キリカの家。
昔から綾藤家と縁のある朝影衆が、この地に持っていた屋敷だ。
今は、音神学院に通うキリカが一人(とソバ丸)で、住んでいる。
そして今キリカが居るのは、家の浴室。
なみなみと湯が張られているのは、檜の浴槽。
ソバ丸が毎日掃除を欠かさない、この屋敷自慢のお風呂だ。
ベティがくれたプレゼントは、イチゴを中に封じ込め、香りのエッセンスを加えた、愛らしい石鹸だった。
案外、簡単な贈り物だな……と、感じなかったと言えばウソになる。
けれど、ベティはそれを手渡しつつ、囁いたのだ。
「今夜一緒に使いましょう」と。
だから、この、香る石鹸の泡は、キリカとベティの豊かな胸の間で、泡立っている。
キリカの腕に抱かれたベティは、滑らかな肌で泡をこすりつけながら、愛らしい喘ぎ声を漏らしている。

真っ白なベティの爆乳に指を食い込ませながら、その口を吸った。
「Um...ふぁ、はああっ……」
ベティは目を閉じつつ、懸命に舌で応えてくる。ベティの唾液は甘い。爽やかな吐息に、イチゴの香りが混ざる。
舌を絡め合ったまま、ベティは身をよじり始めた。
しなやかな裸身が、ヌルヌルの泡まみれになりながら、キリカの体に擦りつけられる。
胸と胸。ペニスとペニス。お互いの太ももが相手の太ももを挟んで、密着した肌の間を石鹸水がしたたり落ちていく。
「キリカ。初めての一緒のお風呂、忘れられなくなりそうネ……」
「ああ。どんなモノよりも、これが何よりの――」
キリカはベティの体を軽々と抱えると、浴室のタイルの上に寝かせた。
石を思わせる表面の、清潔なタイルの上に、ベティの若々しい肉体が横たわった。
たっぷりと湯気を浴びた肌は、半透明かと錯覚してしまうほどに、白くみずみずしい。頭よりも大きな乳房は、寝そべっても美しいドーム型を保って、ベティのわずかな呼吸に合わせてぷるんぷるんと揺れている。
ベティの乳首についた石鹸を軽く拭って、桃色の先端を口に含んだ。
「Ahっ…あ、ひうううっ……」
それだけで、敏感なベティは声をあげた。キリカの舌の上で、乳首がぷっくりと励起していく。
そのまま、右手でベティの胸を揉み始めた。根本から、舌で刺激する乳首の近くまで。たっぷりと、やわやわと、石鹸のヌルみを借りながら、白桃をもみほぐしていく。
「いっ、はああっ、キリカっ、NO……おっぱい、らめぇっ……」
「胸だけで、そんなに心地よいのか? こんな有様では、服に擦れても感じてしまいそうではないか……」
口をはなしたキリカは、ちろちろと舌で乳頭を刺激しつつ、ちょっと意地悪な言葉をかけた。
「No、ち、ちがっ……キリカ……だからぁ……」
「だから……?」
キリカは左手も参戦させ、指先で巧みに、ベティの乳首を弄び始めた。
腕も使って乳房全体を揉みつつ、人差し指と中指で、愛らしい突起を責める。
「お、おおohっ、キ、キリカっ、ひゃああっ……!」
青い瞳を潤ませて、腰をのけぞらせながら、ベティが悶えた。
――このまま、気を遣らせてしまいたい。
キリカはベティと唇を重ね、胸への責めはそのままに、体全体をベティの上で前後させた。
鍛え抜かれたくノ一の肉体が、きめ細やかな泡と共に擦り付けられる。
キリカの美獣のような腹筋と、ベティの柔らかく割れた腹筋との間で、二人のペニスが絡み、しごかれ、洗われていく。
「――っ、mmmっ!!!!」
唇を塞がれたまま、ベティの喉が震えた。
キリカの腕の中で、純白の裸身が弓なりにのけぞる。硬い腹筋にこれ以上ないほどペニスを押しつけて、ベティの腰がガクガクと痙攣する。
「………ん"っ……ぅぅっ……」
熱い。
暖かな浴室の中でもなお熱い、ベティの濃厚な精液が、キリカの胸元にヘソに下腹部に、飛び散って広がっていく。
射精しながら、軽く女性の絶頂も迎えているらしい。
快感を表すかのようにギュっと伸ばされた、ベティの足の指。それに自分の足の指を絡めて、ベティの体の中を走り抜ける震動を感じる。
強くベティを抱きしめたまま、キリカは数十秒間、恋人の感触を楽しんでいた。
***
「んぅ……一人だけ射精させちゃうなんて、ずるいデス。ん……ちゅ……」
キリカの唇を、舌をキスでついばみながら、喋るベティ。
「許せ。そなたが……あまりに、愛らしくて……」
それに応えながら、キリカはベティを背中から抱き、胸からお腹、太ももまでの滑らかな感触を両手で味わっている。
お互い絶倫の両性具有者同士、もちろんベティの射精だけでは終わるはずがない。
二人の少女の濃密なペッティングは、まだ続いている。
「き……キリカ……」
ベティの細い指が、キリカのペニスに添えられた。
それだけで、切なくむずがゆい射精感が、キリカを貫く。
今日は一日中大騒ぎで、朝に一回自慰して以来、射精していない。
キリカの胎内には濃厚な子種が蓄積されていて、解放を待っている。精虫の一匹一匹が暴れて、体の内部をかきむしっている――そんな錯覚に捕らわれてしまうほどに、射精が恋しい。
「はあっ……はぁ、はぁっ、ベ、ベティっ……!」
名前を呼ぶのが精一杯で、言葉が出ない。
ベティも挿入を待ちきれないらしく、荒い息の合間に、母国語で何かつぶやいている。ただその指先だけが、キリカにねだるように、ペニスをしごく速度を増していく。
キリカがそっと背中に手を当てると、ベティは自然に四つん這いの姿勢を取り、尻を上げた。
一度絶頂を迎えているベティの体は、ほんのりと桜色に染まって、白人種の肌との美しいグラデーションをなしている。キリカの両手の間で息づいているお尻は、まるで異世界に実るたわわな果実のよう。絶妙な楕円形のラインを描き、重力に負けることを知らぬ尻肉が、ぴったりと合わさっている。
それをどれだけ愛撫しても、飽きなかろう、と思えども――
今のキリカはあまりに射精を欲していて、もう責める余裕もない。
「――参る」
小さくつぶやくと、反り返るペニスを指先で押さえつけ、ベティのふくよかな陰唇に当てた。
無毛で、ぷっくりと丸みを帯びた、これまた果実のような性器。
それを無理矢理押し拡げながら、一気に、貫く。
「ああああaaaahhhhhhっ………!!!」
かすかに堪えた、けれど甘いベティの叫びが、細く長く浴室に反響した。
「くうううううううううっ!!!」
ペニスの大部分をベティの内部に埋め込んだキリカも、涙を溢れさせながら呻いた。
ベティの膣粘膜の信じられないような熱さが、重苦しく勃起したペニスの中に染み通っていく。
動かしてもいないのに、微細な襞の動きが、キリカを攻め立てる。敏感な亀頭の裏側に、子宮口の吸い付くような感触が当たる。
「おおおっ、そ、そなたはっ……何という……名器かっ……。 な、何度交わっても、これが、天性のものとは……し、信じられぬっ……」
豊かな尻に指を突き立てて、キリカは声を搾りだした。
キリカはくノ一だ。淫術を身につけたくノ一達の魔性の名器に、幾度も男根を突き立てたことがある。
厳しい修行を通じて、フタナリ同士の性の戦いの訓練すら積んでいる。
なのにそれなのに、ベティの中に押し入ると、我を忘れるほどの快楽に溺れてしまう。長い修行で築き上げたものが、あっけなく崩れていくのが分かる。
それは、ベティが本当にくノ一達を上回る素質を持つのか、それとも――
ベティが相手だと、キリカの心が解けてしまうのか。
「Kilikaっ……Fuck me plzっ……は、早くっ……」
切なそうに言いながら、ベティが自ら腰を動かし始めた。
「ひあっ! な、ならぬっ、ベティっ! う、動いっ……動いちゃっ……ぁああああ!!」
キリカの引き締まった下腹部に、ベティの柔尻が叩きつけられる。
弾力に満ちた双尻が、淫らに形を変えながら、ゆさゆさと揺れる。
その動きに合わせ、キリカの繊細な亀頭粘膜が、起伏の激しい膣襞をくぐり抜ける。破裂しそうに血管の浮いた幹を、固く締まった膣口の筋肉がしごき立てる。
「くふっ! うううっ、おおおおおおおおおっ!!」
キリカは堪らず、自らも腰を使い始めた。
だが、こうなるともう、どちらが攻めているとも分からない。
ベティの胎内に吸い込まれていくような快感を味わいながら、夢中で腰を振り立てる。
自分の顔を、涙や涎が伝っていくのが分かる。けれど、止まらない。
「ベティっ、ベティっ、ベティっ!!!」
名前を叫んでいた。ベティが応えるのも、かすかに分かる。けれど英語で、もうほとんど理解できない。
「出るっ、出るぞベティっ、私の、私の子種がっ、出るうううううううっ!!!」
「Yessss!! Please, please cum'inside meeeeee!!!!」
キリカの脳裏が真っ白に染まる。
ペニスの先端から、背骨まで引き抜かれてしまいそうな快感が走る。
白い。白い、けれど――
なぜか、イチゴの香りが。分かる。
次の瞬間、全身の力が抜ける解放感が、キリカを襲った。
体が震え、血管が脈打ち、このまま死んでしまうのではないかと思う。
死んでも悔いは無いと思えるほどの快感を伴って、精液がベティの中に撃ち出されていく。尿道が痛くなるほどに濃いキリカの遺伝子が、ベティの中にぶちまけられていく。
「く…ぉぉぉぉっ………」
キリカは背中を丸めると、覆い被さるようにベティを抱きしめ、長い射精の快感を味わい始めた。
ベティも、達している。
下半身全体が収縮しているかのように、力強い脈動が、キリカのペニスを締め付けている。射精を促している。
ベティのペニスに手を回せば、それも射精していた。
ぎゅっと、キリカの手にベティの手が重なる。
お互い同時にイッていることを確かめ合うように、二人は手と手を合わせ、肌を合わせ、射精し続ける。
忘れられない、どころか――
イチゴの匂いを嗅ぐたびに、今夜のコトを思い出してしまいそうだ。
そんなことを思いながら、キリカは再び、リズミカルな射精の脈動に身を任せた。
***
「で、ですね」
「わうン」
「要は、この日に、バレンタインという坊主が殺されたのだそうです」
「ほう」
「わうン」
「あと、メリケン国では、『バレンタインの虐殺』といって、ギャングが沢山殺されたそうです」
「なんで、殺されたのに、こんな甘いモノを渡すのかのう」
「わうン」
「怨み――ですかね」
「怨みか! 怨敵にちょこれいとぉを送るのか! おお恐ろしい。しかしこれは、茶色くて甘いのう」
「わううン」
『今夜屋敷に入ったら、殺す』とキリカに言われて、野宿する二人と一匹。
キリカが食べきれない分のチョコレートをむさぼり食っている。
2月の風は、冷たい。
(おしまい) |